売り場づくりや集客にもクラウドファンディング活用のヒントを探る
従来にない新機軸の商品が登場すると、必ず気になるのが「この商品は店舗のどの売り場のどこに置かれるのか?」だ。
近年では携帯型の自動翻訳機が登場したときにこれを感じた。その前はドローンやLED電気線香が出てきたときにも思った。消費者から見て探しづらい商品は、売る側も置き場所を考えるのに一苦労する。売り場を見ているとその迷いも伝わってくる。
CFで見かけがちな店頭で触ってみたい商品
クラウドファンディング(CF)で時折目にする目新しい家電も、「これを置くならどこだろう?」と感じるものが少なくない。たとえば、メール着信通知機能付きのペン。持ち歩けて、ロッカーや下駄箱にも入れられる小型消臭機。猫の生活を見守る首輪型デバイス。電動耳かきクリーナー。ペダルを漕ぐ人力発電機…。これらを取り扱うならどこに置くだろうか。
この夏にスキャナー機能付きLEDデスクスタンド「Aura」がMakuakeで支援を募集して、12003%の達成率を記録し、60,015,960円の支援を集めた。本誌のWebサイトでも取り上げたが、この商品もまた店頭に置くならどこだろう?と考えさせられた。
2in1や3in1の機能を備えた家電は、ダブル展示できれば探しやすいが、売り場のスペースは限られる。
一方で、購入する前に試してみたいと感じさせる商品も多い。GREEN FUNDINGで支援募集中の商品に「Nail Clipper」というポータブル電動爪切りがある。類似の商品もあるが、いずれも爪切り(爪研ぎ)に掛かる時間や動作音が気になるタイプの商材だ。支援募集サイトでは、Nail Clipperはこれらを改善していると案内しているが、消費者は「どのくらい」を店頭で試したいのではないだろうか。
QRコードを使って自社通販サイトへ誘導
CFで支援募集中の製品や大手メーカーが通販のみで販売予定の製品を集客に活用している例としては、二子玉川の「蔦屋家電+」がある。蔦屋家電の中に設けられたコーナーで、4月のオープン当初は三菱の「ブレッドオーブン」や日立の「空気清浄機 深澤直人モデル」も展示していた。商品名のPOPにQRコードを表示し、商品のサイトで詳細情報が見られ、CFのページに直接アクセスできる。
このQRコードが自社通販サイトの購入ページならどうか。店頭在庫無用の商品を集めたコーナーがあれば、ニッチで面白い商品が多数展示できるはずだし、店舗で取り置き対応すれば、持ち帰れないなら他店を探すというお客も抑えられるはずだ。
CFで見かけがちな、売り場の分かりづらい商品や、購入前に触れてみたい商品を、月替りなどで集めて展示するスペースが店頭にあれば面白い。言うは易しなのは分かった上でのことだが、CFを活用することで、新しい商材を探すだけでなく、売り場づくりや集客がもっと工夫できるのではないか。そこに可能性を感じてならない。