欧米で高いシェアを誇る船井電機
ラジオやテープレーダーなどの音響機器メーカーとしてスタートした船井電機はその後、電子レンジやエアコンなども手がけ、1985年にテレビの販売を開始。ピーク時には年間1,000万台を超える製造販売を記録したという。
早い時期から海外での展開を推進し、1990年代後半から2000年代前半にかけてテレビとビデオが一体型になったテレビデオの販売で、特に北米では60%を超える市場シェアを獲得した。
国内においては2001年、資本提携でDXアンテナを子会社化し、国内向けブランドとして「DX BROADTEC」を立ち上げた。この新たなブランド確立のため、国内でのFUNAIブランド事業は撤退したが、一時期、ヤマダ電機のみに対してFUNAIブランドで液晶テレビを販売していた。
約10年後の2016年10月、船井電機は再びヤマダ電機とタッグを組み、10年間の長期独占販売契約を結んだ。その第一弾となるテレビのラインアップは4Kから2Kまでの5シリーズ11機種。6月2日からヤマダ電機全店で販売を開始する。
5シリーズ11モデルをラインアップ
プレミアム4Kという位置づけの6000シリーズは55V型と49V型の2機種。スリムハイグレード4Kの5000シリーズは65V型、55V型、49V型の3機種。ハイグレード4Kの4100シリーズは55V型と49V型で、スタンダード4Kの4000シリーズは43V型の1機種である。また、スタンダード2Kの2000シリーズは40V型、32V型、24V型を揃えた。
今回、発売となる機種のうち、4K対応の4シリーズ8機種はいずれもHDR対応。独自開発したエンジンのクリアピクスエンジン4K HDRを搭載し、地上デジタル放送などから4Kへのアップコンバート時に独自のアルゴリズムを加えることで高画質化処理を施す。
また、圧縮された映像信号を単に拡大するだけでなく、色補正を行い、リアルな色を再現したブリリアントワイドカラーも搭載した。
すべての商品が録画対応モデル
今回発売したすべての機種に共通した大きな特長としては、録画・再生機能に対応したこと。つまり、録画テレビなのだ。6000、5000、4100の3シリーズはHDDを内蔵。容量は6000シリーズが3TBで、5000と4100の2シリーズが500GB。4000シリーズは128GBのメモリーを内蔵し、2000シリーズは128GBの録画用メモリーが同梱となっている。
さらに6000シリーズは最大5チャンネル2週間分の番組を自動録画する「まるごと録画」やジャンルや出演者を登録しておくだけで、該当する番組を自動録画する「おまかせ録画」機能も搭載している。
ネットコンテンツ対応では、リモコンのボタンを押すだけでネットコンテンツにアクセス。NETFLIXやYouTube、dTV、U-NEXTなどの動画配信サイトを簡単に視聴できる。
4Kテレビのシリーズでは、スマートフォンとの連携機能も搭載。無料アプリの「FUNAI Connect」をインストールすると、録画した番組のスマートフォンへの持ち出しや録画番組・生番組視聴が可能(6000シリーズのみ)で、外からの録画予約にも対応。また、スマートフォンをリモコン代わりに使用する機能も搭載した。
FUNAIで国内テレビ市場の5%シェアを狙う
4月17日には東京・表参道ヒルズでヤマダ電機の山田昇代表取締役会長兼取締役会議長や船井電機の船越秀明代表取締役執行役員社長が出席した新製品発表会が行われた。
山田昇会長は「船井電機との独占契約販売についての思いは人一倍強い。トップマネジメントとして成功させるため、自らリーダーシップをとって汗を流していきたい」と述べた。また、巷間伝えられたようにFUNAIブランドのテレビについては、「国内市場の5%のシェアを取っていきたい」と語った。
質疑応答での両社が提携するメリットについて、船井電機の船越秀明社長は「アメリカでは日本メーカーとしてNo.1シェアを持っており、ヤマダ電機は国内の家電量販店ではNo.1。両社の歯車を噛み合わせることでベストな状態で商品をお客に届けたい」と語った。
ヤマダ電機の山田昇会長は「国内のテレビメーカーが昔は10社ほどあったのが、減少してきた。その間隙を縫って海外メーカーが国内市場を狙っている。FUNAIという日本メーカーにこだわる理由は、信頼性。独占契約だからこそ、メーカーにも販売側にもメリットがある」と述べた。
2018年の夏には有機ELを市場投入
今後の国内テレビ市場の見方について、ヤマダ電機の一宮忠男副会長は「現在の年間約500万台のマーケットは年率20~30%アップで推移し、2020年には1,000万台弱になると見ている。さらにこれから有機ELテレビや8Kも出てくるので、地デジのときのように新しい波が起きると考えている」と、今後のテレビ市場は増加基調で推移するとの見方を示した。
また、ヤマダ電機がFUNAIに注力することで他社のシェアが低下するのでないかとの問いに対して、一宮副会長は「マーケット自体が成長すると想定しているので、シェアが落ちたとしても販売台数では増えるとみている」と回答した。
質疑応答の中で、一宮忠男副会長は、今後の展開として有機ELにも言及し、来年の夏には発売したいと述べ、船越秀明社長も他社に負けないラインアップの充実を図っていくと話した。発売となる機種の価格について明確な提示はなく、「発売日を楽しみにしてほしい」と一宮副会長は語った。
当日はテレビの他、BDレコーダー2シリーズ4機種も披露。3番組同時録画対応のHTシリーズと2番組対応のHWシリーズで、HTシリーズのHDD容量は2TBと1TB。HWシリーズは1TBと500GBである。同社のテレビと同様に「おまかせ録画」や「おすすめ再生」、「スマホ連携」などの機能が搭載されている。
SPA商品、SPA発想に取り組んできたヤマダ電機
ヤマダ電機は自社のPBブランドであるHERB RelaxやSIMフリースマートフォンのEvery Phoneを発売している。また、住宅関連やサポートサービスでもオリジナルということにこだわり、SPA的な発想をビジネスに採り入れてきた。その方向性を考えると、今回の船井電機との独占販売も同じ文脈として見ることができる。
テレビの需要はこれから回復基調で推移するとヤマダ電機では見ている。だからこそ今からFUNAIブランドの浸透を図り、2019~2020年の時期に向けて推進していくわけである。
ただし、懸念は一つ。消費者の録画に対するニーズだ。BDレコーダーの市場は長期にわたって低迷している。一方でスマートフォンのアプリを使ってテレビ番組を視聴するというスタイルも増えてきている。FUNAIのテレビの大きな特長の一つが録画対応であること。それを、いかにメリットとしてお客に伝えられるかがカギとなりそうだ。
ブランドの認知度について懸念を示す向きもあるが、現実として大手の国内メーカー以外の市場参入が増加しており、また、ブランド指名自体も以前と比べて少なくなってきているという。今回の発表会ではTVCMも発表され、さらにヤマダ電機の店頭では力を入れた販促活動も行うであろうことから、認知度は急激に高まっていくと思われる。売価が発表されていないが、両社ともコストパフォーマンスという点では自信を持っている。お客の選択肢という意味では、プレーヤーが増え、話題として消費者の関心を引くことはテレビの市場全体にとって有益ではないだろうか。