CP+2017で見た デジカメ復活のヒント


縮小基調にあるデジカメ市場。このまま需要は減少するのだろうか…。答えは、NO!先日開催された総合的カメラ映像ショー「CP+ 2017」では、画期的な製品の展示とともに、メーカーの訴求の変化も感じられた。メーカーサイドの変化に呼応して、改めて「店頭発信」での訴求方法を見直したい。

市場の現状とCP+での新たな取り組み

市場は底を打った

「CP+(シーピープラス) 2017」は、毎年65,000人以上が来場する、国内最大のカメラと写真映像のワールドプレミアムショー。今年も2月23~26日の4日間にわたり開催された。
本展示会を主催するカメラ映像機器工業会(CIPA)代表理事会長の笹 宏行氏は、キーノートスピーチの中で、市場の現状と、CP+での今年からの取り組みについて解説した。

1999年ごろから一般への普及が拡大してきたデジカメだが、2008年をピークに、市場は縮小基調にある。笹氏は2016年暦年のワールドワイドでのデジカメ市場について、出荷ベースで、レンズ一体型、レンズ交換式共に前年割れと発表。レンズ一体型は前年比56%で1,260万台、レンズ交換式は前年比89%で1,160万台だ。

2016年、レンズ一体型は台数ベースでかつてない落ち込みとなった
レンズ交換式カメラもレンズ一体型と同様に縮小し、前年比89%

世界規模での市場と同様に日本の市場も落ち込んだが、この大幅な出荷減少の要因のひとつは、2016年4月の熊本地震。熊本にはデジカメに搭載されるイメージセンサーの主要生産拠点がある。地震によって生産が滞り、供給が不可能となったのだ。昨秋からは供給が回復したのだが、年間での出荷数量に大きなマイナスとなった。

笹氏はデジカメ市場の現状について、
「2016年、デジカメ市場は熊本地震の影響で、春から夏にかけてこれまで経験したことのない苦しい時期を経験しました。市場は底を見ましたが、レンズ一体型、レンズ交換式ともに、あとは上を見るだけです」と話した。

イメージセンサーの供給ができるようになった秋ごろから、徐々に出荷数量は回復

裾野を広げるトリガーは女性

デジカメ市場の再活性化に向けては、新規需要の取り込み、裾野の拡大が必要不可欠だ。そこで笹氏は、女性に期待をしているという。日本では2005年ごろから「カメラ女子」という言葉がメディア等に取り上げられることが多くなったが、その注目度は下火になってきている。しかし現実は、「ブームで終わっていないのです」(笹氏)。

一眼カメラを購入する女性は年々増加している

CIPAの調査によると、2016年の一眼購入者の22%は女性で、その割合は毎年右肩上がり。「カメラ女子」として取り上げられることが減った一方で、一眼を手にする女性の割合は増えているのだ。

女性はフェイスブックやインスタグラムなどのSNSで写真を使ったコミュニケーションを活発にしている。また、写真を自己表現のツールとしている人も多くいる。

そこでCP+では、女性来場者の獲得に向けて、昨年までの来場者アンケートを分析して、CP+での男女の楽しみ方の違いを洗い出した。男性は新製品などの「モノ」に強い興味を示したが、女性は新製品にはあまり関心を示さず、セミナーなどのイベントに興味を引かれていることが分かった。さらに、アクセサリーアウトレットや中古カメラフェアにも女性が多く訪れ、中古カメラフェアでの購入者比率が最も高いのは30代以下の女性だったという。

このような分析結果をもとに、会場では今回、「女性が写真を元気にする」をキーワードに、女性とのつながりを強化する新たな取り組みを行った。その一つが、「鈴木心写真館@CP+2017」。

JR東日本などの多くの広告写真を手掛ける人気写真家、鈴木 心(すずき しん)氏に写真を撮ってもらえるイベントや、子供も写真を楽しめる企画を用意

笹氏はこのイベントの狙いとして、
「CP+は、撮る人に向けた機器ショーと認知されていますが、『撮ってもらう』楽しみを知ってもらい、多くの方に良い写真を増やしたいと思っていただきたい。このことが、良い写真が撮れる『カメラ』への興味につながると期待しています」と力を込めた。

今年はこの他に、J-WAVEの人気番組「ALL GOOD FRIDAY」やマガジンハウスの人気ムック「#まみれ」シリーズとのコラボ企画など、女性やファミリーに向けたイベントも開催された。また、混雑する展示スペースでベビーカーが通りやすいようにするなどの場内環境の整備も進めた。

笹氏は「今後の業界の発展のために覚悟を決めて女性ファンの育成に力を注ぎたい」と、来年以降もこのような女性に向けた取り組みを継続していく考えを示した。

 

カメラは撮るもの。モノからコトの提案へ

 

今回のCP+のメーカーブースでは、撮影スペースに工夫をしている点が印象に残った。

キヤノンのブースでは、撮影シーンごとにコーナーを分け、それぞれのシーンに応じた試写ができるようになっていた。

「昨年までは、説明員と対面するテーブルを設け、そこに最新機種をずらっと並べて、来場者の方々に実機を試していただいていました。しかし、今年からは従来の最新機種のテーブルの他に、撮影する方々に寄り添った展示をしています。撮影シーンに応じた被写体を用意して、その周りに実機を並べ、お好みのシーンを実際に撮影できるようにしました」(キヤノン担当者)。

キヤノンの、シーンに合わせた撮影ゾーン。(左)「風景・花/ポートレート・スナップ」ゾーン、(右)「乗物・動物・スポーツ」ゾーン

セミナー会場も、従来の大きなステージの他に二つのミニステージを用意。被写体別の講座を聞くことができるようにした。

ソニーとオリンパスのブースでも、実機を「触る」ことより写真を「撮る」ことを訴求。

(左)ソニーはブース内に大きなバスケットボールコートを用意。選手のプレーやチアリーダーのダンスを、高速連写と高速AF、4K動画などで様々な機種を使用してじっくりと撮影できた。(中、右)オリンパスのブースでは、注目機種のOM-D E-M1 MarkⅡの機能ごとに独立したゾーン(ポートレート撮影、暗所撮影などのほか、ストリートバスケの激しい動きを連写できるゾーンも用意)を設置。多彩な機能が搭載されている同機種ならではの取り組みだ

写真愛好家の来場が多いCP+だが、今回は、実機(モノ)を触るというよりも、撮影・体感する(コト)という訴求が目立っていた。店頭でも、スペックや機能を“説明する”、「モノ寄りの提案」ではなく、実際の撮影シーンで使える撮影方法などの「コト寄りの提案」を取り入れてみてはいかがだろうか。置物や人形など、被写体が一つあるだけでも、来店客はそのカメラで実際に撮影するシーンを想定した体感ができる。

 

上級者向け?…異議あり!

 

記者から見た今年のCP+のキーワードは、【ミラーレスカメラでの4K動画&高速連写】だ。直近で発売されたこのタイプの代表選手は、パナソニックのLUMIX GH5とオリンパスのOM-D E-M1 MarkⅡ。既存の製品では、ソニーのα7S IIなどだ。このクラスになると各機種とも手ぶれ補正機能が充実し、高速AFが被写体を捉え続ける。さらに防塵・防滴設計で、ミラーレスならではの小型・軽量のため女性でも楽に持ち運べる。また、電子ビューファインダ―は高速連写時でも表示タイムラグを全く感じさせない。

パナソニック LUMIX GH5。同社のデジカメで好評な高速連写機能4Kフォトが進化した「6Kフォト」を搭載。4Kよりも高精細な画質で、一瞬のチャンスを逃さず記録することができる
オリンパス OM-D E-M1 MarkⅡ。良いカメラが出ると、レンズもそのカメラに合わせた最高のものが欲しくなるもの。「この機種が発売されたことにより、プロレンズの需要が動きました」(メーカー担当者)という。AF/AE追従で最高18コマ/秒を実現したOM-D最上位モデルだ
2015年に発売された35mmフルサイズセンサー搭載のソニーα7S IIは、現在、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟で宇宙空間を撮影している

●ハイスペック機をエントリー層に訴求

これらのハイスペックなミラーレスカメラは、ハイアマチュアからプロ向けという位置づけになる。しかし店頭では、このタイプのモデルを、あえてエントリー層にも提案することをオススメしたい。特にファミリー層やペットオーナー。訴求ポイントは、「操作性の良さ」、「失敗なし」、そして「汎用性の高さ」だ。

エントリー層が最も気にするのは、使いこなせるかどうかの操作性だ。前述の製品は、上位機種だけに操作が難しいと思われがちだが、オート撮影や連写、動画撮影をするぶんには、初心者でも問題はない。写真テクニックが初心者から未だ抜けることのできない筆者ですら、説明員に一回教えてもらい、二回目からは自分で難なく操作ができた。また、高速連写と高速AFが決定的瞬間を逃さず、失敗のリスクも大幅に軽減する。

さらに、デジカメ1台でデジタルビデオカメラの役割も果たす汎用性の高さもある。動画の撮影中に静止画を撮ることもできるのだ。デジカメで動画を撮影するメリットは、デジカメのセンサーサイズならではのとろけるような背景ボケと、レンズを交換することで幅広い表現を実現できる点。オートフォーカス機能が優れているカメラやレンズを使えば、ピントのズレも防げる。さらに4K動画を4Kテレビで出力すれば、まるでプロになったかのような気分を味わえる。初心者でも本格的な動画撮影が可能なのだ。

このように、ハイスペックであっても、エントリー層が使いこなせる便利な機能が満載だ。

テレビを例に挙げると、テレビのハイスペックモデルは、デジカメと同様に多機能で高機能だ。しかし、購入者はこれらの機能をフルに使いこなせるから購入するわけではない。

ハイスペックだから、画質がキレイだろうということで購入するのだ。

パナソニック LUMIX GH5で撮影した4K動画。背景のなめらかなボケ感が、ピントのしっかりと合ったグラスの輝きを一層引き立てる

デジカメもしかり。全てオートで撮影しても、ハイスペックモデルならば非常にキレイな画像が撮影できる。自分好みの撮影シーンに応じたモードにも対応している。初めて持つデジカメで最高の画質を体感したら、もうスマホでは満足できない。しかも、自分の撮影レベルが上がっても、その機種で対応できる。このように、エントリー層にこそ、ハイスペックモデルがふさわしいのだ。

デジカメで撮る、スマホでシェアする、プリンターで印刷する、4Kテレビで観る。さらにデジカメのレンズや周辺機器など、関連商材がほとんど揃う家電量販店だからこそ、デジカメの裾野を広げるような展示や展開に力を入れたい。