5年ぶりにビックカメラが広島に復活
2016年、広島カープは25年ぶりのセ・リーグ優勝を飾り、リーグ優勝の前後は広島市内が真っ赤に染まるほど、市民の熱狂ぶりは凄まじかった。その広島市内で9月14日、JR広島駅南口のBIG FRONTひろしま内にビックカメラ広島駅前店がオープンした。
ビックカメラが広島に出店したのは、今回が初めてではない。広島駅南口から徒歩数分ほどのひろしまモール内にはベスト電器が広島店を出店していた。その後、ベスト電器とビックカメラの業務提携により、2008年3月に同店をビックカメラに賃貸する形で、ビックカメラ・ベスト広島店として名称を変えてリニューアルオープンをしている。
この店舗は2011年3月にベスト電器に返還される形でビックカメラは広島の地を去っていった。そこから約5年半。ビックカメラは再び、広島の地に単独店として帰ってきた。
しかし、この空白の5年間に広島市内の家電量販店の競争状況は変わり、また、広島の商圏そのものにも変化が起きている。駅前という立地が集客面でアドバンテージとなる都市とならない都市もある。ここでは改めて広島というエリアについて取り上げてみたい。
ドミナントで圧倒的な存在感を示すエディオン
広島の家電量販店といえば、真っ先に名前が挙がるのがエディオンだ。今を溯ること約70年前、現エディオン代表取締役会長兼社長の久保允誉の亡父である久保道正氏が広島で第一産業を設立。今でいう地域密着や顧客サービスに努め、広島を中心として多店舗展開を進めた。
1980年に政令指定都市に指定された広島市は全国に20ある政令指定都市の人口順で10位。約120万人の人口を抱え、杜の都・仙台よりも10万人以上人口は多い。2009年に政令指定都市となった隣県の岡山市よりも人口で約50万人弱多い。
広島市は広島市民球場があった紙屋町地区とそこから東に徒歩で10分弱の八丁堀地区が、広島市の中心繁華街となっている。家電量販店でいえば、紙屋町地区にはエディオンの広島本店があり、八丁堀地区にはヤマダ電機のLABI広島が店を構えている。
JR広島駅を起点とすると、紙屋町よりも手前にある八丁堀地区までは、駅から市電で約9分。徒歩では約20分と、けっして近い距離ではない。
JR広島駅の周辺にも商業施設はある。駅直結の広島ステーションビル(ASSE)、エールエールA館(服屋広島駅前店)などだ。ただし、これらの商業施設の主要テナントは飲食やファッションが中心となっている。
地方都市ではターミナル直結がアドバンテージとはならない面も
再度、整理してみよう。広島市の中心部には紙屋町、八丁堀、広島駅周辺の3つの商業地域があり、繁華街である紙屋町と八丁堀はJR広島駅から市電や車などを利用して行く。JR広島駅の周辺には商業施設はあるものの、様々な商品を買い回りできるというエリアではない。
大都市圏のターミナル駅は乗降客が多く、小売業にとってはそれだけ販売チャンスも増える。ただし、それは駅周辺に商業施設などが林立し、交通アクセスの利便性と買い物の利便性が同時に享受できるという条件付きでの話だ。
30年におよぶ駅周辺の再開発でバイイングパワーが変わるか
駅と商業施設が離れた場所にある場合、駅は単に乗降のために通過する地点でしかなくなってしまう。地方都市には、このようなパターンが実は多い。地元のお客は買い回りのために駅から離れた繁華街に行ってしまい、駅近の商業施設にも関わらず集客が思うように進まないという例はレア・ケースではないのだ。
市の周辺部に大型商業施設が続々と出店し、お客の流れが変化
では、広島市はどうか。前述のとおり、市の中心部には3つの商業エリアがある。しかし、ここ7~8年で中心部から離れた郊外部に大型商業施設が続々と出店している。安佐南区にある店舗面積50,000㎡のイオンモール広島祇園店や店舗面積38,700㎡の南区のゆめタウン広島などが中心部から離れた場所に建設され、現在もイズミが西区に店舗面積約39,000㎡のLECTを建設中である。さらにイオンは佐伯区に売り場面積61,000㎡の商業施設を2018年に開業すると発表した。
これらの商業施設は100店以上のテナントを誘致し、消費者が同一施設の中で買い回りができるワンストップ・ショッピング性を集客の柱としている。また、郊外は車社会であることからも大規模駐車場を併設。鉄道等の公共アクセスが良くないデメリットを、2,000台を超える駐車スペースの確保でカバーしているのが特徴である。
このように大規模商業施設が広島市の郊外に増えてきたことに伴い、中心部の集客力は当然のことながら下落してくる。中国新聞社が消費者にアンケートをした広島市広域商圏調査によると、「最も利用する繁華街」の2005年は八丁堀周辺、または紙屋町周辺と回答した消費者がいずれも20%以上だった。それが2015年は八丁堀地区が17.3%、紙屋町地区が14.2%と減少。JR広島駅周辺は6.2%となっている。この結果を見ても分かるとおり、買い物で駅周辺に行く消費者は非常に少ないのが実情といえよう。
しかし、JR広島駅周辺は現在、再開発地域として建設ラッシュが続いている。再開発計画が策定されたのは1980年代。バスターミナルのある南口をA~Cの3つのブロックに分類し、Aブロックは1999年に現在のエールエールA館としてオープン。ビックカメラが出店したのはBブロックで、Cブロックの建設も来年には終了する予定。さらにJR広島駅の新幹線口である若草町地区や二葉の里地区も再開発が進められ、IKEAの出店も決定している。
これらの再開発では単に商業施設やオフィスの建設にとどまらず、タワーマンションも含めた住居用物件の建設も含まれている。これらの再開発計画を見ると、駅周辺の整備が進められることで、JR広島駅はターミナルに直結した商業集積地区として生まれ変わるかもしれないとの予測もできる。
競争相手は、まさに目と鼻の先
さて、このCブロックにはエディオンが出店し、来年のオープンを待つだけとなっている。完成すれば、目と鼻の先にビックカメラとエディオンの2店舗が並び立つことになる。
両社とも商品の展示演出力や提案力では業界内から高い評価を得ている企業のため、どのような競争になるかが注目される。
さらに八丁堀のヤマダ電機LABI広島と紙屋町のエディオン広島本店も絡み、来年はまさに広島市の中心部で激戦が展開されることが必至だ。今後も広島の動向に注視したい。