高校生が自分のための道具だと気が付ける、シャープの電子辞書「Brain」2020年春モデル


シャープが1月10日(金)、カラー電子辞書の新モデルを発表した。高校生向けの280コンテンツ収録の「PW-SS7」、260コンテンツ収録の「PW-SH7」、大学生・ビジネスマン向けの「PW-SB7」の3機種。発売は1月23日(木)を予定し、実売想定価格はPW-SS7が税別42,000円前後。PW-SH7とPW-SB7が税別38,000円前後となる。

拡大傾向に転じた電子辞書市場

2020年度から学習指導要領が改訂され、2020年度~2022年度に掛けて全面実施となる。高校生は2022年度に実施のスケジュールだ。新しい学習指導要領では生徒の「主体的かつ対話的な深い学び」が主眼となり、特に外国語学習では、「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」「書くこと」の5つの領域で目標を設定している。

文科省が旗振り役となった英語学習の高度化を受け、長らく微減傾向で推移してきた電子辞書市場は、2018年度に10年ぶりに増加に転じた。JBMIA出荷統計に基づくシャープの予測では、2019年度の業界出荷台数は120万台程度であり、同社は2020年度も増加が続くと見ている。

この需要を支えるのは高校生の市場だ。新入生を中心とする堅調な需要があり、近年は上位モデルの構成比が増してきている点も市場の特徴となっている。

電子辞書市場は2017年度に底を打ち、回復基調にある。

縦型表示により、片手で持って勉強に役立てる

シャープの電子辞書「Brain」の2020年春モデルは、新しい学習指導要領の方針に則り、メインターゲットとなる高校生や大学生が自分のペースで主体的に学んでいける仕様にブラッシュアップを図った。

ハードウェア仕様は、高校生向けの「PW-SS7」と「PW-SH7」、大学生・ビジネスマン向けの「PW-SB7」の3機種とも共通で、画面は5.5型の854×480ドットTFTカラー液晶を採用する。

学生服のポケットに入る大きさで、重さはリチウムイオン充電池とタッチペンを含めて約265gで、昨今のスマートフォンよりはやや重たい。とはいえ、缶コーヒー並みであり、カバンや制服のポケットに入れて重く感じることはなさそうだ。

高校生モデル「PW-SS7」。軽くて片手でも持ちやすく、画面も見やすい

今モデルでは画面の縦表示の機能を強化。液晶画面を底面と合わせるように後ろにくるりと倒し、タブレットのようにホールドでき、ヒンジには細長く穴が開けられており、そこに親指が当たって片手でも持ちやすい構造となっている。

本体を縦にしてタブレットのように持てる
本体を閉じたところ。この状態での外形寸法は、W152.4×D94.5×H18.4mm(突起部含む)
ラインアップを整理したスライド。2019年度春商戦では、高校生向けと大学生・ビジネスマン向けが新しくなり、中学生向けと生活・教養向け、コンパクトタイプは継続モデルとなる

重要性の高まる「暗記」学習に役立てる

いまどきの電子辞書は、分からない単語の意味を調べるだけの道具ではない。普段の学習に積極的に活用できるよう工夫が凝らされている。

新しい学習指導要領では、覚える英単語数が従来の3,000単語から約5,000単語に大幅に増えており、暗記の重要性が増す。そこで、高校生向けのPW-SS7とPW-SH7では、学生が通学中や休み時間などのすきま時間を有効活用して、覚える学習がしやすい機能を強化している。

試験に頻出する単語を「赤・緑・紺」の3色シートで隠しながら暗記できる「暗記ツール」や、暗記の成果が確かめられる「確認テスト」などの機能を搭載。英単語だけでなく、国語(漢字)や地歴、公民など4教科・25コンテンツに対応する。

また、新たに「自動単語帳」も搭載した。過去に調べた単語を自動的に単語帳に登録していき、その単語帳から出題する復習テストが行える。登録した日時は記録され、今日一日や三カ月分など、出題期間も設定可能なので、勉強の進捗や試験範囲に合わせた効率の良い学習に利用できる。

「自動単語帳」では、過去に調べた単語が自動的に単語帳に登録され、その単語帳をベースにした復習テストが受けられる

アプリやコンテンツも豊富に搭載する。たとえば、2018年版を収録する「NHKラジオ講座 基礎英語」では、一年間の放送内容をテキストと音声がリンクさせて表示でき、リスニング能力を磨くのに役立つ。

自分の発音を点数でチェックできる「ATR CALL for Brain」や、英作文能力を鍛えられる「英作ボード スピーキングプラス」、マララ・ユスフザイやウサイン・ボルトの業績を英文で読める「OXFORD BOOKWORMSベストセラー厳選集」なども搭載している。

大学生向けモデルのPW-SB7では、研究社の「リーダーズ英和辞典」「リーダーズ・プラス」、大修館書店の「ジーニアス英和大辞典」のほか、最新版の「OXFORD現代英英辞典 第10版」を初収録した。

売り場で「使いこなせるか不安」と感じさせない演出を

今回の新モデルで注目したい販促面でのポイントとして、カタログにおけるコミックタッチのイラストの採用がある。漫画家の木与瀬ゆらさんを起用し、現役高校生が自分達向けの商品だと気が付きやすいように工夫しているのだ。

コミックと言っても、線が細くて丁寧な印象を与え、清潔感もあるタッチなので、「学習するための道具にコミックなんて」と目くじらを立てる保護者は少ないのではなかろうか。

むしろ、イラストの載っているのがカタログの表紙と最初の見開きだけなのはもったいない。折角なので操作方法や上手な活用方法まで、コミック形式で読んで理解できるようにしても良かったのではないかと感じた。次年度では是非検討してほしいところだ。

店頭では「電子辞書は難しそうだ」と感じている顧客に対し、「きっと使いこなせる」「電子辞書を使えば学力が上がる」とイメージさせるよう、カタログを上手に配置して活用したい。

カタログにコミックタッチのイラストを採用して、現役高校生が関心を持ちやすくした

販促に関しては、オプションとなる本体ケースも忘れずに提案したい。

今回、純正ケースとして従来のシルバー、ブラック、チェックに加えて、グリーンが追加された。グリーンと言ってもかなり淡いライトグリーンなので、パステルカラーが好きな人も使いやすくなっている。

純正ケースの実売想定価格は税別2,000円前後

なお、シャープは電子辞書発売40周年を記念したキャンペーンを実施する。3月5日(木)から5月31日(日)までの期間中は、Brain専用サイト「ブレーンライブラリー」で語学系コンテンツを最大30%割引で購入できる。

発売40周年を記念して、発表会の会場には歴代モデルも展示していた
電子辞書1号機(国産電子翻訳機)は、1979年の「IQ-3000」だ。ソフトバンクグループの孫正義会長が学生時代に自身の発明品をシャープに持ち込み、佐々木副社長(当時)が買い取って製品化したという。展示機は経年劣化のため、残念ながら電源が入らなくなっているとのこと