増税直前の9月の店舗売上は前年同月160%超 需要の反動減期間は8%増税時よりも短縮か


2014年4月に消費税が5%から8%になった。当時、増税前の駆け込み需要は2014年の年明けから始まり、反動による需要低迷は約1年続いた。それと比較すると、今回は駆け込みがスロースタートだったようだ。直近の状況について、店長に聞いた。

8~9月の店舗売上は駆け込み需要で急伸長

家電量販企業の2019年度上期を振り返ると、第1四半期は売り上げ、利益とも好調に推移したといえよう。特に粗利益や営業利益は大きく伸長した法人が多かった。

しかし、このまま第2四半期も好調さを持続させるかと思いきや、7月は全国的に気温が低い日が続き、特にエアコン販売には大きなダメージを与えた。それでなくても7月は、1年の中で最もエアコンが売れる月だ。テレビや白物家電は好調さを維持したが、天候によるエアコンの販売機会ロスのため、ケーズホールディングスの7月の店舗売上高は速報値で前年同月比83.0%と低迷。コジマの店舗売上高も同様に同91.0%、天候に左右されないEC売り上げを含むビックカメラの7月売り上げも前年割れだった。

しかし、8月は一転して気温が上昇し、エアコン販売が復調。それとともに増税を控えた駆け込み需要も顕在化してきたようで、8月のケーズホールディングスの店舗売上高は前年同月比127.8%で、コジマも同122.3%、ビックカメラも113.1%と、いずれも2桁伸長を遂げた。

各社のPOSデータによる月次売上高。ビックカメラの月次売上高にはECも含んでいる
各社のPOSデータによる月次売上高。ビックカメラの月次売上高にはECも含んでいる

9月も残暑と呼ぶには気温が高すぎる日が多く、ネットニュースや報道等で消費税率アップの話題が多く取り上げられ、大型商品や高額商品を中心に駆け込みの動きが活発化してきた。特に最終週の週末は大型家電製品を中心とする買い替えのお客で賑わったという。総体的に第2四半期は、7月の失速分を十分にクリアするだけの販売実績になったと推測される。

反動減対策は売価を問わず、積極的な接客応対で臨む

首都圏の郊外型店舗のA店長は、「9月は前年対比で160%を少し超えるような販売実績で推移しています。特に冷蔵庫や洗濯機は明らかに駆け込みの動きが見られ、伸びました。テレビは4Kテレビの引き合いが多く、エアコンに次ぐ伸長率となっています。昨対では大きく伸長していますが、前回の8%増税時と比べると、駆け込み需要のボリュームとしては弱いという印象です」と語る。

4Kテレビへの買い替えでテレビ販売は好調に推移している
4Kテレビへの買い替えでテレビ販売は好調に推移している

また、大型家電商品は好調だが、レンジや炊飯器に代表される調理家電やクリーナーは昨対で伸びてはいるものの、伸長率は大型家電商品ほどではないという。

気になる増税後については、「当然、反動減は想定しています。8%増税時と比べて、駆け込みが短期間だったことから、反動もさほど長期化するとは思っていませんが、第3四半期トータルでは1割減くらいになりそうだと見ています」とA店長は話す。

具体的な反動減対策については「まず、来店客数が減ることが考えられ、しかも高額商品はすでに購入したという状況になります。売り場で、できることはしっかりと接客に取り組み、単価が低い商品であっても次回の来店につながるようにしていくことを考えています。当然、単価アップの提案にも注力しますが、お客様は増税によって価格に敏感になっていると思いますので、着地点を見極めながら単価アップすることによって得られる商品の価値を伝えていきたいと考えています」とのことだ。

需要反動減の期間は単価の低い商品でも接客をして次回の来店につなげる
需要反動減の期間は単価の低い商品でも接客をして次回の来店につなげる

想定される需要低迷期間は非家電の取り扱いに注力

関西の郊外店のB店長は「7月は非常に厳しく、8月になってから駆け込みのお客が目立ってきました。店舗全体では前年同月170%くらいで、テレビは200%を優に超えています」と話す。

B店長は駆け込み需要の反動減に対して、「テレビはアナログ停波からの買い替えが顕在化し、大画面や4K、有機ELという話題性や買い替えにおけるランクアップ提案ができるため、反動減は限定的と思っています。その反面で白物家電は影響を受けると見ています」という。

駆け込みのボリュームが大きい白物家電は増税後に影響を受けそう
駆け込みのボリュームが大きい白物家電は増税後に影響を受けそう

反動減からの回復には「家電需要自体が右肩上がりではないので、半年くらいはかかるのではないかと見ています」という。前回の増税時と比べて、時期が異なるため、下期の新生活需要での伸長は期待できるとし、需要全体は年末商戦には回復するものと考えている。

しかし、前回の増税よりも反動減の期間は短いとはいえ、来店客数は減ると想定している。では、この期間はどのような取り組みを行うのか。「リフォームや玩具などの非家電分野をアピールして、売りを作っていこうと思っています」とB店長はいう。また、キャッシュレス決済でのポイント還元キャンペーンは事業者によって継続的に実施されることから、これについても店頭でアピールしていくとしている。

反動減によるマイナスが予想される中で、リフォームなどの非家電を強化して顧客の固定化と利益貢献を狙う
反動減によるマイナスが予想される中で、リフォームなどの非家電を強化して顧客の固定化と利益貢献を狙う

売り場のメンテに注力し、小物や消耗品を確実に販売

首都圏のC店長は、「エアコンは前年の9月が悪かったので、9月単月としては昨対で200%近い実績になっています」と話す。駆け込み需要については、前述の他店と同様に8月から発生したという。「全般的に実績は好調で、9月は昨対170~180%くらいで落ち着きそうです」。

反動減については「やはり、反動減はあると思っています」とのことで、昨対で1~2割くらいは落ち込むと見る。ただし、この反動減の期間については「年末商戦まで時間があって、10月以降に新製品が発売される商品も多いため、1~2カ月くらいは厳しいと思いますが、12月には回復するのではないかと見ています」と話す。

反動減の対策では「大型商品は、やはり影響を受けると思うので、中型や小物、フック掛け商品、消耗品などをしっかりと売れるようにしていきます。特にこれらの商品は欠品なども起こりやすいので、売り場のメンテナンスには十分気をつけていきます」と気を引き締める。

消耗品やアクセサリーなど、購入頻度の高い商品は売り場のメンテナンスを確実に行い、販売機会ロスをなくす
消耗品やアクセサリーなど、購入頻度の高い商品は売り場のメンテナンスを確実に行い、販売機会ロスをなくす

また、同店では各市区町村で住民税非課税者と子育て世帯が購入できるプレミアム付商品券の利用店舗として店頭で告知するほか、キャッシュレス決済のポイント還元キャンペーンなども積極的に告知していく方針という。

山があれば、谷はある。駆け込み需要は、あくまで需要の前倒しであり、前に倒された分だけ増税後の販売は減る。いわゆる需要の反動減が続きそうな期間については、それぞれの店長で見解が異なっているが、最終的には購入者であるお客の動き次第だ。

来店客数の減少も想定されるので、なおさら売り場では接客や提案によって成約率を高める必要がある。自店の商圏特性や客層、平均販売価格帯などを改めて見直し、発見のある売り場やお客の購入意欲を刺激するような展示演出に取り組もう。