売り場面積は7,494㎡。駅チカの立地に 3フロア構成で出店
エディオン蔦屋家電は2017年4月14日にJR広島駅前の商業施設であるEKI CITY HIROSHIMAの1~3階にインショップ形式でオープン。売り場面積は7,494㎡、施設共用の駐車場を併設しており駐車可能台数は約500台だ。
広島駅前は長年にわたって大規模な再開発が進められていた。区画を大別するとA~Cの3つ。このうちAブロックは最も早く開発が進み、1999年に福屋百貨店が入る「エールエール」が開業している。Bブロックは2016年9月にオープンしたビックカメラ広島駅前店の区画で、ビックカメラや上層部のホテル、居住エリアも含めて「ビッグフロントひろしま」という名称だ。
そして、Cブロックがエディオン蔦屋家電が入る棟と居住棟を合わせて「EKI CITY HIROSHIMA」と呼ぶ。
「ビッグフロントひろしま」の居住施設は地上52階建てのタワーマンション。「EKI CITY HIROSHIMA」の居住棟も46階建てのタワーマンションで、双方合わせた世帯数は約900世帯にも達する。単に駅前での集客効果ということだけでなく、タワーマンションに入居している需要も望める立地というわけだ。
各フロアにテーマを設定 居心地の良い時間を楽しむ店舗
エディオン蔦屋家電は先述のとおり、3フロア構成。それぞれのフロアにはテーマが掲げられており、1階は『コミュニケーションと美』。主な商品カテゴリーはパソコンやスマホなどの情報機器と美容。2階は『趣味とワークスタイル』で、AV機器やカメラ、消耗品など。3階は『暮らしと子ども』で、いわゆる生活家電と季節家電、そして住宅関連商材である。
いずれのフロアも二子玉川の蔦屋家電がそうであったように、雑誌や書籍がいたるところに配置されており、さらに椅子やソファも数多く置かれ、座って休憩を取ったり、雑誌や書籍をその場で読むこともできる。
同店のコンセプトは「居心地の良い時間を楽しむ 新しい発見に出会える家電店」。二子玉川の蔦屋家電と異なる点は、テナントの幅広さだ。二子玉川の蔦屋家電はカフェや家具などだが、エディオン蔦屋家電は食品スーパーや酒販店、英会話スクール、保険代理店などがテナントとして入っている。
これはJR広島駅の1日の平均乗降客数が約14万人で、商業施設としての日常的な使い勝手の良さを考えたものだろう。ビジネスマンが1日の終わりに英会話スクールに通い、OLや主婦は食品スーパーで買い物をする。そのような普段使いでも来店してもらえるのがエディオン蔦屋家電である。
エントランスの先にイベントスペース 消耗品の「家電コンビニ」を配置
1階のエントランスを入った先がイベントスペースになっている。オープン時はミニチュア写真家の田中達也氏が家電をテーマにしたオブジェを展示していた。
二子玉川の蔦屋家電と同様に、各フロアともエスカレーターのある中央部は休憩スペースやイベントスペースなどで、エスカレーターの両サイドが各カテゴリーによって区画分けされている。
ビューティーコーナーはレディースとメンズに分かれ、コンシェルジュである美容スペシャリストがきめ細かいサービスに対応するという。
2階には消耗品を集めた「家電コンビニ」を配置。電球、電池、回線パーツ、SDカードなどを集合展示した便利な区画ということで、「家電コンビニ」とネーミングにしたという。
文具コーナーでは柱の4面を使って万年筆を展示。それぞれの面にテーマを設け、赤(=広島カープ)、青(=エディオン)、紫(=サンフレッチェ広島)、和柄(=日本)という分け方で、それぞれのテーマに合致するデザインの万年筆を展示している。
パソコン本体のディスプレイもユニークだ。パソコン本体が展示されている壁面にもデザイン的な処理が施され、本来は無機質なパソコンの印象がガラッと変わる。
テレビの展示も他店とは一線を画している。展示しているテレビはすべて同一の映像を流すことができ、お客が映像を比較すること可能だ。また、ネットにも接続をしているので、配信コンテンツの視聴もできる。本体の上部には洋画のポスターを置くなどの遊び心も満載。
カメラコーナーではライカコーナーを併設している。中四国では岡山にライカショップが1店あるが、広島では初という。
3階の健康コーナーではトレーニングとリラクゼーションの融合を図ったという。トレーニング器具は体感が可能。
洗濯機コーナーでは海外メーカーも交えて展示。LG Stylerの実演もあり、実際に給水や排水ができて、洗濯機の体感ができるデモ機も用意した。
エアコンコーナーでは昔のエアコンと最新モデルを置き、それぞれの消費電力が電光掲示板で示される。また、気流を体感できるデモ機も配置した。
冷蔵庫も他の商品と同様に、POPを極力排し、商品の顔が見えるようにしている。このことで、お客が自宅に設置した場合にどんな感じになるのかイメージもしやすいという。
13万冊の書籍や雑誌を集客に活用 展示点数は既存店と同じレベルに
同店の渡辺伸一店長は同店について、「ロゴを蔦屋家電と変えたことによってエディオンだけど、エディオンとは違った別のことができる、既存店を気にせずに新しいことができる」と話す。
また、チラシやDMなどでの集客は一切行わず、集客の武器としては13万冊にのぼる書籍や雑誌を活用するという。
また、売場づくりでの二子玉川との違いを「展示点数の違い」と説明。二子玉川が見せ場としてはよいが、なかなか買い場につながらなかった理由の一つに展示点数があるのでは、と推測する。エディオン蔦屋家電の場合は展示がエディオンの既存店と同等にあるため、選ぶ楽しさをスポイルすることなく、新しい提案を勧めることができると考えている。
エディオンの久保允誉代表取締役会長兼社長は、「当店はチラシとDMを一切打たない。これはエディオンにとって初めてのこと。集客をしないでもお客様が来ていただける店をつくると考えた。その代わり、その店は居心地のよい店を作ろう。目的買いじゃなくて、とにかく行ってみたくなる。そんな店がエディオン蔦屋家電のコンセプト」と説明する。
つい、二子玉川の蔦屋家電と比較しがちだが、お客が選べる展示点数を揃えたのは先述のとおり。さらに、二子玉川は家電に不慣れなスタッフも多く、運営するCCC自体が家電販売の経験の全くない企業だ。
エディオン蔦屋家電の販売員は、もともとエディオンの社員で、これまでも各店舗で販売に携わってきた経験がある。販売、接客という面では二子玉川と明らかに違うのだ。これまでとは全く異なる新しい店舗づくりにチャレンジしたエディオン蔦屋家電。この先も注目だ。