家電量販店の6月売上は好調に推移し、5月からさらに続伸 夏を控え、エアコンの販売も前年同月実績を大きく上回る


新型コロナウイルスは多くの業態に影響を与えている。もちろん家電量販店も営業時間の短縮や閉店などの感染拡大防止対策と来店客数の減少により、影響は受けている。しかし、5月売上が前年同月プラスとなり、このほど発表された6月売上においても5月以上の前年同月プラスとなった。

ケーズの6月売上は前年同月比140%と大きく伸張

月次の売上情報を開示している家電量販企業は4社。ケーズホールディングス(以下、ケーズ)、エディオン、コジマ、ビックカメラである。5月売上はケーズ、エディオン、コジマが前年同月比較でプラスとなる一方で、都市部のターミナル立地に店舗を構えるビックカメラは前年同月7掛けと低迷した。

6月売上はどうだったのだろうか。全店ベースでケーズは前年同月比140.5%と大きく伸長。5月売上が同121.9%だったので、前年同月比較では5月を上回る伸びとなっている。

コジマの6月売上も前年同月比137.0%で、ケーズと同様に5月売上の119.5%から続伸。エディオンの6月売上も111.9%で、ケーズやコジマほどの伸びではないが、5月の同107.9%よりも伸長した。

ビックカメラの6月売上は前年同月比93.3%で、前同月実績には届かなった。だが、減少幅は縮小しており、回復基調にあるとみてもよいだろう。

傾きの違いはあるが、4月以降は各社とも実績が伸びていることが分かる

コジマのテレビ販売は2カ月連続で前年同月比160%超

商品・カテゴリーは各社によって分類が異なっているが、共通して販売が好調な商品として挙げられるのが、テレビだ。

ケーズは消費税増税直後の2019年10月こそテレビの販売は前年割れとなったが、11月以降は伸長が続いており、5月と6月は2カ月連続で前年同月150%を超えている。これはコジマでも全く同様の傾向で、コジマの5月、6月はケーズを上回る前年同月比160%超。ビックカメラはテレビを含む音響映像商品では同83.5%だが、同社ではテレビのみの6月売上は前年同月比で約110%という。

また、6月売上ではパソコンも好調さを維持しており、ケーズは前年同月比134.1%、コジマでも同138.7%と5月よりは伸長率がダウンしたが、両社とも130%を超える高い伸びを示した。

リモート業務やオンライン需要で、パソコンやパソコン周辺機器の販売は引き続き、好調に推移

6月の冷蔵庫と洗濯機は前年同月の1.5倍

大型商品の主力である冷蔵庫と洗濯機も5月より高い伸びとなっている。ケーズの6月売上で冷蔵庫は前年同月比154.2%、洗濯機は同146.3%。コジマは冷蔵庫が同155.3%、洗濯機が151.9%。両社とも昨年の6月より売上は1.5倍となった。ビックカメラでも冷蔵庫と洗濯機の6月売上は、いずれも前年同月実績の115%ほどであったとのことだ。

エアコンも復調し、ケーズの6月売上は前年同月比149.7%で、コジマも同152.0%。昨年の7月は台風や大雨と日照時間が短かったため、エアコンの販売は大きなダメージを受けた。しかし、今年は全国的に高温となりそうで、夏商戦を牽引するエアコン販売にさらなる期待が持てそうだ。

POS集計の速報値による第1四半期は好調に推移

公表している月次売上は、いわゆるPOSデータでの集計で速報値のため、決算の数値とは異なる。あくまで参考というレベルだが、ケーズの全店ベースでの2020年度第1四半期の売上高は前年同期比121.6%。非常に高い数値だが、決して前年同期の実績が低かったわけではない。2019年度の第1四半期も前年同期比で107.0%と伸びていたのだ。それを踏まえると、この121.6%という数字がいかに好調だったかが分かる。

同様にエディオンの第1四半期の全店売上は前年同期比103.7%。伸長率はケーズよりも低いが、2019年度の第1四半期はケーズを上回る同110.5%と2桁増で、さらに底上げしたといえよう。

コジマとビックカメラはいずれも決算期が8月で、3月~8月が下期にあたる。速報値で3月~6月のコジマの下期は111.4%と2桁伸長しているが、ビックカメラの下期は75.8%。同じグループながら都市型立地と郊外型立地の明暗がハッキリ分かれた形といえよう。

都市部の店舗では徐々にお客が戻りつつあるが、休日は繁華街を避ける傾向が依然としてある

5月の大型家電専門店の商品販売額は8.6%増でプラスに転じる

経済産業省の商業動態統計によると、家電大型専門店(売り場面積500㎡以上の店舗を10店以上有する家電量販企業)の全国での商品販売額は3月が前年同月比90.5%で、4月は91.0%。しかし、5月は108.6%と増加に転じ、家電需要は復調していると見てもよいだろう。

ただし、これは全国での結果であり、県単位では大きな差がみられる。大都市圏である東京、神奈川、京都、大阪はいずれも3月以降の全国の前年同月比を下回っている。この中でも特に神奈川と京都の落ち込みは大きい。6月の家電販売額が全国の108.6%に対して、神奈川は94.6%、京都は93.5%という状況だ。

5月の全国での販売額は8.6%増だったが、神奈川と京都はマイナスで推移

これとは逆に、上記のグラフでも分かるとおり栃木は3カ月連続で販売実績が前年同月比プラス。これは47都道府県で同県だけだ。栃木ほどではないが、茨城と福島、秋田の前年同月比も全国レベルを上回っている。

このように都道府県単位で見ると、いわゆる都市型店舗を多く擁する大都市圏と郊外型が多いエリアとの差が浮き彫りになる。自店の好不調を自社内だけで捉えず、都道府県や全国と比較し、この夏に対して取り組んでいこう。