IoTデバイスの国内市場は年々拡大 2022年は主力4カテゴリで170万台、110億円を超える市場にまで成長


家電Bizは成長を続けるIoT市場の現状を把握することを目的に、IoTデバイスの製造・販売を行う国内外の主要企業、店舗にて販売を行う家電量販企業を対象に聞き取りを実施した。

【調査概要】
(1)調査期間:2022年11月
(2)調査対象:「国内外でIoTデバイスを製造・販売する主要20社」
(3)回答数:7社(回答率 35%)
(4)調査対象製品:「スマートプラグ、「スマートカーテン」「スマートロック「スマートリモコン」

IoTデバイス市場の概略

2017年10月、GoogleからAIスピーカー『Google Home』が発売され、翌月にはAmazonから同じくAIスピーカー『Amazon Echo』が発売された。メディアでも大きく取り上げられ、「AIスピーカー」はその年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補にも挙げられるまでの話題になった。

IoTデバイスの市場を切り開いたAIスピーカー

ネットに繋がる家電製品はそれ以前から存在したが、この頃からIoTデバイスという存在が一般にも認知され、新たな市場として盛り上がりを見せ始める。その後、新しい市場に新規参入するメーカーも続々と増えたことで、IoTデバイス市場は着実に年々成長を遂げている。

IoTデバイスの主力製品である「スマートプラグ」、「スマートカーテン」、「スマートロック」、「スマートリモコン」4分野合わせた2022年の販売台数は約170万台、販売金額は113億円を超える市場にまで拡大しているとみられる。

IoTデバイス主力4製品の販売台数推測値
IoTデバイス主力4製品の販売金額推測値

販売はAmazon中心のオンラインが主流

IoTデバイスは家電量販店を中心にオフラインの場でも特設コーナーができている。特に都心の大型家電量販店ではボタンを押すことでIoT化の体感ができる実演コーナーも多く見受けられた。

都内家電量販店のIoTデバイスコーナー

しかし、家電量販店やIoTデバイスの主力メーカーから聞き取りを行う限り、現状ではリアル店舗での販売は限定的のようだ。オフラインチャネルでの販売比率は1割程度に留まっており、オンラインでの販売が9割を占めるとみられる。中でも特にAmazonの存在感は際立っており、現状オンラインでのIoTデバイスの販売のうち8割程度をAmazonが占めると思われる。

IoTデバイス主力4製品の販売チャネル比率 推測値

Amazonの顧客はIoTデバイスの主要顧客でもある20-40代の男性が多い。また、Amazon自体がAmazon Echoなどを数多く販売していることもあり、IoTデバイス製品の品揃えは他のECモールを圧倒している。今回ヒアリングを行ったメーカーも全社がAmazonに出店しており、中国を中心に国外から出店しているメーカーも多く存在する。

AmazonはIoTデバイスの品揃えで他のECモールを圧倒

スマートプラグの市場動向

スマートプラグは、接続した家電をIoT化する機器のことで、プラグ自体にWi-Fi機能が備わっている。通信機能を搭載していない家電でもスマホやAIスピーカーなどから操作が可能になる。

スマートプラグ主力製品  画像出典元:SwitchBot

順調に成長を続けてきたが2022年は販売台数、販売金額ともにほぼ前年並と伸び悩むようだ。1,000〜2,000円代の低単価の商品が多く利益を出しにくいこともあり、一部のメーカーは撤退してメーカーの集約がはじまっている。

このカテゴリではSwitchBot株式会社が販売するSwitchBotプラグミニ、SwitchBotボットが圧倒的な販売量を占めているとみられる。

スマートプラグ 販売台数・販売金額 推測値

スマートプラグの主力メーカーとブランド

株式会社リンクジャパン ePlug
株式会社iStar Solutions etife
ティーピーリンクジャパン株式会社 TP-Link
サンワサプライ株式会社 サンワサプライ
AnyMind Group株式会社 Meross
SwitchBot株式会社 SwitchBot
アマゾンジャパン合同会社 Amazon
BBソフトサービス株式会社 +Style

スマートカーテンの市場動向

スマートカーテンは、カーテンレールに取り付けることでセットした時間に自動でカーテンを開けてくれるアイテムのこと。太陽の光を目覚ましがわりに使用できることが評価されメディアにも多く取り上げられている。

スマートカーテン主力製品  画像出典元:SwitchBot

スマートリモコンは、メディアで取り上げられて認知度が上がったこともあり年々売上を伸ばしている。2022年の販売台数は98,950台、販売金額は10億円を超える規模にまで成長しているとみられる。

スマートカーテン 販売台数・販売金額 推測値

参入メーカーはIoTデバイスの中でも比較的まだ少ない。このカテゴリではSwitchBot株式会社のSwitchBotカーテンが圧倒的な台数を販売しており、株式会社ロビットのmornin’ plusがそれに続くとみられる。

スマートカーテンの主力メーカーとブランド

SwitchBot株式会社 SwtichBot
BBソフトサービス株式会社 +Style
ティーピーリンクジャパン株式会社 TP-Link
株式会社リンクジャパン eCurtain
株式会社ロビット mornin’ plus
Olide Autodoor Store.HZ Olide

スマートロックの市場動向

スマートロックは、玄関錠に後付けの専用機器を取り付けることで、スマートフォンアプリ等の機器を使用してドアの施錠・解除ができるアイテムのこと。

スマートロック主力製品  画像出典元:SwitchBot

日本国内では2015年頃から一般販売が開始された。年々売上を伸ばしており、参入メーカーも増えている。2022年はIoTデバイスの大手メーカーであるSwitchBot社が参入したことで市場は急拡大し、2022年の販売台数は369,000台、販売金額は50億円を超える規模にまで成長しているとみられる。

スマートロックのカテゴリは、Qrio株式会社が販売するQrio Lock、SwitchBot株式会社が販売するSwitchBotロックが大きなシェアを占めているとみられる。

スマートロック 販売台数・販売金額 推測値

スマートロックの主力メーカーとブランド

株式会社ユーシン・ショウワ SADIOT LOCK
株式会社ビットキー bitlock
Qrio株式会社 Qrio Lock
SwitchBot株式会社 SwtichBot
CANDY HOUSE JAPAN 株式会社 SESAME

スマートリモコンの市場動向

スマートリモコンは、エアコンやテレビなど室内の家電のリモコンを1台にまとめられるアイテムのこと。スマートフォンのアプリで連携した家電を操作することができるようになったり、連携したスマートスピーカーから音声操作も可能になる。

スマートリモコン主力製品  画像出典元:SwitchBot

家庭内の家電製品のリモコンを1台にまとめたいというニーズは強く、スマートリモコンは年々売上を伸ばしている。2022年の販売台数は778,500台、販売金額では40億円を超える規模にまで成長しているとみられる。

スマートリモコン販売台数販売金額 推測値

スマートリモコンのカテゴリは、SwitchBot株式会社が販売するSwitchBotハブミニが圧倒的な販売台数を占めており、Nature株式会社が販売するNature Remoシリーズがそれに続くとみられる。

スマートリモコンの主力メーカーとブランド

Nature株式会社 Nature Remo
SwitchBot株式会社 SwtichBot
株式会社リンクジャパン eRemote
サンワサプライ株式会社 サンワサプライ
株式会社コヴィア ORVIBO
株式会社iStar Solutions etife
ラトックシステム株式会社 ラトックシステム
株式会社リンクジャパン EZCON、eRemote
株式会社カシムラ ELPA

今後のIoTデバイス市場成長のために

今回はスマートプラグ、スマートカーテン、スマートリモコン、スマートロックの4製品について市場調査を行った。グラフで示したように市場は年々成長を続けているが、さらに成長を加速させるためには、より幅広い層への普及が欠かせない。

現在、IoTデバイスの購買層は20-40代の男性中心で、世帯普及率はまだ10%にも達していないとみられる。女性や年配の方にも、IoTデバイスの利便性(例:エアコンを外出先からON / OFFの切り替えが可能)や、使用している製品を手軽にアップグレードできる点(例:カーテンを手軽に電動に)をどれだけ伝えられるかが市場拡大の鍵となるだろう。

IoTデバイスを活用した省エネ性にも期待したい。エネルギー価格の高騰により節電意識は高まっている。使用することで省エネ性の向上が期待できるのはIoTデバイスの魅力の一つだ。家庭内で使用する消費電力のうち約7%は待機時の使用電力で使用されているが、スマートプラグを導入することで待機電力の減少も期待できる。スマートリモコンを導入すれば家電の稼働状況をスマートに自動化して手間なく省エネも可能だ。

市場拡大のためにオフライン店舗でのさらなる販売にも期待したい。新しいカテゴリの製品の価値を伝えるためには体感が欠かせないが、実演を交えた展示を行っている店舗は一部に限られる。IoT化は長期的なトレンドとして今後も続くとみられ、IoTデバイスの中に新しいカテゴリがさらに増えていくことは間違いない。メーカーと販売店が一体となり新しい市場を創造する気持ちで市場拡大に取り組んでいってほしい。

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