楽天とビックカメラによる楽天ビックが楽天市場内にオープン 店舗在庫の確認ができ、楽天スーパーポイントも導入
ネットとリアルの垣根を超えたサービスを提供する楽天ビック
4月11日に行われた発表会では楽天から三木谷浩史代表取締役兼社長と矢澤俊介執行役員楽天市場事業長、ビックカメラから宮嶋宏幸代表取締役社長と秋保徹常務執行役員EC事業本部長が出席した。
登壇した楽天の三木谷氏は「ビックカメラは全国で店舗を40店展開しています。楽天グループは国内で9,500万人の会員を持っています。このような2社が新しいコラボレーションができるというのは画期的なこと。様々な新しい取り組みを行って行きたいと思っています。例えば、ビッグデータを活用し、よりユニークな独自商品を開発したり、新しいインターフェースで楽しんでいただきたい。それ以外にもビックカメラでお買い物をしていただくと楽天スーパーポイントが貯まるというリアル店舗との連動やネット注文で店舗受け取り、当日配送なども積極的に取り組んでいこうと思っています」と挨拶を述べた。
ビックカメラの宮嶋氏は「楽天ビックはネットと実店舗の垣根を超えた利便性の高いサービスを提供していきます。やりたいことはたくさんありますが、少しずつサービスを提供していきたいと思っています」と挨拶。具体的なサービス内容を解説した。
ビックカメラの店舗購入で楽天ポイントを付与
「楽天ビック」の主なサービス内容は、①ビックカメラ店舗での商品在庫が確認可能、②ビックカメラ店舗での購入で、楽天スーパーポイントを付与、③オリジナル商品の開発と導入、である。
宮嶋氏は①について、「当社のコールセンターには、商品の価格や展示、通電などの問い合わせが非常に多く寄せられているので、ネットと実店舗を持つ強みを提供していきたいと思っています」と述べた。
また、②について宮嶋社長は「楽天スーパーポイントの付与により、楽天ユーザーに来店していただけるものと期待しています」と延べ、特に楽天には女性会員が多いということで、「ビックカメラの女性層の拡大に寄与するものと期待をしています」と話した。
家電EC市場には、さらなる成長の余地あり
続いて楽天の執行役員楽天市場事業長の矢澤俊介氏が登壇し、両社のコラボの背景を説明した。経済産業省の調査等では、家電市場の規模は約7兆円で、家電市場のEC化比率は29.9%。家電のEC市場の成長率は2013~2016年で平均6.3%の増加となっている。この成長率について矢澤氏は「本来、もっと伸びる余地があるのではないかと考えます」という。
その成長の障害は何かを明らかにするために楽天が実施したアンケートでは、価格以外に実機の確認や配送設置に対する不安が多く挙げられた。矢澤氏は「これらを解消すれば、よりEC化が進み、お客様の生活がより豊かになると思います」と話した。また、家電ECに対するユーザーニーズのアンケートで購入時に重視することとしては、配送や安全性、商品数、アフター対応などが挙げられた。
「楽天ビックで購入していただければ、ネットでも実店舗でも問い合わせが可能。さらにビックカメラのアフターフォローも受けられます。つまり、ネットでも安心なお買い物ができるようになります」(矢澤氏)。
周知のとおり、楽天はECの豊富な経験と顧客データを持っている。ビックカメラは実店舗の販売網や配送網を所有している。この両社のそれぞれの強みを掛け合わせることで、「今までにはなかった家電の買い方を提供できると考えています」と矢澤氏は述べる。
午後3時までの注文で東京23区内の当日配送も予定
新サービスは、①オンラインとオフラインの連携、②設置・配送の利便性を追求、③競争力のある価格と幅広い品ぞろえ、を特長としている。
①は単にO2Oの送客ではなく、店舗でも「楽天ビック」でも同じ体験ができることを目指し、ネットで購入した後のアフターサービスは実店舗という形を考えているという。②では、秋を目指して当日配送の態勢を準備しており、午後3時までの注文で都内23区は当日に届ける。「楽天ビック」での購入でも実店舗で対応している専門のスタッフが、訪問して設置する。③はビックカメラが持つ価格競争力と品揃えを「楽天ビック」でも活かしていくという。
最後に登壇したビックカメラの秋保氏は「ビックカメラでは実店舗はもちろんですが、ネット通販事業もこれまで展開してきています。その中で、実物を見ることができない、体感できない、説明を聞けないということを理由にネットでの購入をためらったり、断念したというケースに何度も直面しました」と話す。
店舗に在庫がない場合も他店やセンターから希望店舗で受け取り
ビックカメラではネットで注文し、店舗で受け取りサービスを展開しており、毎月数万件単位で利用が伸びている。この店舗受け取りは、ネットでの購入から実店舗での購入への波及効果もあるという。
「楽天ビック」から店舗在庫を確認できるが、これは「ビックカメラ.com」でも可能だ。その違いは、「ビックカメラ.com」では店舗在庫の確認とともに店舗での取り置きが可能な店舗も表示される点。「楽天ビック」では現在のところ、店舗の在庫は確認できるものの、店舗での取り置きには対応していない。
秋星氏は「今後については、楽天ビックから店舗在庫の取り置きサービスも可能にするため、準備と検討を進めています。これだけでなく、例えば店舗に在庫がない場合でも、他の店舗や当社の物流センターにある在庫をお客様が希望する店舗で受け取れるサービスや、先に決済をしていただいて店舗では受け取りのみというサービスまで拡充できる余地はあると考えています」と、今後はさらに「楽天ビック」の利便性を向上させていく考えを示した。
楽天スーパーポイントの導入については、基本的に商品価格の5%を付与。当面の間、楽天スーパーポイントは付与のみで使用はできないが、6月中旬頃を目処に支払いにおいても使用できるようにする予定である。
配送のスピード化については、今年の夏頃に東京23区で即日配送サービスを実現させる予定で、対応エリアも拡大させていくという。また、設置取り付けに関しても「ビックカメラの店頭で提供している、きめ細かな日時指定ができるようなサービスも実現させるべく準備をしています」と秋保氏は話す。
商品の品ぞろえについては、約60万点でスタートし、今後は非家電商品も含めて拡充していく方針だ。さらに独自商品の展開では、ビックカメラグループ専売モデルのVRヘッドマウントディスプレイを実店舗に先んじて販売を開始した。
さらにビックカメラグループのソフマップが展開しているリユースやサービスサポートも「楽天ビック」で導入していくという。
ビックカメラ有楽町店でタッチ&トライを実施
発表会当日、ビックカメラ有楽町店ではタッチ&トライのデモンストレーションを実施。店内の天吊りPOPでも「楽天ビック」をアピールし、さらに入り口ではチラシの配布も行った。
「楽天ビック」は発表会でも説明されたとおり、楽天のECノウハウと会員数にビックカメラの販売・物流網と幅広い品揃えを掛け合わせて相乗効果を狙った取り組みである。当初のサービスとしては、楽天スーパーポイントの付与以外、ビック.comが展開している内容と特に異なっているわけではなく、現状では今後の予定としているサービスも多い。その点で、現在のところは楽天市場のビックカメラをリニューアルしたという印象が強い。
しかし、ECを成長の大きな柱としているビックカメラとウォルマートとの提携やキャリアとしての携帯電話事業への参入など、多角的にアクティブな活動を行っている楽天がコラボすることで、これまでにはない新たなサービスが展開されるのではないかとの期待感はある。発表会では、両社の物流倉庫を活用して楽天市場の出店社へデポとして提供することも検討しているとのことで、B to Bでのビジネス展開の拡大も考えられる。
家電のECではヨドバシ.comの取り扱い商品数が約400万アイテムで、店舗在庫の確認や店舗取り置きなども他社に先駆けて実現している。さらに自社配送による当日配送もスタートさせており、そのサービスの提供内容では唯一、Amazonと伍する存在といえよう。
楽天ビックがヨドバシを追撃するような方向性に向かうのか、新たなサービスを構築して独自のサービス体系を構築していくのか、今後の展開に注目していきたい。