柏の葉T-SITEに学ぶキッチン家電の売り場づくり


3月1日、つくばエクスプレスの沿線である柏の葉キャンパス駅に「柏の葉T-SITE」がオープンした。同ショッピングモールは「子どものいる暮らし、優しい未来を提案する」をコンセプトに、柏の葉キャンパス周辺に住むニューファミリー層のニーズ沿った本や生活用品を取りそろえた複合施設になっている。

柏の葉キャンパス駅はつくばエクスプレス沿線の新興住宅地で、柏の葉スマートシティという構想の元に、環境との共生、大学や新産業の誘致、居住者の健康維持を街づくりのテーマとした未来型の都市として再開発が進んでいる。また、都内に1時間以内で通勤ができることから、同エリアは近年、急激に移住者が増加している。
駅から10分ほど歩くと、池のほとりに2階建ての5軒の家が連なったようなシンプルな外観の建物が現れる。「柏の葉T-SITE」だ。

三角屋根の家が連なったような外観

「体感できる」キッチン家電の売り場に注目

「柏の葉T-SITE」は本館とアウトドアに特化した別棟の2館からなる。本館にある『La Cucina FeLice』は、国内外からセレクトされたキッチン&テーブルウェアを扱う専門店。木製の什器のナチュラルな風合いを生かし、キッチン家電とテーブルウェア、食に関する本を違和感なく組み合わせて展示している。

トースターと食器に朝ごはんの本をプラスすることで、自然と朝食のシーンをイメージできる
コーヒー関を楽しむ商品として、コーヒーメーカーとトースター、ポットやコーヒーの粉、フィルター、カップを群展示
ホットプレートやミキサーに隣接した場所には、食器やフライパンなどの調理器具が並んでいて、調理シーンをイメージしやすい

家電量販店でもキッチン家電の売り場に工夫を凝らす店舗が増えてきているが、統一什器やPOPなどによって、機械としての家電の提案になっているケースが多く見られる。
同店の展示は俗にいうライフスタイル提案で、単に商品を並べるのではなく、食器やエプロンなどを展示し、実際に使用するシーンをイメージしやすい形になっている。
あくまで「売り場」ではあるのだが、キッチンやリビングにいるような感覚すらしてくるのだ。

また、隅に配置されたキッチンカウンターでは、店内に置かれた全ての商品を通電し、製品の体感が可能だ。

例えば、ブレンダーやミキサーなどはブレードが回転する速さを確認する、トースターでパンを焼く、ホットプレートで目玉焼きを作るなど、いわゆる味や食感などの試食というよりも実際に作ることでの体感を狙っている。

使用感を味わうことでお客にとっては料理をするイメージが膨らみ、購買意欲が湧く。お客から「もう少し容量の大きいものが欲しい」などの要望があれば、店にない商品を取り寄せることも可能である。

つまり、店側にとっても体感することで一人ひとりのニーズに合った商品提案が可能になるというメリットがあるのだ。

体験型のコンサルティングを行うキッチンカウンター

話題のSIMフリースマホが触れる店舗

『柏の葉T-SITE』には、TSUTAYAが展開しているTONEモバイルのショップもインショップ形式で併設。家族の見守り機能「TONEファミリー」が、スマートフォンサービスとして初めて東京都を含む関東の九都県市の推奨機能に認定されたという。

子どものいる場所をGPSで表示できるアプリが使えることや、子どもが使用できるゲームなどを一日の使用時間や時間帯を決めて制限できる機能が人気のTONE
急拡大しているSIMフリースマホのリアル店舗には、多くの顧客が集まっていた

女性の集客策には「コト」軸の具現化を

多くの家電量販店では、商品提案を「モノ」から「コト」へ転換させる試みを行っている。しかし、売り場自体を見てみると、商品陳列や展示は、まだ「モノ」が中心になっているという印象を受ける。

ここで取り上げた『La Cucina FeLice』はキッチン家電というカテゴリーに絞った品揃えだからこそ、食器やコップなどのテーブルウェアと組み合わせた展示が可能という面も確かにある。家電量販店ではないため、それはそれとして看過することもできよう。

ただし、例えば同店でオーブンが1台売れたとしたら、それは家電量販店での販売数量が1台減るということになる。業種業態は違っているが、実際のところは競合店なのだ。
小物系のライフスタイル提案ということでいえば、MUJIやLOFT、Francfrancなどのショップも同様である。これらのショップが特に女性客の支持を集めていることを考えると、それだけ多くの女性客が家電量販店以外で、なにがしかの家電製品を購入しているということだ。
「モノ」から「コト」への提案を強化している家電量販店にとって、製品の展示陳列手法を大胆に変えてみる。そんな試みが、これからは必要なのではないだろうか。