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ミステリーショッパー 販売員の違いにびっくり 浜松マチの電子レンジえらび(前編)


新連載の本企画。ミステリーショッパーが全国の家電量販店を回り、接客や売り場づくりを評価する。購入することを前提として本気で接客を受けるため、一般のお客と同じ目線でのリアルな体験がレポートできるのが特長だ。初回となる本稿のテーマは、電子レンジ。ミステリーショッパー「浜松マチ」は、どのような接客を受け、購入する商品を決定するのだろうか。前編と後編に分けて掲載する。

ミステリーショッパー情報

家電Biz 編集部:浜松マチ

35歳、女性。5歳年上の夫と、幼稚園年少の息子の3人家族。フルタイムの会社員として働いている。仕事と家事、子育てに四苦八苦する毎日に追い打ちをかけるように、今年4月から子供が入園した幼稚園では、週3回のお弁当持参。食事作りの負担がさらに増えた。そんななか、電子レンジが突然の故障。時短やお弁当づくりに便利な機能がある電子レンジを購入するため、家電量販店へと足を運んだ。

浜松マチは家事の負担が少しでも軽くなる電子レンジの購入に向けて、ワクワクしながら家電量販店に向かっている。久しぶりの高価な買い物。もちろん、同じ価格ならばバッグや靴のほうが嬉しいけれど、それでも足取りは軽い。

事前にインターネットで最新の電子レンジについて調べ、大体の価格の目安はつけてきた。「最上位機種には手が届かないけれど、便利な機能がついた“いい電子レンジ”が見つかるといいな~」

都市型店A 男性販売員(50代前半くらい)

店内にはたくさんの電子レンジが並んでいる。どこをどう見たらよいかもわからない。が、とりあえず、接客を受ける前にまず一通り見てみよう。

浜松マチが電子レンジコーナーの入り口から一つ一つ商品を見ていると、視界の端に人の気配を感じる。視線も…。私、自意識過剰…?いや、確かに視線を感じる…。ふと、柱が一部鏡になっているところを発見。それを見ると…。み・て・る…!近くの棚に体を預けるようにして少し斜めの姿勢で、死んだ魚のような目で。さっきは誰もいなかったはず。いつの間に!?

ちらっとそちらの方を見ると、2メートルくらい離れたところに男性の販売員が立っている。そっか、接客のために話しかける機会をうかがっているのね。ちょっと待ってね、話は聞きたいのだけれど、まずはどんな機種があるか一通り見たいので。

…マチが動くと近くの気配も動く。そして依然として感じる視線。さりげなさを装っているけれど、けっこう不自然。

居心地の悪さに耐え切れずに、マチは自分から販売員に話しかけた。

すみません、お弁当作りと時短調理に便利な機能が付いた電子レンジってどれですか?

販売員はのっそりと動き出すとゆっくりとマチに近づく。中年太りのポッコリお腹を突き出した歩い方。だらしない印象。

シャープの電子レンジは時短調理をうたってますねー

ゆっくりした口調。眠いのかな。興味のなさそうな販売員の態度に、マチは最近めっきり短くなった「怒り爆弾」の導火線の先に火が付くのを感じながら、努めて優しく聞いた。

時短調理って、具体的にはどのようなことができるんですか?

ネットで一応調べたけれど、価格をメインで見たから、具体的な機能とかはよく分からなかったのよね。

ん?寝ちゃったのかな?販売員の沈黙に顔を上げると、販売員は確かに起きている。一言も発しないままシャープの電子レンジに貼ってある写真をゆっくりと指差す。行動がのろい!自分の子供だったら怒鳴りつけるところだわ!

アルミホイルとかが使えるのでー、いろんな調理ができますよねー。お弁当と言っても、料理は料理なのでー、いろんな料理ができれば、お弁当にも応用ができますよねー

どっかーん!

「『お弁当と言っても料理は料理』だとー!まるで私が怠惰だとでも言っているかのよう!確かにマメではないけれど!」先ほど導火線に火がついたばかりのマチの怒りの爆弾が、販売員のこの一言であっという間に爆発した。

怒り爆発の原因

間延びした話し方も、ナマケモノのようなゆっくりすぎる動きも、そしてなによりも忙しい中での調理をいかに時短で手間をかけずに作るかに苦心しているマチにとって、料理を知り尽くしたかのような販売員の発言に腹が立った。

また黙り込んだ販売員を置いて、その場を立ち去ろうとするマチ。

待てよ。せっかく来店したのだから、カタログくらいはもらっておこう。帰宅してから吟味できるように。

すみません、そのシャープの電子レンジのカタログ、いただけますか?

あー、はい

販売員はマチの爆発に全く気が付いていないようだ。

相変わらずゆっくりとした動作で、該当の電子レンジの周りを探し始める。カタログが見当たらないようだ。マチも周囲を見てみたが、見当たらない。販売員は棚の端の方まで行ってようやくカタログを見つけ、マチに手渡してくれた。…無言で。

ここまで客を苛立たせる販売員に出会ったことがなかったマチは、店を後にして、半ば感動を覚えている自分に気づいた。これが噂の「不快な販売員」かぁ。あの無神経さがあれば、どこでも悩みなく生きていけるのではないかな。ある意味、すごいわ…。

この販売員のなにがマチをそんなにも不快にしたのか。一番の要因は、そのゆっくりとした動作と無関心そうな態度だ。お客の存在を無視したかのような態度はいただけない。料理作りに日々ストレスを感じているマチへのあの発言も、同じように、お客の要望を無視している。

子供のお弁当は前日のおかずを詰めると衛生面で不安だし、見栄えの良いかわいいお弁当にしてあげたいという親の気持ちもある。朝晩のメニューを毎日考えるだけでも大変なのに、お弁当を別で作るとなると、負担は大きい。家電の力を借りて少しでも楽になるのならばそうしたい。それを、怠けて楽をしたいのだろうと言われているような、否定されているような気持になった。

百歩譲って、機能とか商品情報を一方的に話す販売員のほうがマシかもしれないとマチは思った。少なくとも、お客に向き合う姿勢と熱意があるからだ。

足取り重く店を出たマチは、次の店舗で正反対な販売員と出会うことになる。

後編につづく。