4K放送視聴可能機器の累計出荷台数は約2年で477万台 電波漏洩対策事業の助成金制度は大きく改善され、負担が軽減


新型コロナウイルスの感染拡大によって在宅時間が伸び、テレビの視聴機会は増加している。メーカーのラインアップでも4Kチューナー内蔵テレビが増加しており、市場としては好調に推移しているといえるだろう。しかし、肝心の4K放送についてはまだまだ認知されていない面も見られる。

6月の4Kテレビの出荷は過去3番目の高い数値

放送サービス高度化推進協会(略称A-PAB、以下同)は7月21日にオンライン記者発表会を開催し、新4K8K衛星放送の視聴可能機器台数の出荷動向と定期的に実施している4K8Kに関する市場調査の結果を発表した。

新型コロナウイルスの影響でこれまで集合形式で行われていた発表会はオンラインでの開催となった

4Kチューナー内蔵テレビに代表される新4K8K衛星放送視聴可能機器の出荷動向について理事の木村政孝氏が解説した。

機器の出荷状況について述べる木村氏(上)。新4K8K衛星放送視聴可能機器初号機は2018年6月に東芝映像ソリューションが発売したテレビで、2020年7月21日の時点で17社が視聴可能機器を発売している(下)

木村氏は「2020年6月末での新4K8K衛星放送の視聴可能機器の累計は476万7,000台で、普及の一里塚としていた500万台が見えてきました」と述べた。また、6月は新型コロナウイルスの影響で出荷にブレーキがかかると見ていたが、前年同月の1.8倍となる36万5,000台で、単月の出荷台数としてはこれまでの3番目となる高い数値を記録した。

2020年6月は新4K8K衛星放送開始前後の2019年11月と12月に次ぐ単月で3番目となる出荷台数だった

4~6月の四半期で見ても前年同期比1.9倍と伸長している状況について、「メーカー各社のラインアップが増えて価格が下がったことに加えて、コロナウイルス禍でのステイホームにより、家庭でのテレビ視聴時間が増加し、大画面テレビへの買い替えを推進したと考えられます。また、国の施策として実施された特別定額給付金も需要を後押ししたとの声も販売サイドから聞いています」と木村氏は解説した。

4Kテレビの所有は増加するものの、認知や理解はダウン

A-PABでは定期的に一般に対するWebでのアンケート調査を行っており、2020年5月実施の調査結果がA-PAB周知広報部部長の重森万紀氏から発表された。

サンプル数は男女5,000人で、チューナー内蔵、非内蔵を含めて4Kテレビを所有している人は2019年7月に実施した前回の調査から4.5ポイント増の14.4%。所有はしていないが欲しいという人も前回から1.4ポイント増の32.6%になった。

4Kテレビの所有者は前回よりも増加したが、4Kテレビを欲しくないと回答した人はまだ53%いる

新4K8K衛星放送を見たことがあると回答した人は前回の4.0%から6.0%にアップ。どこで見たかについては、自宅と回答した人が前回の52.8%から67.8%に増え、4Kテレビを購入した人が増加したことを表しているといえる結果となった。

しかし、「新4K8K衛星放送」という言葉を知っている人の割合は前回の41.3%から37.3%にダウン。チューナーのない4Kテレビは別途、対応チュ-ナーが必要になることを知っている人も前回の38.4%から28.1%に下がった。

新4K8K衛星放送に対する認知度や理解度は前回調査からダウン。一般に浸透しているとは言い難い結果となった

重森氏はこの結果を受けて、「今回の調査で4Kテレビの所有者が増加しているのは間違いありませんが、新4K8K衛星放送の認知度はダウンしていますので、さらなる認知度アップの努力が必要と考えています」と述べた。

市場調査の結果を発表するA-PAB周知広報部部長の重森万紀氏

正確なデータはないが、新4K8K衛星放送で実際に4Kカメラを使って撮影した番組のピュア4K比率は2割前後ではないかとのこと。ネットでは4Kコンテンツが増加している現状で、確かにこの比率では積極的に新4K8K衛星放送を視聴しようとはならないかもしれない。

とはいえ、映像のプロ集団である放送局が作成した4kコンテンツは抜群に映像がキレイで、番組としても見入ってしまう内容のものが多い。新4K8K衛星放送の開始あたりと比べると、店頭で新4K8K衛星放送のアピールは少なくなってきた感がある。改めて店頭でのアピール強化に努めたいところだ。

20年度の電波漏洩対策事業は従来よりも手続きが簡素化

新4K8K衛星放送は新たな周波数を使用するため、家庭で使用している既存の古い受信設備や不十分な施工方法では、電波の干渉や漏洩の懸念がある。そのため、A-PABでは総務省からの委託を受けて中間周波数漏洩対策事業補助事業を行っている。

これは電波漏洩の懸念がある製品の交換や施工方法の改修を行う際に助成金を提供するものだ。同制度は2018年度から実施され、7月からスタートの2020年度で3年目。2020年度の予算額は約8億円で、前年度から増額となっている。

同制度は登録した事業者が改修工事を行う助成対象者に代わって申請をし、審査を経て助成金が支払われる。今年度はいくつかの点が改善され、簡素化されているのだ。

改善された3つのポイントは申請者にとって大きな負担軽減になっている

A-PAB 4K8K推進センター長の宇佐美雄司氏は「今年度の申請のスキームに関しては、申請者である電気店や工事店の方々からヒアリングを行い、なるべく負担がかからない方向での改善となっています」と話す。

「印鑑ではなく、サインでも可としたのでお客様が自宅に戻って印鑑を持ってくる手間などが大幅に軽減されています」と話す宇佐美氏

電子申請の導入と対象者への直接振り込みが可能に

特に今年度は電子申請でも対応する点が前年度とは大きく異なる。この電子申請では、国が各種の補助金申請の手続きを効率化するために開発したJグランツを活用する。さらにA-PABではこのJグランツに加えて独自の申請システムも活用していくとのことで、8月初旬までにはリリース予定という。

また、前年度まで助成金は事業者に振り込まれ、事業者から工事の発注者である助成対象者に振り込む形だった。しかし、今年度は直接、助成対象者に振り込まれる形も取れるようになった。「直接振り込みは家電量販店の方々からの要望が多く、今年度はしっかりと対応し、ご要望にお応えすることができるようになりました」と宇佐美氏は語る。

2020年度の助成金申請は7月8日から受け付けており、最終的な期限は実績報告書提出期限の2021年2月19日までとなっている。店頭を訪れるほとんどのお客は同制度を知らないと思われるので、4Kテレビに買い替えるお客には、ぜひとも同制度を伝え、電波漏洩の対策を講じるとともに助成金という制度があることを知らしめよう。