オンキヨーがGoogleアシスタントとAlexa対応のスマートスピーカー2モデルを発売 オンキヨーならではの技術を盛り込む


家電商品のIoT化が進行する中、急激に立ち上がってきたスマートスピーカー市場。アメリカの調査会社であるGartnerは2016年10月に、ワールドワイドでのスマートスピーカー市場は2015年の3.6億ドルから2020年には21億ドルに達すると予測した。この10月から日本でもAmazon、Google、LINEが相次いでスマートスピーカーを発売し、消費者の注目を集めている。そんな状況下、オンキヨーがスマートスピーカーを発売した。

店頭販売のG3はGoogleアシスタント対応で2色のカラバリ

1946年の創業以来、パソコンのソーテックや自動車部品加工のテクノエイト、オーディオ機器のティアック、パイオニアなどとM&Aを行い、グローバルで事業を展開するオンキヨー。国内の販売会社であるオンキヨー&パイオニアマーケティングジャパンでは、このほど報道関係者向けにスマートスピーカーの体験会を実施した。

オンキヨーが発売するスマートスピーカーはGoogleアシスタント対応のG3と、Amazon Alexa対応のP3の2モデル。G3は店頭販売モデルで、P3は現状、Amazon echoなどのAmazon製品と同様にAmazonのサイト内での招待制となっているが、今後は店頭での販売も考えられる。

2大音声認識AIに対応したG3とP3は、その外観からして大きな違いがある。Amazon echoのような円筒形状のP3に対して、G3はまさに直方体の小型スピーカーという形状だ。カラーもP3はブラックのみだが、G3はブラックとホワイトの2色となっている。

Googleアシスタント対応のG3(VC-GX30)は、まさにスピーカーの形状
Amazon Alexa対応のP3(VC-PX30)はAmazon Echoよりも扁平した円筒形

Amazon AlexaやGoogleアシスタントなどのAIアシスタントは周知のとおり、指示コマンドが入力ではなく、音声によるもので、ハンズフリーで様々な機能が活用できる。両アシスタントともAmazon Alexaのスキル、GoogleアシスタントのActionを使って特定の機能を追加することで、できることが拡張されるのは言うまでもない。

Play-Fiで70機種以上のオンキヨー・パイオニア商品と連動

Amazon Alexa対応のP3はAmazon Prime Musicや世界中のラジオ放送が聴けるTunein、radikoなどに対応。また、アメリカのdts社のPlay-Fiという技術をビルトインしていることで、複数のスピーカーをグループ化して同じ音楽を飛ばす機能も搭載している。例えば、リビングとキッチンに置いたスピーカーで同じ曲を流すといったものだ。すでにPlay-Fiがビルトインされているオンキヨー・パイオニアの70機種以上のネットワーク商品と連動させることが可能という。

天面にはボリューム、ミュート、再生/停止ボタンとともに4つのプリセットボタンを配置。好みのステーションからの音楽をワンタッチで再生
Play-Fiアプリでスマホのコンテンツを再生したり、Play-Fi対応機器へ音を飛ばすことが可能

さらに大きな特徴が、アナログの入出力ができることだ。つまり、レコードプレーヤーをつなぐことで、P3でレコードの音源を再生したり、他の部屋にその音楽を飛ばすことができる。

アナログ入力でレコードの音源再生や、アナログ出力でコンポなどから出力することも可能

パワフルでヘビーなアメリカン・サウンドを目指したP3

肝心のスピーカー部は、デュアル2.5インチフルレンジウーファーと、背面部にはパッシブラジエーターを搭載し、豊かな低音を再生。同社によると、パワフルでヘビーなサウンド再生を目指したとのことである。円筒形だが、ステレオになっていて、左右を反転させての再生も可能という。また、周波数全領域をカバーしているわけではないが、ハイレゾ音源自体の再生も可能である。

2.5インチ(約64mm)のフルレンジスピーカーを採用し、パッシブラジエーターも搭載

集まった媒体関係者が多数いる中でのデモであったが、小型スピーカーとは思えないボリューム感のある低音が再生された。特に低い周波数帯のベースやバスドラの音が圧力感のある音となって出てきて、同社がイメージしたパワフルなアメリカン・サウンドとなっている。

高音域についても伸びのある明瞭で、歯切れの良い音だ。ハイハットの刻みもしっかりと前に出てきているのだが、強調され過ぎず、クリアで自然な音となっている。パワフル&ヘビーなサウンドといっても変に重低音を強調したサウンドではなく、非常にナチュラルだが、個々の音がパワフルという印象だった。

また、デモの会場が決して静かではなく、多数の来場者によってガヤガヤとしていたのだが、指定した音楽の再生やボリュームのアップダウンなどをしっかりと聞き取り、対応していた。

スピーカーとしても高品位を目指して新設計を採用したG3

一方のG3だが、こちらもGoogle Play MusicやSpotifyのストリーミングサービスに対応。P3と同様にradikoにも対応し、気軽に音楽が聴ける。また、Chromecast built-inを搭載しており、Chromecast built-in対応のオンキヨー・パイオニア商品70機種以上へ音楽を飛ばすことが可能だ。

G3は2色のカラーバリエーションを用意。音声に反応するインジケーターは前面上部の4つのランプ
P3と同様に天面のパネルでボリュームや再生/停止、ミュートなどの手動操作ができる

コンパクトサイズだが、その形状からも小型スピーカーとしてリスナーが満足できる音を提供するため、設計や開発にも注力をしたという。

小型スピーカーはどうしても筐体部が振動するものだが、コンピューターを使って筐体のバランスを決めることで、共振を抑制している。

ウーファーには新設計のカスタムウーファーを搭載。従来のスピーカーユニットの1.5倍の振幅量と力強い駆動力を持つマグネットが採用され、深みのある中低音を再生する。高音域についてはソフトドーム型ツィーターから再生。このカスタム2ウェイドライバーによって、低域は迫力ある音、高域はクリアな音となり、バランスのとれたダイナミックなサウンドの再生ができるとしている。

また、同社独自のスイッチングアンプシステムにより、高出力の実現と同時に発熱を極限まで抑えた。コンパクトゆえの制限もあるため、オーディオ信号をデジタル処理するDSP機能ついては、その演算部分に独自の技術を盛り込み、小型サイズであっても高品位なサウンドに仕立てた。

特許出願中の技術も盛り込み、オンキヨーの音に対するこだわりが見られる

フローティング構造のマイクで指示の音もしっかりキャッチ

スピーカーとはいえ、音声で指示をするため、マイクで指示の声をしっかりと拾わなくてはならない。音楽を再生しているボリュームが大きくなればなるほど、音は拾いにくくなる。この相反する課題に対しては、マイクが他の筐体と接触しないフローティング構造を採用。マイクが振動の影響を受けにくい構造とした。

スピーカーに向かって指示する音声をしっかりと認識させるため、マイクの振動抑制技術を開発し、こちらも特許出願中

デモでは前述のとおり、会場が静かではなかったが、P3と同じようにマイクが指示の声をしっかりと拾い、指示通りに曲を再生。P3は点面部外周のLEDが指示の声に反応して光るが、G3は前面上部に配置されている白色のLEDがインジケーターとして点滅していた。

G3で再生された音は、高品質の小型スピーカーという印象だった。小型スピーカーにありがちなドンシャリではなく、中音域もしっかりと再生。P3で再生した同じ曲をG3で再生すると、楽器とボーカルの音の分離や臨場感もさることながら、高品質のオーディオシステムで音楽を再生したときの曲としてのまとまり感がP3よりも強く感じた。

デモで流されたブルーノ・マーズの「Grenade」のようにボーカルが前面に出る楽曲では、小節の最後のかすかなブレスも聴き取れるほど、クリアな音質。音の分離も非常に良く、ボーカル、バッキングコーラス、そしてボーカルに比べてオフ気味の楽器群もそれぞれ存在感のある音になっていた。

“音楽を愛する人たち”に向けたP3とG3(ホワイト

スピーカーとしてのキャラ立ちが異なるP3とG3

両モデルを視聴した印象としては、P3のフルレンジとG3の2ウェイとの違いが、スピーカー単体としてのキャラクターに表れているというものであった。P3は作業をしながら音楽を聴くという点で、ポップス系の曲に合い、G3はクラシックなどの音域の幅が広い曲の再生でも微妙な音のニュアンスをしっかりと再生する。いずれも音楽を再生する単体の小型スピーカーとして十分な使用に耐えうるものだ。

今後、各社からスマートスピーカーが発売されていくものと思われるが、音楽の再生にこだわってきたオンキヨーが製品開発に注力した2モデルは、その他の商品と一線を画したモデルといえよう。音声認識にフォーカスされることが多いスマートスピーカーだが、音楽再生を主用途とした場合、購入後も確実な満足を与えられるモデルとなっている。

しかし、一つの課題がある。それは、店頭のどこで扱ったらよいかということ。情報機器なのか、オーディオ機器なのか、はたまた新ジャンルなのかによって展示するコーナーは異なる。いわゆる新規商材ならではの悩みだ。

オンキヨーというブランドを活かすのだったら、やはりオーディオコーナーだろう。Wi-Fi接続での情報機器では、PC周辺売り場に置くことで、お客の発見が期待できる。話題の商品という点では、エントランス近くや主導線に面した特設ステージも考えられるが、商品自体がコンパクトなので存在を目立たせるための装飾や演出が必要だ。

スピーカーコーナーはフロアの奥にあることが多く、スマートスピーカーが目立たないことも

いずれにしても、各種の媒体で大きな話題となっており、日経MJの2017年ヒット商品番付で西の大関に挙げられたスマートスピーカー(日経MJの表記はAiスピーカー)。消費者の関心は極めて高いと思われる。この関心の高さを購入に結びつけるためには、売り場でのデモが必須だ。

ただ置いているだけでは何の変哲もないスピーカーだからこそ、実演が必要となる。年末商戦の中、売り場の賑わいはスマートスピーカーにとって不利に働き、スタッフも接客応対で追われる時期だ。それでも、この話題商品の価値をしっかりとお客に伝えるために、開始時刻を決めた定期的な実演やスタッフへの声掛けを呼びかけるPOPを付けるなどの工夫を凝らし、多くのお客に体験してもらおう。