マッサージ機器売り場、変革の時!


市場とライフスタイルの変化

2014年まで、マッサージ機器の市場は、チェアタイプと、肩や足などの部分的な簡易マッサージ機の二つのカテゴリーに大別されていた。そこに2015年、チェアタイプの新たな形態としてシートタイプのマッサージ機が登場。大ヒットを記録した。シートタイプは設置場所の自由度が高いうえに価格的にも手が届きやすく、首や肩から臀部に至るまで、体の大部分をケアできる。

シートタイプ好調の背景

シートタイプは、チェアタイプだと設置場所と価格面でハードルが高いという人の、「部分マッサージ機よりも広範囲をマッサージしたい」「室内の雰囲気を壊さないようにデザイン性も重視したい」という、マッサージ性能とデザイン性の高さ、価格面での条件をクリアし、潜在需要を顕在需要に変えることができた。

2015年は「シートマッサージ機元年」。フジ医療器は2016年のシートタイプマッサージ機の販売台数について、前年を大幅に上回り10万台を超えると予想している。(画像:フジ医療器新製品発表会資料)

同タイプが人気となった要因の一つに、ユーザーの住環境の変化がある。フジ医療器はマンション世帯の増加とともに、限られた住環境の中で快適に生活するための新しいライフスタイルが生まれていると指摘。必要最低限なモノで暮らす「ミニマリスト」もその一つ。背の低い家具を多く設置することで空間の開放感を演出するスタイルも定着している。

シートタイプユーザーの反応

各社のシートタイプの販売から一年以上が経過。実際に同タイプを使用したユーザーの感想はどうだろうか。筆者がヒアリングしたところ、好評なポイントは、マッサージ性能とコンパクト性。シートが薄くコンパクトであるにも関わらず、思った以上に疲れやコリをほぐしてくれるという。

デザイン性も好評だが、来客の際は座るスペースの都合上、移動してしまっておくという話も聞いた。フジ医療器のユーザー調査でも、「使わないときはしまっておく」「自宅のソファーにデザインが合わない」という意見があったという。

実際に、シートタイプの購入者の約40%が椅子もセットで購入している。シートタイプ単体で購入するよりも購入金額が高くなるにも関わらずだ。シートタイプを、常に出して置いて気軽に使いたい、椅子もセットにしてインテリア性に統一感が欲しいというニーズの表れだろう。

フジ医療器はマッサージチェアの市場について、チェアタイプを成熟市場、シートタイプを成長市場と位置付ける。そしてシートタイプの好調な売れ行きとユーザーからの反応を受け、さらにここに新たな市場として「ロースタイルチェア」という新しいカテゴリーを創出し、前述の新製品を発表したのだ。

ロースタイルチェアは、チェアタイプの椅子という形態ならではの良さとシートタイプのデザイン性を兼ねそなえた新たなカテゴリーだ。(画像:フジ医療器新製品発表会資料)

売り場でも時代に合った訴求を

マッサージ機器メーカーは各社ともに、ライフスタイルの変化に合わせた製品開発を活発に行っている。では、販売の現場では従来通りの訴求方法で良いのだろうか。製品カテゴリの拡充とともに、接客や製品展示も変革が必要だ。家電Biz編集部が提案するアプローチポイントはズバリ、「マッサージ機器のあるおしゃれなお部屋」訴求大作戦。

先述のように、マッサージ機器はチェアタイプと簡易タイプに大別されていた。しかし、製品カテゴリーの拡充とともに、販売の現場でも今後はより細分化して売り場づくりをしたい。

ユーザーニーズの高まりを反映して、多様化するマッサージ機器の製品カテゴリー。販売に結び付けるために展示と接客をいかに工夫したらよいかを考えた。

接客

接客では、ユーザーの身体的なニーズはもちろんのこと、住環境のヒアリングも重要になってくる。体のコリや痛みなどが解消され、健康になるという接客は薬事法の関係で言ってはいけないことがあるが、カラバリや収納など、住環境からのアプローチをすれば、トークの引き出しが増える。

自宅のインテリアにこだわりがあるユーザーには、カラバリや設置場所を提案し、ミニマリストのようにすっきりとした空間にこだわる人には、収納のアドバイスなどが喜ばれるだろう。商品知識とともに、自宅でこのマッサージ機器を使うとしたらどのように設置し、どのように収納するかも提案できるとお客との会話も弾みそうだ。

製品展示

前述のように、製品の機能の訴求とともに、顧客には「自宅にこのマッサージ機器があったら」という想像を膨らませてもらうことが重要だ。製品ラインアップが拡充しても、売り場には展示スペースに限りがある。まさにいまの顧客の住環境と同じ状況だ。柱や壁面を有効活用し高さを生かす展示をしたり、簡易マッサージ機を収納できる箱を作成して非使用時の収納例を提示するなどの工夫をしよう。

限られた店舗スペースでより多くの製品を訴求するためには、柱や壁面を有効活用したい。(コジマ×ビックカメラ ららぽーとTOKYO-BAY店 オープン時)

顧客のマッサージ機器への関心が高い今、需要を取りこぼさないように手間をかけたい。販売員の人数が限られていて接客ができない場合でも、見ているだけで楽しめる売り場を作ってはいかがだろうか。