ヨドバシカメラ 代表取締役社長 藤沢昭和氏インタビュー


ターミナル立地に大型店を構え、豊富な品揃えときめ細かいサービスでファンを増やしているヨドバシカメラ。”ヨドバシ”の何がお客をひきつけるのか。藤沢昭和社長に、”店作り” “お客様視点”などについて話を聞いた。(文中・敬称略)

お客様の声を聞く

――2017年度をどのように予測されていますか。
藤沢 決して悲観的ではないと思っています。昨年度はインバウンド需要に一服感がありましたが、今年に入って回復傾向にあります。倍々成長は期待できませんが、安定した年になるでしょう。
あとは、アメリカの政策がどう国内の商流に影響するかです。円安は進むとみています。円安になるとメーカーが大変なのは分かりますが、極端な安売り競争はしないよう、自分たちの責任で市場をコントロールする機能を持って欲しいですね。すぐに安売りしては、商品寿命を短くしてしまいます。

――家電量販業界では同質競争を避けるため、体感型の提案を重視する動きが活発です。御社は早くから着手されています。
藤沢 安さを重視するお客様と、価格よりも接客応対のよさや使い勝手を重視するお客様と、いろいろな方がいらっしゃいます。商品によっても違うでしょう。
お客様が買った商品を使いこなせるようにお伝えする接客応対をすれば、価格に走らなくても買っていただける場合が少なくない。”安いよ、安いよ”と売って、お客様が使いこなせなかったら次につながりません。

――生活シーンやリアルな使い方の提案が大切ですか?
藤沢 はい。それと忘れてはいけないのがアフターサービスです。お客様あってのヨドバシカメラ。お客様の視点に合わせて、お客様に喜んでいただくことしかしない。それにはやはり、接客応対をお客様に合わせて行うことが重要。難しいことはないんですよ。なんといっても、お客様がいないと我々の給料は出ないわけですから。

――駅前立地の店舗は広域集客が見込める一方、購買につなげるのが難しい側面もあります。
藤沢 豊富な品揃えを魅力に感じて買いにいらっしゃるお客様が少なくありません。一方で、店舗では下見をするのみで、ネットで買うというお客様も多い。来店したお客様が買わなくても、次に買っていただくためには、接客応対が重要です。

世界中からお客が押し寄せるヨドバシカメラマルチメディアAkiba
世界中からお客が押し寄せるヨドバシカメラマルチメディアAkiba

川崎の物流倉庫は2月末から

――他社のネット通販との競合も激化しています。対策は?
藤沢 お客様の要望に応じた品揃えをするだけです。それとスピードと、いかに正確にお届けするか。当日配送サービスは、現在社員が約8割で運営しています。
物流を制するものは小売りを制するといいますが、拡大にあたってはロジスティックをしっかりと確保し、システムを構築していかないと。今日誰に、何を、何個売ったのか、そして利益がどれだけ上がったのかを把握することです。

――川崎の物流センターを施工されました
藤沢 アマゾンと競争するつもりはないですが、お客様の要望で取り入れざるを得ないので相当のアイテム数はあります。我々はリアル店舗とネット通販両方手がけているので、川崎の物流センターはかなり大きいものになりました。2月の後半から少しずつ引っ越していく予定です。

――物流センターは店舗のバックヤードとしての機能もありますね。
藤沢 経営では、少量、多品種、高回転率が基本です。余剰在庫を持たずにいかに回転を上げるかが重要です。予測をしてね。
例えば、仙台の店に閉店間際に来たお客様が品切れで買えなかったとしても、翌日の開店までには商品をお渡しできるように在庫を補充できる仕組みを作っています。
ただ単に商品を運ぶだけでなく、店頭に並べてお客様に渡すまでの仕組みづくりがなかなか難しい。

ワクワク感ある売り場づくり

――改めてお店のファンをつくるための要件とは?
藤沢 なんとなくこの店に来るとワクワクするとお客様に思っていただくことが重要だと思います。
お客様から見て楽しい売り場、楽しいお店、それを目指すことではないでしょうか。そこは、お客様に育てていただくところが大きいですね。安いに越したことはないけれど、この店で買ってもいいなとお客様に思っていただける雰囲気に持っていくことです。
僕はいつも思うのですが、お客様に接客し、商品を販売し、ありがとうございましたとお渡しする。その後、お客様から「ありがとう、また来るよ」と言っていただけるような接客をすることが大切だと思っています。その繰り返しがファンをつくるのではないでしょうか。なかなか難しいですが。

ワクワク感あるエンド提案も、同社の魅力の1つ
ワクワク感あるエンド提案も、同社の魅力の1つ

――御社の若いスタッフの接客力に驚かされます。
藤沢 店舗改装などに行くと、若いスタッフにちょっと無理やりにでもいろいろやってもらうようにしています。
「曲がっているからあと1cm什器を前に出して」「あと2cm動かしてまっすぐにして」というようなことをよくやります。すると、スタッフが営業中にも“棚板が曲がっていないだろうか”と気にするようになります。
販売スタッフは、売るだけではなく、入荷した商品を手早く陳列し、整理整頓するなど、決められた時間の中でやるべきことがいろいろあります。オールマイティーな視点を持つことで、他の売り場が忙しい場合は、進んで接客やレジをするなど自ら考えて動くようになります。そうでないと残業が多くなってしまう。そうなると社員が定着しませんし、何より接客が雑になります。

――改めて、若いスタッフに対して感じることとは?
藤沢 売り場を回ると、接客応対をよくやっていると思う社員が結構見受けられます。努力して頑張っているなと、腹の中では思っていますよ。直接は言わないですけどね。