「dynabook」の東芝CSがシャープ傘下で社名を「Dynabook」に変更、2019年度の黒字化を目指す


12月3日、東芝クライアントソリューションが中期経営計画を発表した。同社はそこにおいて、2019年1月1日より社名を「Dynabook株式会社」に改めると宣言。2019年度には営業利益ベースで黒字転換を実現し、2020年度には売上をさらに拡大すると述べた。

シャープが東芝クライアントソリューション(以下、TCS)を買収すると発表したのは、2018年6月5日のことだ。TCSは東芝グループでPC事業を展開していた企業で、シャープはTCSの親会社であった東芝本社から、株式の80.1%を40億500万円で取得。10月1日には買収を完了し、子会社化した。

買収発表から半年を経た12月3日、いよいよシャープ傘下としてどのような事業の展望を描いているのか、中期経営計画の発表となった。

冒頭、壇上に立ったシャープ取締役副社長執行役員 兼 東芝クライアントソリューション代表取締役会長の石田佳久氏は、新しい理念は「コンピューティングとサービスを通じて世界を変える」となると述べ、社名を「Dynabook株式会社」に変更すると宣言した。

シャープ取締役副社長執行役員 兼 東芝クライアントソリューション代表取締役会長の石田佳久氏(左)と、東芝クライアントソリューション代表取締役社長 兼 CEO 覚道清文氏(右)
Dynabookの理念「コンピューティングとサービスを通じて世界を変える」

dynabookはTCSが1989年から使用しているPCのブランド名だ。新社名は頭文字だけ大文字の「Dynabook」となり、ブランド名の「dynabook」は頭文字も小文字のままの表記となる。

dynabookは、パソコンの父と呼ばれるアラン・カーティス・ケイが提唱した理想のパソコンの名称で、東芝はそれをブランド名として掲げた。アラン・ケイはdynabookを、ダイナミックなメディア機能を備えた「本(book)」のようなデバイスとしている。

石田会長は、dynabookを新社名として新たに採用するに当たっては、アラン・ケイの提唱したパソコンの理想の姿に立ち返ると共に、環境や技術の進化によって元々の言葉に込められた意味も進化するはずだと考え、「dynabookの名前をもう一度全面に出していきたいとの思いを込めた」と語る。

また、東芝の名もシャープの名も残さず、dynabookのブランド価値を極大化することで、三年後のIPO(株式上場)を目指すとした

dynabookのラインアップ。次に登場するモデルからは社名とブランド名を同じくした製品になる

続いて、東芝クライアントソリューション代表取締役社長 兼 CEOの覚道清文氏が登壇。具体的な事業の展望について説明した。

覚道氏はTCSでは、ラインアップ、販売基盤、スケールメリット、経営インフラ、人員体制などに弱さのあることが課題だったと言う。

シャープ傘下となることで、シャープの製品やサービスとの連携が可能になり、シャープのインフラなども活用して、課題を1つずつ解決していく目処が付いたと述べる。

ハードウェアに関しては、これまでdynabookブランドではあまり注力してこなかったデスクトップPCや、Work Stationやサーバーも展開していく予定となっている。ただし、同社としてより力を入れていくのは、製品よりもむしろサービスの方であり、特にAIoTになると指摘する。

ハードウェアとサービスの融合をイメージしたスライド。シャープの技術やサービスがdynabookに注ぎ込まれていく

AIoTはシャープが戦略の柱に据える「AI+IoT」を意味する造語。ロボホンやCOCORO+などで用いられているAIoTプラットフォームが、dynabookにも展開されていくイメージだ。

また、海外事業にも注力していく。事業の中心はあくまで国内となるが、伸び代となるのは海外であり、売上海外事業率は2018年度の22%を2019年度には35%、2020年度には42%にするという。地域別の成長率では、2020年度には北米は現在の131%、欧州は93%、アジアは163%を見込む。国内は27%の成長率とした。

dynabookのグローバル展開イメージ

2018年度の数値については、営業利益は上期のマイナスが残ることから、通期で46億円の赤字となる見通し。だが、10月からの下期は黒字化の目処が立っていると言い、2019年度では売上高2,400億円、営業利益は20億円で通期での黒字転換を達成し、続く2020年度は売上高を3,400億円、営業利益を70億円に拡大する計画だ。

シャープとその親会社である鴻海グループからの資本や資産が投入されるとはいえ、早々の黒字転換は少々見込みが甘い印象も受ける。この点については同社も承知しており、海外シェアが1%とかなり低下している現状があるため、海外展開へのテコ入れが可能になることで早期黒字化は困難ではないとの考えを示した。

新たな会社名「Dynabook」で心機一転するTCSは、国内外のユーザーから支持を拡大できるのか。今後の展開に注目したい。

中期経営数値。国内・海外での高い成長と利益持続事業への転身により、2020年度には売上を倍増させると意気込む

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