家電量販店の4月売上は好調だったが5月以降は前年割れが必至か


2020年度の家電量販店はコロナ禍でも好調な業績で推移した。2021年度は会計基準の変更適用もあり、連結の通期予想では減収を予想する企業が多い。月次速報でPOSベースの売上高を開示している家電量販企業の4月売上高は前年実績を上回った。しかし、5月以降は前年が好調だった反動が現れてくる。

家電大型専門店の4月の商品販売額は前年同月比114.2%と伸長

5月31日に経済産業省の商業動態統計速報が発表された。それによると家電大型専門店の4月の商品販売額は3,510億円で前年同月比114.2%。一見すると2桁伸長で好調だったように見えるが、前年の4月は関東1都3県と大阪、兵庫、福岡に緊急事態宣言が発令された月である。家電大型専門店もこの影響を受けて商品販売額は前年同月比91.0%と落ち込んだ。

家電大型専門店の商品販売額
通信家電やカメラ類、生活家電は大きく伸長したが、前年同月の実績が大きく落ち込んで母数が小さくなったための伸びといえそうだ

2020年4月の各量販企業の月次速報ではコジマが前年同月比104.5%と前年実績を上回ったが、ケーズホールディングスが同98.5%で、エディオンも同88.3%。ビックカメラにいたっては都市型店舗ゆえに集客数が大きく減少し、同62.1%だった。

つまり、前年4月の販売額が落ち込んだため、2021年4月の前年同月比は伸長したといえるのだ。前年4月の売上高が落ち込んだ各社も2021年4月はケーズホールディングスが前年同月比109.7%で、エディオンは同110.2%、ビックカメラも同129.3%となった。コジマは前年4月もプラス成長で、この4月も同105.0%とさらに売上高は伸びた。

しかし、ここからだ。家電大型専門店の昨年の月別商品販売額の推移をみると、2020年5月が前年同月比108.8%、6月が同125.6%、7月が同112.1%、8月も同109.5%と伸長した。2020年9月は2019年10月から施行された消費税増税の駆け込み需要による反動減で前年同月比71.0%だった。そのため、2021年9月に関しては前年プラスが予想されるが、この5~8月は前年のハードルが高くなっているわけである。

商業動態統計の家電大型専門店
家電大型専門店の前年の6~8月は販売が好調だっただけに本年同月のハードルは高い

ケーズの月次速報による5月度売上高は前年同月比92.6%とダウン

6月1日にケーズホールディングスはこの5月度の月次速報を発表した。売上高は前年同月比92.6%で、前年同月実績を割ったのは先述の反動減で落ち込んだ9月以来である。

商品別でみると、テレビは前年同月比95.8%で冷蔵庫が同85.5%、クリーナーは同94.4%、調理家電が同95.0%、エアコンも同87.6%と前年実績を下回った。昨年の5月は前年同月比182.0%と大きく伸長したパソコン・情報機器も母数が大きかったため、この5月は同73.0%と大きくダウン。このような状況下で洗濯機は同106.5%と前年実績をクリアした。

ケーズデンキ月次速報
テレビは伸長率が徐々に低下し、5月は前年割れとなった

先述のとおり、前年の5~8月の家電大型専門店の販売は好調だっただけに、上期は厳しい状況となりそうだ。

家電量販店の月次速報
前年同月の伸長率が高ければ高いほど、実績を上回るハードルは高くなる

売り場ではお客の認知を促し、展示演出と提案に注力しよう

各企業とも売り場でのデモ映像やサイネージ、アプリ連動などでのDX化を推進しており、さらに非家電商材やPB、オリジナル商品の拡充で顧客開拓や利益率アップを図っている。

コジマ×ビックカメラ宇都宮本店
コジマは全国の店舗で酒類の販売を強化し、取扱商品を拡充している

当初予定されていたワクチン接種開始は遅れ、変異株が急増している現状で巣ごもり需要やテレワーク需要が急速に減少することはないと思われる。顧客のすべてがこれらの需要急増で、前年に商品を購入したわけではない。1年間の我慢と考え、購入を先延ばしにしていた顧客もいるだろう。

やはり、いかにして顧客の購入意欲を刺激して、成約に結びつけるかが肝心だ。店舗で扱っているから販売サイドにとっては認知している商品でも顧客には認知されていない商品もある。厳しい状況だからこそ、お客にいろいろな商品を知ってもらい、提案することが重要ではないだろうか。

そのためにも売り場の演出や無理のない商品の組み合わせ提案を実践し、難局を乗り切る工夫を売り場で実践したい。