ヤマダが池袋の旗艦店をリニューアル!暮らしを豊かにする、すべての提供を目指す
「くらしをシアワセにする、ぜんぶ。」は、ヤマダの目指す方向性
新しいLABI1日本総本店池袋のキャッチフレーズは「くらしをシアワセにする、ぜんぶ。」と、一見してかなり欲張りと言える。
とはいえ、「暮らしを豊かにするものは何か」「我が家にあったら良いなと思うものは何か」と考えた時、頭に浮かぶ様々なものがここに展示されている。
それに加えて「ヤマダ電機が目指す方向性がここにある」と考えると、あながち誇大なキャッチフレーズではないことに気が付くだろう。
ヤマダ電機は3年前から「トータルコーディネート空間」を掲げ、「家電住まいる館」の名称で、家電と家具とリフォームの一体提案を推進してきたが、大塚家具が加わったことで、家具の厚みがぐっと増した。
ヤマダ電機の三嶋社長は、「家具と言っても幅は広いです。当店ではプレミアム層向けにラグジュアリーな家具の提案に注力します。65型のテレビを買いに来たお客様が、テレビだけ買い替えて満足するのかというと、やはりテレビに合った家具調度も欲しくなると思います。そうしたお客様に、ただ単にテレビを買って帰るのではなく、生活シーンがどう変わっていくか気が付いていただきたい」と述べる。
ヤマダ電機が3年間のトータルコーディネート空間提案で培ったノウハウは、家電・家具・リフォームを色で繋ぐ新しいコンセプト「CRAFT」に盛り込まれている。
CRAFTは、Color(色)、Renovation(リノベーション)、Appliance(家電)、Furniture(家具)、Total coordination(全体コーディネート)の頭文字を取ったもの。
インテリアの調和を分かりやすい色彩に沿って示したもので、インテリアとリフォームのパッケージプランを5つの色に合わせて提案している。5色の内訳はForest Brown、Calm Brown、Nordic Nature、Urban White、Dawn Blackだ。
大きく変わったフロア構成
今回のリニューアルでは、売り場の構成も大きく変わっている。2016年にハウステックが地下1階に入った際も、フロアをまたぐ大きな変更が加えられたが、今回はそのときよりもさらに大掛かりな変更になっている。
従来は2階にあったテレビ売り場は4階に上がった。また、3階と4階にあったパソコンとパソコンサプライは5階に集約。3階にあったデジタルカメラのみ、テレビと同じ4階に移った。
一方、地下1階にあった理美容・健康家電や照明器具は2階へ。5階にあった冷蔵庫や洗濯機などの生活家電は3階へと下り、クリーナーも2階へ移った。2階には新たに自転車コーナーも設けられている。
6階は書籍やビデオゲーム台のスペースを減らして、ゲームソフト・おもちゃを広げ、2階にあったCD/DVDソフトも持ってきている。
1階の携帯電話、地下2階の化粧品や日用品の売り場は大きな変更はない。
特に大きな変更となった地下1階から見ていこう。地下1Fはハウステック・家具・リフォーム売り場。それぞれを個別に仕切るのではなく、すべてを融合する形で提案しようという試みだ。
面白いところでは、360°パノラマ映像で商品が確認できる、大塚家具のバーチャルショールームも取り入れ、日本総本店池袋にない商品も見たり、購入したりできる。
3階は冷蔵庫・洗濯機・エアコン・季節商品・調理家電・調理小物を取り扱う。
テレビ売り場は家電住まいる館の直接進化系
4階はテレビ・レコーダー・デジタルカメラ・ムービー・ソファの売り場。ここも大きく変わったフロアの1つだ。
家電住まいる館を見たことがある人ならば、その売り場作りと似ていると感じるだろう。テレビとソファが向かい合って配置され、大画面テレビの良さだけでなく、高級ソファの座り心地の良さも体感できる。
LABI1日本総本店池袋では、さらに一歩進め、リビングだけでなく個室などもイメージして、アームチェアやサイドボード、照明、本棚、空気清浄機やスピーカーなども組み合わせた提案も行われていた。
季節感こそあまり盛り込まれていなかったが、こまめにメンテナンスすることで夏は涼しそうな部屋をイメージさせるといったことも比較的容易にできそうだ。
なお、テレビ売り場を始めとする多くの売り場で、電子棚札を導入している。販売価格のこまめな調整が可能になったことで、戦略的な価格提示はもちろん、値札の貼り替えに掛かっていたコストも大きく削減される。
PC売り場や玩具売場などもリニューアル
5階のPC売り場には、ゲーミングパソコンや周辺機器を扱う、eスポーツコーナーが新たに設置された。このコーナーは照明が控えめで、ゲーミングチェアを設置してゲームを試せるようになっている。
プリンターのインクカートリッジやプリンター用紙は、従来の壁際からレジ前になり、探しやすくなっている。
このほか、大塚家具が入ったことで狭くなった売り場の一つが、PC売り場の法人コーナーだ。それでも、大判プリンターの体験デモやミニプロジェクター、業務用プリンター、会計ソフトなどが展示され、ホテル・ゲストハウスの内装デザインの提案や、カフェ・レストランのリニューアルの提案など、随所で大塚家具との連携を打ち出していた。
6階の玩具売り場でも新たな取り組みが見られた。床までプリントを敷いており、視線の低い子供客にもワクワク感を与える効果がありそうだ。子供の遊戯施設である、yu kids Islandも健在で、ガチャガチャやクレーンゲームも増えている。
小売業に完成形はない
2月7日にリニューアルオープンしたのは、実は池袋のほかに、LABI品川大井町、LABI1なんば、LABI LIFE SELECT千里の4店舗だ。トータルコーディネート空間はは、全国の家電住まいる館と併せ、これで112店舗となる。LABI品川大井町などは早くから家電住まいる館を展開していたが、大塚家具の商品が入ることで、ラグジュアリーな家具が見せられるようになり、快適住空間のより積極的な提案に歩みを進めた形だ。
全体的に商品の安さで客を呼ぶ店舗から、上質さを売り物にする店舗へ脱却しようという意識が感じられる。安さが魅力の商品で、ネットを相手に戦うのは確かに分が悪い。これからの家電量販店は安さが第一では勝てない。お値打ち価格のイメージを崩すわけではなく、さりとてネットと競合せず、業界トップの企業だからこそ作れる店舗を作るにはどうすれば良いのか。ヤマダ電機がたどり着いたのが、「暮らしを豊かにする物をすべて提供する」という形なのだろう。
しかし、これさえ通過点だ。三嶋社長は「小売業に完成形はありません。今の時点でのベストな売り場が作れたと自負していますが、これが置いてあったらもっと良いよね、ここはこうなっていた方がもっと良いよねという気付きは必ず出てきます。日々改善を積み重ね、進化させていきたいと考えています」と語った。
そうして進化させていく先はどんな売り場になっているのか。ヤマダ電機が見せた、新しい売り場は、明らかに従来の競合であった他の家電量販店やカメラ系量販店とは姿が異なる。これは新しい業態であり、家電量販業として今までと同じようには語っていけなくなるのではないか。その答えは、同社のこの方向性が成功するかどうかで決まると言えそうだ。
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