コロナウイルスの影響下で奮闘する家電量販店 新店出店の宣伝やセールをせず、オープンに臨む
集客が感染防止対策にはマイナスとなる
コロナウイルスの感染拡大防止で喧伝されているのが、3密を避けること。しかし、豊富な品ぞろえと接客による商品説明を特徴とする家電量販店の店舗は、店舗の規模や形状によって異なるが、3密状態となってしまう可能性がある。
現場では16日の記事「コロナ緊急事態宣言下の都内家電量販店」で示したように、さまざまな工夫や努力をして、お客に安心して来店してもらえるような策を講じている。しかし、ゲーム機器の入荷などで繁華街の家電量販店に多くのお客が殺到した例もある。感染防止策は、販売サイドの取り組みだけでは成立しないことが改めて分かる。
売り上げや利益の確保が店舗にとって重要なのは当たり前だが、同時に今は勤務する従業員の安全や来店客への感染防止対策も喫緊の課題である。お客が集まらないことには売り上げが見込めない。しかし、お客の数が多くなればそれだけ感染のリスクが高まる。非常に営業しにくいのが現状といえよう。
固定客がいる既存店においても商売の環境が厳しいこの時期だが、新規でオープンする店舗はある。ただ、そのオープンを取り巻く環境がこれまでとは大きく異なっている。
オープンイベントを取りやめたエディオン豊田四郷店
4月17日にオープンしたエディオン豊田四郷店は、再開発が進行中の商業集積地区内の店舗だ。通常のオープンと異なるのは、オープンを知らせるチラシや広告等を一切行わず、オープンセールも行わなかったことだ。
また、当初予定していた店頭での「家電の無料点検」等のイベントも行わない。営業時間に関しても本来の終業時刻は20時だが、当面は18時で店を閉めるという。新規オープン時のセールやイベントは多くのお客を呼び、顧客化につなげるものだが、それをしない。
同社では、「こういう時期だから、あえて多くのお客様を呼び込むことはしません。店内においては従業員のマスク着用や清掃・除菌などを徹底し、地域のお客様に少しでも貢献できるよう営業を行っていくという考えです」と話す。
コジマはセールを取りやめるが、顧客宅への訪問サービスは実施
4月27日にオープン予定なのが、コジマ×ビックカメラ イオンモール高崎店。イオンモール高崎のリニューアルによって新たにインショップとして出店する。群馬県では伊勢崎店に次ぐ2店目の出店だ。
同店もエディオンと同様、本来は積極的に行うべきオープンセールを行わず、セールの告知や集客策なども打ち出さない。店内の感染防止対策としてはカウンターレジに飛沫防止用のビニールシートを設置し、従業員の健康管理に十分気をつけ、従業員とお客の安全を考えて営業を行っていく方針だ。
同社は訪問サービスの「くらし応援便」を展開しており、高崎店ではこのサービスを県内初として導入。「お客様の自宅に伺う従業員の健康管理には十二分に気をつけ、万全の体制で臨みます」という。
また、従業員がお客宅へ訪問し、最新の家電の使い方を説明して無償で体験してもらう新たなサービスを同店からスタート。今後は他店にも広げていく考えだ。
同社としては、多くのお客を集めることで「密」の状態を作るのは避けるが、地域の顧客貢献という意味からも顧客宅への訪問サービス自体を取りやめる考えはないと話す。
※イオンモール高崎の専門店街は当面の間、臨時休館になったため、本記事で24日オープン予定としていたコジマ イオンモール高崎店のオープンも延期となりました。
ケーズもオープンセールは実行せず
ケーズデンキはこの4月に福岡県と大阪府で3店のオープンを予定。家電量販各社は新規出店の店舗に関して、自社のサイトで告知をする。ケーズホールディングスのホームページにも3店舗の案内自体はある。しかし、『4月下旬オープン』として、明確なオープン日を記載していない。
通常であれば2週間ほど前の時点で、オープン予定日とともに告知を掲載している。同社では「人が集まらないようにという今の状況に合わせたこともあって、あえてオープン日を表示していません」と話す。
コジマやエディオンと同様に、同社でもオープンチラシの配布はせず、オープンセールも行わない。その理由を、「お客様に来てほしいのはもちろんですが、今は積極的に集客策を行う時期ではありません」と同社では説明する。
このように、新規オープン店舗については
①オープンチラシの配布をしない
②オープンセールを行わない
③大勢が集まるようなイベントは行わない
というのが、この時期の家電量販店の新規オープンに共通の取り組みといえそうだ
店舗でもマスクや消毒用アルコールの確保が急務
店舗ではコロナウイルスの感染防止対策に取り組んでいるが、傍で見ている以上の苦労があるという。例えば、レジカウンター周りを覆うビニールシートのシールド。「もともと、そんなものがあるわけではありません。のぼりに使うポールや店舗にある備品などを使って手作りしているのが現実です」と家電量販企業の関係者はいう。
従業員が接客をする際に必ず着用しているマスクや消毒用のアルコールについても「医療関係者にだって十分な数が回っていない状況です。本部でも集めた分を店舗に送ったりもしますが、すべての店舗のすべての従業員に行き渡る数は用意できません」とのこと。それでも接客時にはマスク着用が必須で、本部も現場もその対応に苦労しているのが実情だ。
いろいろな逆風の中、それでも営業を行うのは売り上げではなく、「生活必需品としての家電製品は多く、地域のお客様のお役に立ちたい、との思い」で営業を行っているという。前述の各店ともチラシもセールもイベントもないオープンとなるが、このお客ファーストの考えが地域のお客に伝わることを切に願う。