休業する店舗、営業する店舗
4月7日(火)の夕方、安倍総理が新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象となる緊急事態宣言を発表した。宣言の効力はゴールデンウィーク最終日となる5月6日(木)までだが、感染の状況によって期間の延長もありうるとしている。
国の緊急事態宣言に伴って休業を要請する施設は、各自治体が公開しているが、床面積で1,000㎡超の商業施設は基本的に休止を要請する施設となる。ただし、生活必需品を販売する施設や食事を提供する施設、社会生活を維持する上で必要な施設等は対象外となり、適切な感染防止対策を施した上での営業を要請されている。
東京都の例では、家電量販店(家電販売店)は、社会生活を維持する上で必要な施設として休止要請の対象外となっている。各量販店は営業時間の短縮や、売り場の衛生の徹底などを行いながら、人々の社会活動の維持のために営業を続けている状況だ。
とはいえ、ショッピングモールなどの大型商業施設に入っている店舗は、商業施設の休業に準じる形になり、緊急事態宣言の出た翌8日には、今年2月にオープンしたばかりの「ビックカメラ 日本橋三越」をはじめ、全国で100店舗以上の家電量販店が休業に入った。特にノジマは大型商業施設へのインショップ展開が多く、8日に休業を発表した店舗だけで実に59店舗を数える。
一時休業する店舗は、感染拡大に応じて増えている
4月11日(土)には、エディオンが東京・秋葉原のエディオンAKIBAや、岐阜のエディオンマーサ21店、北九州のエディオン三荻野店などを追加で休業。
4月14日(火)には、ヨドバシカメラが緊急事態宣言対象都府県にある16店舗について、当面の間休業と発表。
4月15日(水)には、ビックカメラもビックロ新宿東口店、渋谷ハチ公口店、池袋西口店を新たに休業した。
従業員の動きが感染を防ぐ
あまりそうなって欲しくはないが、都市部の店舗でいま実施されている措置は、今後郊外の店舗でも必要になる可能性がある。業界全体で参考にし、工夫を提案し合いながら、お客と従業員をウイルスから守る取り組みを進めたい。
営業を続けている店舗では、先述のとおり営業時間を短縮し、各社ともおおむね19:00には閉店する。衛生管理の面でもさまざまな工夫や、こまめなメンテナンスを実施しており、売り場を見て回るだけでも気が付くことは多い。
まず、従業員のマスクの着用は例外なしだ。お客も9割方はマスクを着けているが、従業員でマスクなしは一人もいない。従業員は出社時に体温を計って申告しているという店舗も少なくない。
従業員がアルコールを着けた布で清掃している姿も普段より明らかに増えた。商品そのものはもちろん、リモコンなどの小物、レジ周りや接客に使うテーブルや椅子、エスカレーターの手すりやエレベーターのボタンなど、お客や自分たちの触れる場所をこまめに拭き取っている。
報道などで既によく知られるとおり、新型コロナウイルスは感染から発症までの潜伏期間中も他人に感染が広がる。潜伏期間中は発熱や咳などの症状がなく、感染者は自分の感染に気付かずに活動できてしまう。飛沫感染だけでなく接触感染もするため、感染者が触れた場所に触れ、その手で目や口元などを触わることでも感染しかねないのだ。
誰が感染しているか分からない状態では、従業員も含め「誰かが触った場所」は、まめに拭き取ってメンテナンスするしか手がない。
店舗でできる工夫を重ねていく
レジ周りでは、ビニール製の透明な飛沫感染防止シートを天井からぶら下げているところもある。コンビニや病院の受け付けなどでも見かけるが、家電量販店でもこうした取り組みに積極的な店舗は素直に評価したい。
また、洗面所のハンドドライヤー(ジェットタオル)の使用を見合わせている店舗も増えた。ハンドドライヤーの風によってエアロゾルが発生する可能性を抑止するための措置だ。
このほか、ガチャガチャやゲーム機、両替機などを休止している店舗や、店内のベンチの数を減らしたり、ベンチに詰めて座らないよう注意書きを掲示したりするところも出てきている。
いま需要の増している商材の売り場
都心部では外出自粛要請を受け、リモートワーク(テレワーク)の需要が急速に高まっている。デスクワークなどの自宅作業が可能な業務は、業種を問わず在宅で行うことが奨励されている。新型コロナウイルスが働き方改革を推し進める形となったのは、皮肉としか言いようがない。
リモートワークのための関連商材コーナーを設ける店舗も出てきた。必要な機材をこの機に探すお客の多くは、IT機器の売り場に慣れていない。まとまったコーナーが用意されているのは便利なはずだ。
なお、ウェブカメラやヘッドセットは品切れとなっている店舗も目立ってきた。ウェブカメラとしてしか使わない場合は割高になるが、アクションカムで代用することもできるので、どうしてもというお客には勧めても良いだろう。
学校が休みになったことや、外出する趣味が難しくなったことなどから、家庭用ゲーム機の需要も増している。4月10日(金)には、スクエアエニックスの人気RPGタイトル「FINAL FANTASY VII REMAKE」が発売となり、ゲーム機もゲームソフトも品切れが増えている。これらを探しに来るお客への対応も注意したい。
人々の生活のための営業
4月に入ってから、新宿、渋谷、池袋などの繁華街に限らず、都心部の人通りは日に日に少なくなってきている。
秋葉原の電気街も新型コロナウイルスが流行するまでは、ウィークデーでもそれなりに人通りがあった。現在では、道行く人は目的があって通っているだけで、ふらりと立ち寄っている人はほとんどいなくなっているように見える。
飲食店も営業休止する店舗や、三密を避けるために座席を減らし、窓を開け放つ店舗が増え、街全体の活気が間違いなく低下している。
そのような中でも、人々の生活のために営業している店舗には頭が下がる思いだ。もちろん、危機感のない営業は絶対に避けて欲しい。生活必需品を提供し、経済を回す小売業の使命は大変重要だが、新型コロナウイルスに立ち向かい、日常の風景を取り戻すことが最優先であることは忘れてはなるまい。一日も早い終息を願うばかりだ。