アプリで買取の申し込みから買取金額の振り込みまで一気通貫 ソフマップが買取アプリ『ラクウル』をリリース。買取キットも無料で配布


ビックカメラグループのソフマップは7月26日、買取アプリ『ラクウル』をリリースし、同日から買取希望商品が簡単に梱包できる「ラクウルキット」の無料配布もビックカメラの4店舗で開始した。アプリによって買取依頼時の手間を省き、買取件数の増加を目指す。

商品化センターで買い取った商品のリユース化に注力するソフマップ

ソフマップは、以前からパソコン、デジタルカメラなどのデジタル機器やゲーム機等の買取サービスを行っていた。お客から買い取った商品は、同社の商品化センターで徹底した検査の後、再生されたものを中古品として販売している。

同社の買取については、2つの方法がある。お客が自ら商品を持ち込む店頭買取とネットから申し込んで宅配業者が引き取る、あるいは自分で発送する「らくらく宅配買取」だ。

ソフマップは店頭買取も積極的に推進している。2017年6月AKIBA②号店オープン時

この中で、店舗持ち込み時の待ち時間の解消と対面での応対による心理的な不安を軽減させるため、2018年5月31日からビックカメラ有楽町店に無人買取サービス「ラクウルポスト」を設置。これらの施策に見られるように、同社では積極的に買取サービスを行い、中古品として販売するリユース事業を推進してきた。

ビックカメラ有楽町店5階に設置されたラクウルポストは申込書と依頼品をロッカーに入れ、予定の査定終了時刻以降に再び訪れる

そのソフマップが、買取意向者の手間を最大限省き、さらに買取サービスの拡大を図るために導入したのがアプリの『ラクウル』。iOS、Androidのいずれにも対応したアプリで、申し込みから査定金額の振り込みまで、このアプリで完結するというものだ。

買取アプリ「ラクウル」でフリマアプリに対抗

ソフマップ代表取締役社長の渡辺武志氏は、この買取アプリ『ラクウル』のリリースについて、「最近、フリマアプリが流行し、リユース業界としては盛り上がっていますが、ソフマップの店舗買取には影響が及んでいます」とアプリ導入の背景を説明した。

フリアアプリを代表するメルカリは、サービススタートから5年でダウンロード数7,100万、月間利用者1,000万人を超える規模に達している。楽天の「ラクマ」は買取の売上金額をオンライン電子マネーの楽天キャッシュにチャージできる機能を7月からスタートさせ、楽天経済圏のメリットをうたう。

フリマアプリは不要品の個人利用を目的とする売買のため、ソフマップのように事業者として買取を行うための古物商許可が必要ではなく、古物営業法の規制等にも抵触しない。また、オンライン上でのやりとりで済むため、誰でも気軽に利用でき、値付けも自分で決められる。

ソフマップのリユース事業について渡辺氏は、「収益自体は高くなっていますが、買取件数は減っています」と述べ、「感覚的にはフリマアプリにお客が流れているという印象があります。スマホアプリの活用という点では、出遅れてしまった感があるので、それを取り返す」ために『ラクウル』をリリースしたと話す。

また、ソフマップを含むビックカメラグループが販売している商品は基本的に新品だが、「新品を購入するほとんどのお客様が新規購入ではなく、買い替え」とのこと。これまでも買い替えで不要になった商品の買取サービスの案内自体はしてきたが、「買取を利用したことがない、あるいはどのような手順を踏めばよいのか分からないというお客様も多数いたのではないかと思います」。そこで、販売店としてお客にしっかりリーチできる方法として、買取アプリ『ラクウル』を開発した。

買取アプリ『ラクウル』を活用することで、しっかりとお客にリーチしていきたいと語る渡辺武志ソフマップ代表取締役社長
買取にアプリを利用する層と買取を利用したことのない層を新たなターゲットと想定

依頼商品の到着や査定完了などの状況もアプリで通知

買取アプリ『ラクウル』は、買取査定の申し込みから宅配業者による集荷日時、査定結果の通知、査定金額の口座振り込みまでがアプリで行える仕組みだ。

買取申込みをすると、ラクウルキットや梱包用箱の有無を選ぶ画面に飛び、箱のない場合は宅配業者による当日梱包も可能
査定依頼の梱包数を入力し、宅配業者による集荷日時も画面で選択できる
お知らせ画面で依頼商品の受け取りなどの状況も表示
査定による買取金額が通知され、通知金額で了承すれば、ウォレットに金額が表示される。了承せずに止めることも可能で、その場合は商品が返却される
古物営業法の規定により、運転免許証や健康保険証などでの本人確認が義務づけられている
アプリのウォレットに貯められた金額は振込手数料を差し引いた金額が指定の銀行口座に振り込まれる

首都圏のビックカメラ4店舗で下取りキットを無料配布

買取アプリ『ラクウル』によるお客へのリーチでは、3つの優位性をアピールする。一つは、「下取りキットの無料配布」。買取依頼商品を梱包する3種類の大きさの下取りキットを用意し、これをビックカメラの4店舗で無償配布するものだ。店頭での接客で、お客が買い替えのための商品購入だと分かった場合、買取対象商品であれば『ラクウル』の説明をして同キットを無償提供する。

この下取りキットは、緩衝材の代わりとなる膜が箱の内側に付けられており、膜と箱との間に依頼商品を置くことで固定される。「キットは以前からありましたが、無料ではなく有料で販売をしていました。今回、アプリによるサービスの開始と同時に無料配布をスタートさせます」と渡辺氏は話す。

下取りキットはパソコン用のLサイズ、デジカメ用のMサイズの2種類の箱とスマートフォン用などの封筒状の計3種類が一つのパッケージに入っている
Lサイズの箱にノートパソコンとアダプターを入れた状態。内側に付けられた膜がしっかりとホールドしているの分かる

依頼品のデータを完全消去し、個人情報の流出を防止

2つ目の優位性として挙げたのは「データ消去」。渡辺氏は、「個人売買によるフリマアプリだと、写真やメールなどの個人データがしっかりと消去されているか不安という人が、非常に多いと聞きます」と述べ、ソフマップでは商品化センターで確実に個人のデータを消去するので、「外部にデータが流出することは一切ありません」と企業が行う買取サービスの安全性をアピールする。

千葉県浦安市にあるセンターではパソコン、記憶装置、ソフトと、それぞれのチームに分かれてデータ消去を行っている

3つめの優位性が、「商品化」。商品化センターでの品質チェックを通して、リユース商品として販売できるものはソフマップで販売。「資源の有効活用という点で、エコサイクルを回す取り組みになっています」と渡辺氏は説明する。商品として販売できないものは、ビックカメラグループのフューチャー・エコロジーで資源化するので、限りある資源をムダにしない取り組みを実践している。

ビックカメラグループではリユースだけでなく、リデュースの仕組みも構築している

買取で買い替え商品の購入にお得感をプラス

下取りキットを無料配布するビックカメラ有楽町店店長の佐藤壮史氏は「買取アプリ『ラクウル』は自宅にいながら買取の申込みができるので、来店しなくてもよいというメリットがあります。データ消去も万全の体制で取り組んでいるので、お客様には安心して利用していただけます。また、下取りキットを無料で配布するので、商品の買い替えについてはお買い得にご購入いただけます」と話す。

商品購入の際に買取サービスを利用してほしいと話すビックカメラ有楽町店の佐藤壮史店長

今回の『ラクウル』での目標は、ネットで実施していた宅配買取件数の5~7倍くらいとのこと。今後はアプリでクーポンの発行なども考えており、来店促進策としての意向もあるようだ。依頼点数や査定の混み具合にもよるが、申し込みから買取金額の提示まで最短で2~3日。「現在、どのような状況かということもアプリで通知されるので、お客様には安心を与えられるのではないかと思っています」と渡辺氏は語る。

有楽町店に設置されている「ラクウルポスト」については、「買取件数の促進というよりも、店頭でお客様が待つ時間の有効利用という側面が強く、どちらかというと業務改善」という。今後はアプリで申し込み、依頼品を「ラクウルポスト」に入れておくと、自宅に戻ったらアプリに査定金額が提示されているといった連動も検討していく考えである。