大日本印刷が未来型店舗をイメージしたポップアップストア「boxsta」をオープン
カメラとマイクで来店客の購買行動を分析
boxstaの仕掛け人は、大日本印刷の情報イノベーション事業部に所属する浅野陽介グループリーダーだ。boxstaは「デジタル時代の店舗」をテーマとするショールーミングストアで、ECが抱えるタッチポイントがないという問題の解決と、既存のリテール店舗への「お客の顔が見える場」「顧客の購買行動のデータが取れる場」の提案の為に仕掛けた実験スペースになっている。
クラウドファンディングで支援募集中の商品や、リアル店舗で流通の少ない商品など、国内外のIoT機器を25製品展示しており、商品はレジで精算して持ち帰るのではなく、その場で通販に申し込んだり、Makuakeで支援したりすることで購入できる仕組み。
家電量販店がショールーミングに利用されるようになって久しいが、昨今は店舗を積極的にショールーミング化し、自社の販売サイトに誘導する取り組みも見られる。そうした店舗では大いに参考になるのではなかろうか。
展示する各商品のすぐそばには、それぞれマイクとカメラを設置してある。
「カメラは、立ち寄り客数、滞留具合、あるいは顧客の性別や年代などのデータを集めます。マイクは、展示商品の前でスタッフとの間で交わされた言葉などを基に、ポジティブな発言とネガティブな発言にどんなものがどのくらいあったのか、購入の決め手になったポイントは何だったか、購入しようとして止めた場合は何が原因だったのかなどの情報を収集します」と浅野氏。
集めたデータは映像と音声を解析し、個人情報を削除して統計化。クラウドで分析したものを出品メーカーにレポートとしてフィードバックすることで、今後の商品開発やマーケティング活動に繋げていくという。もちろん、リテールが売り場での展示方法を考えたり、接客を研究したりするのにも活用できるはずだ。
新しい商品を体験できる場を提供したい
展示物の制作や短時間できれいに設営するのは、DNPの得意とするところと語る浅野氏だが、一方で展示する商品を集めるのには苦労したという。
「当社は普段、小売業をやっていないのでスタートアップの商品をどう集めれば良いかノウハウがありませんでした。Makuakeと協業できたことで、魅力あるユニークな商品がぐっと増えました」と浅野氏。
会場を見回すとクラウドファンディングをウォッチしている人にはお馴染みの商品もチラホラ見られる。クラウドファンディングサイトで気になった商品を、支援する前に体感できる場としても注目できそうだ。
boxstaの名称は「BlueOcean」のBOと、「Startup」のSTAを、交わるXで表現したという。ロゴはXだけ色を変えた。この名称を考案したのは浅野氏で、今までにない新しい商品が体験できる場だとのメッセージを込めたと言う。
「今後もboxstaの取り組みは続けていきますが、同じようなショールーミングストアを同じ場所でもう一度やることはあまり考えていません。やるとしたらそのたびに場所を選定していくことになると思います」(浅野氏)
今後はMakuakeと共に、IoT機器の選定・収集を行っていき、オープンイノベーションサイト「DNP INNOVATION PORT(https://www.dnp-innovationport.com/)」でも、商品を募集していく。
浅野氏はDNPが印刷業に留まらず、こうした実験的な取り組みもやっているということを、BtoBやBtoCに限らず広く知ってもらいたいとのことだった。