連載 神原サリーの視点【第2回】試して選べる クリーナー売り場
12月は秋に発売された家電が勢揃いし、1年で最もにぎやかな売り場になります。ボーナスシーズンでもあり、欲しかった家電を買いに来る人、自分へのご褒美に何か買いたい人、また大掃除に合わせてクリーナーを買い替えたり、買い増したりする人など、色々なお客様が来店します。私は上手な家電の買い方として、売り場のスタッフに相談するのはもちろんのこと、「まずは店頭で試しに使ってみてほしい」と常々発信しています。とはいえ、繁忙期は接客にかける時間はコンパクトにしたいもの。今回は、お客様が自分で家電を選べるような「体験コーナー」とはどうあるべきかを考えてみます。まずは体験・体感が購入の決め手になりやすいクリーナー売り場を見てみましょう。
自由に試せることをきちんとアピール
この記事を書くにあたり、いくつかのロードサイド店舗を視察して思ったのは、「これでは試しに使って良いのかさえ分からない」でした。
ずらりと並んだコードレススティッククリーナーの前には、フローリングや畳と思しきパネルが何枚も用意されて床に敷かれています。目ぼしい機種を取り上げてスイッチを入れると、きちんと充電されていて、フローリングの床面を軽快に滑っていきます。「自走感もなかなか」と思わず呟き、今度は隣のモデルも試しました。スティック部分を外してハンディとしても使ってみます。すると、近くにいた60代と思われるご夫婦の奥様が「そうやって使うのね。試していいなんて知らなかったわ」と話しかけてきたのです。
その後ろの通路も見てみましょうか。両脇に腰の高さの棚があり、その下には段ボールに入った製品が積んであります。棚にはキャニスター型のクリーナーが紙パックとサイクロンとで分かれて並んでいて、その後ろにメーカーが作成した説明パネルが張ってあるという具合。最近の売れ筋はスティックなのでキャニスターは試せないのかな思いつつ、よく見てみると棚の奥には製品ごとにコンセントが用意されているではないですか。なるほど、キャニスターも軽量化されているから、棚から下ろして使ってみてくださいということなのですね。
コードレススティックコーナーには「手に取ってお試しください」、軽量キャニスターのほうには「コンセントを用意してあります。棚から下ろしてご自由にお試しください」といった張り紙をぜひ用意していただければと思います。高い位置にある商品には「お困りのことがございましたら、スタッフにお気軽にお声がけください」などの張り紙もあるとより親切ですね。
そんな説明を書いておかなくても、自由に試してもらえていると考える店舗もあるかもしれません。その場合、その先の「試すときのチェックポイント」を掲示してみてはどうでしょう。大切なのはどの機種が優れているかではなくて、使う人とマッチしているかです。下記の図を参考にお店独自のPOPを作っていただければと思います。アタッチメントも展示してある場合、それを使ってみるように促すことも必要ですね。お客様が自分で商品を選べる手立てにもなりますし、疑問があれば質問するきっかけにもなり、コミュニケーションツールとしても役立つでしょう。
健康家電売り場の体感コーナーも見直しを
年末商戦では自分へのご褒美や贈り物として、小型のマッサージ器などの健康家電を買う人も増えます。大型のマッサージチェア同様に、口コミや価格だけではなく“体感して選びたい”家電の代表格です。売り場を見ると個々のアイテムがコンセントに繋がり、“使える状態”にはなっています。しかし、けっこう重たい商品が棚の上段に置いてあり、それを下ろすだけでも一苦労。落ち着いて試すにはまだまだハードルが高い印象を受けます。
座って肩や腰などに当てて試せる椅子を用意したり、手のマッサージ器など今注目のカテゴリーを集めて展示し、「違いを体感して、お好みのものを選んでください」というようなPOPを用意したりすれば、メリハリのある売り場になるのではないでしょうか。