家電量販企業はコロナリスクにどのように立ち向かうのか


2020年4月7日、7都府県を対象とした緊急事態宣言が出された。現時点で今後はどのようになっていくのか、先行きは見通せない。今回のコロナウイルスのような事態はそうそうあるわけではないが、リスク自体は常に存在する。改めてリスクについて考えてみたい。

コロナウイルスで小売業の売上は激減

新型コロナウイルスの感染拡大は、企業や個人に対するリスク管理の重要性を改めて認識させたといえるだろう。感染者の増加により、人が集まる場所は感染リスクが高まるという意識が高まり、百貨店の3月の売上は前年同月比で約30~40%のダウンとなったようだ。 4月に入るとこの状況はさらに悪化し、緊急事態宣言も受けて約1カ月の間、休業する百貨店も出てきている。

家電量販企業でも都市型の家電量販店舗は大きく影響を受けている。4月7日に緊急事態宣言が出され、対象となっている7都府県の家電量販店舗の売上は大きく低下することが予想される。

中小企業庁が提案しているリスク管理の表をベースに、家電Biz編集部がまとめた家電量販企業が取り得る対策が下記の表である。

店舗の休業でリスクを回避

家電量販企業が行うべきリスク対策としては、まず、リスク回避がある。リスク回避は店舗内での感染者を増加させないため、また、出店地域内の感染者を増やさないために、店舗を休業することである。
ビックカメラ、エディオン、ノジマなどでは、4月4、5日の週末2日間、一部店舗を休業とした。他業界の例ではあるが、コロナウイルスの感染者が発生した店舗の事例を見ると、多くの企業が店舗を休業して消毒を行い、安全が確保した後で営業を再開させている。

損失防止は、コロナウイルスの予防対策を実施した上で、営業を行う方法である。予防策としては従業員の手洗いや検温、従業員同士の適切な距離の確保、店内の換気や消毒等を行い、さらに店舗においては顧客向けとして手の消毒や顧客との適切な距離の確保、店舗の売り場除菌等がある。このような対策を行い、損失につながるリスクを少しでも軽減させながら店舗運営に取り組む。

損失削減は、通常営業の規模を縮小して営業を行う方法。例えば、フロアを限定して営業を行う方法や、営業時間を短縮して業務を行う方法がある。特に緊急事態宣言対象地域に出店している家電量販企業では、宣言が出た後に営業時間の短縮を発表している。休業自体はリスク回避策ではあるものの、そのまま損失になる。営業時間の短縮は損失自体を少なくなる取り組みといえるだろう。

ヤマダ電機では緊急事態宣言の対象地域の店舗では、営業時間を短縮

リスク分離・分散は、店舗売上が低下した分をインターネット販売等でカバーしたり、緊急事態宣言の出ていない地域での売上アップに努める方法だ。ビックカメラやヤマダ電機、ケーズデンキ、エディオンなど、多くの企業では、特に前者の方法で売上補完を図っている。

リスク管理は統制と金銭的補填で

上記のリスクコントロール策は、いかにして損失の大きさと発生頻度を削減するかというものだ。これに対して、損失が発生した際に金銭的な補填を行うのがリスクファイナンシングで、大別すると以下の2つが挙げられる。

リスクの移転については、残念ながら今回のコロナウイルスに関しては保険制度等が対応できていないようで、現実的なリスク対策にはなっていない面がある。ただし、一定の基準を満たした社員やパート、アルバイト等に対しては国の支援があるようだ。

リスクの保有については、今回のコロナウイルスの流行に対して特に対策を行わずに通常通り営業し、売上が低下した分は自らの資金でリスクを負うという方法である。

リスクに対してコントロールをしながら、ファイナンシングも実行するというのが本来のリスク対策なのだが、かつてない事態となっている今回の件はまさに想定外。企業の自助努力だけで感染拡大を抑えられるものでもないため、現時点においても対策の実行は難しい。さらに、終息時期が不透明という問題もあり、現状が長期間、広範囲に及ぶことも考えられる。

光明はECや非家電商材の拡大

だが、厳しい中でも光明はある。その一つは、家電量販企業のEC強化策が功を奏していることだ。数年前から各企業はECを強化しており、EC売上は高い成長率となっている。コロナウイルスの影響で顧客が外出を控えたために、家電量販企業のEC売上はさらに急拡大している。

もう一つは、家電量販企業が扱う商品の多角化だ。家電量販企業は数年前から医薬品や玩具、酒などの非家電商材を取り扱ってきた。コロナウイルスの影響で、マスクやアルコール、消毒液が不足したが、家電量販店でも取り扱っていることで、店舗の集客と売上、さらには地域の顧客への貢献にもつながっているのだ。
また、玩具は外出できない子供や大人の消費につながっている。酒類も会社帰りのサラリーマンの家飲み需要として拡大している。

玩具や酒類は家電製品の購入を目的としない層の来店動機にもつながっている
玩具や酒類は家電製品の購入を目的としない層の来店動機にもつながっている

今回のコロナウイルスは家電量販企業にリスク管理の重要性を再認識させた。いつ、訪れるかもしれないリスクに対して、企業はリスク分散、リスク回避等のいろいろな策を持っていないと難局は乗り切れない。確かにコロナウイルスの感染拡大は想定外だったといえよう。しかし、これからは想定外の事態が当たり前のように発生する時代かもしれない。企業の成長と、その成長を妨げる恐れのあるリスクの双方をしっかりと見据えて取り組む必要がある。家電量販企業各社の知恵と工夫に期待したい。