ケーズHD 代表取締役社長兼CEO兼COO 遠藤裕之氏インタビュー
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――2017年度をどのように見ていますか?
遠藤 ひとことで言うと、厳しい年になると思いますが、16年度と特に大きな変化はないだろうと考えています。家電商品の販売が大幅に拡大することもないと思いますし、消費マインドが劇的に改善していく要素も特に見当たりません。
現状で考えられることとしては、家電需要にとってエポックメイキングになるような商品が出てくるとは思えず、堅調な買い替え需要に支えられる年になるのではないかと見ています。
――厳しい年というのは、前年度以上に厳しいということではなく、消費環境が厳しいということ。
遠藤 そうです。もちろん、ヒットする商品はあるでしょう。でも、それはその商品単独の話であって、家電需要全体を押し上げたり、非常に多くの消費者が家電に興味を持って来店したり、というところまではいかないと思います。
――となると、2017年度の家電量販店は、どのような年といえそうですか?
遠藤 ガマンの年かもしれません。決してネガティブな要素が多いわけではありませんし、株式市場も上がっています。しかし、消費マインドとしては明るい将来よりも得体の知れない先行き不安感の方が勝っている気がします。
――まずは不安感を解消することが必要となります。
遠藤 その一つに2020年の東京オリンピックがあります。日本でオリンピックが開催されることで、やはり高揚感というものがありますし、その高揚感が消費者の背中を押す効果はあるのではないかとみています。
有機ELよりも4K
――CES2017では有機ELテレビが話題となりましたが、需要喚起になりそうですか?
遠藤 確かに話題とはなっていますが、本当にお客様の関心を引くかどうかは分かりません。今後の動向を見ないと、何ともいえません。
それよりも販売サイドとしては、4K放送の方が重要です。これから4K放送はどうなって、8Kはどうなるのかということです。
――確かに4K対応テレビとうたいながらも地上波の放送はまだ始まっていません。
遠藤 方式や本放送までのスケジュールがハッキリしないため、販売する側でも戸惑いを覚えるときがあります。
売り場でお勧めするのは4K対応テレビ。でも、今は地上波では見られませんという矛盾をはらんでいます。
もちろん、4K対応テレビにすれば画質が良い、音が良いというスペック面でのメリットはあります。しかし、4K放送がいつから見られるのかも含めて、分からないことがあるというのが問題です。
――4K対応テレビ自体の構成比は上がっています。
遠藤 4K対応テレビの単価自体は下がっていますが、これからさらに構成比は上がっていくと思います。だからこそ、今後のスケジュールがある程度ハッキリすることが重要なのです。
――白物家電が家電需要をけん引してきましたが、販売にやや陰りが感じられます。
遠藤 白物は単純な買い替え需要のなかで、単価アップの状態が続きました。台数自体は多少の増減はありますが、あくまで買い替えがメインなので、これまでよりも必要とされる台数が大きく増えているのではありません。
普及率が非常に高い商品が多いので、さらに大化けすることはないと思います。
――その単価アップは、どこまで続きそうですか?
遠藤 販売単価が上がり続けることはないだろうとみています。仮に単価が上がっていくとしても、原価も連動して上がっていけば、収益は横ばいで、業績にはプラスとなりません。
買い替え商品は、必要なので買い替えるわけです。必需品ですから。でも、上限はあると思います。
安くても買わない
――必要なものだから買うという消費行動に変化は感じられますか?
遠藤 価値を見出しているものは買う。でも、不要と考えるものは安くても買わないという意識になっているように思います。
――その意識を変えるためには何が必要でしょうか。
遠藤 メーカーが新しい商品を開発することに尽きると思います。お客様が欲しいと思う商品ですね。
国内メーカーは往々にして、ここを改善した、この機能を加えたという形が多いのですが、全くの新規商材で、しかもオリジナルな商品を開発してほしいと思います。実際に海外メーカーはオリジナリティに富んだ商品開発を行っています。ぜひとも国内メーカーにもチャレンジしてほしいですね。
データ活用はこれから
――さまざまな業種業態で、ビッグデータの活用が進められています。
遠藤 実際にビッグデータを活用した成功例は、あまり聞きません。お客様が要望したり、データ活用のツールが出てきたりすれば、もちろん必要でしょう。ただ、今現在はその状況にはなっていないように感じます。データベース・マーケティングを否定するつもりはありませんが、まだ研究段階ではないかと考えているのです。
――東京一極集中など、都市部と地方との格差が話題になることが多いです。
遠藤 地方の人口流出が多いからといって、そこにお客様がいる限りは、店が存在しなくてはいけないと思います。商圏内にケーズデンキが複数あれば絞ってもよいと思いますが、そうでない場合は存在の意義があります。
現実問題としては収益性を考えますが、今は地方の人口が減るから撤退という切羽詰まった状況ではありません。
――ケーズデンキにとって非家電の扱いはどう考えていますか?
遠藤 お客様の要望に合わせて、食品から家電まで何でも扱うという考えはありません。あくまで家電をメインと考えています。