売り場は2000坪超のワンフロア
家電住まいる館大宮宮前本店は売り場面積6,630㎡を誇るワンフロアの大型店舗。ピロティ形式の駐車場の収容台数は302台、従業員は90名体制である。同店は東京都練馬区から埼玉県さいたま市北区を結ぶ国道17号沿いに立地し、店舗裏の東側は集合住宅や戸建ての住宅街が広がっている。
同店の梶野陽介店長は、さいたま市緑区のテックランド浦和美園店から昨年9月に赴任。赴任後、約半年で今回のグランドオープンを迎えた。同店の客層について梶野店長は、「背後に住宅街があることからファミリー層が多く、家電と携帯、アクセサリーなどを求めて来店されるお客様が多いという印象です」と語る。また、住宅街に近い立地から、薬や食品類などを購入しに来店するお客も多数いるという。
改装前からハウステックのショールームがあったため、リフォームも扱っているという認知度はあったと話すが、それでもグランドオープン前の内覧会などでお客と話した印象では、「実際に売り場を見たら、住空間の関連商品をすべて提供できるというところに驚いているお客様が多くいらっしゃいました」(梶野店長)。
同店では家電住まいる館への業態変更以前から車の販売買い取りを行っており、業態変更以後もこの取り組みは継続。店舗の入り口右手には登録済み未使用車を複数展示し、1階のエントランス左側には「クルマ販売買取カウンター」を設けている。
また、1階駐車場には電気自動車用充電スタンドも併設されており、今後さらに普及拡大が予想される電気自動車に対応する取り組みも行っている。
売れ筋やニーズのある商品は縮小せず、売り場の最適化を実現
テックランド時代と同じ売り場面積で家具やインテリアなどの商品を導入するということは当然、家電の売り場や展示アイテムが縮小する。「家電と家具・インテリアの売り場比率は家電が6割強で、家具やインテリアが3割強程度。縮小したアイテムとしては法人向けの特殊な用途の商品と食品。おもちゃもパズルなどのニーズが一部のお客様に限定されるアイテムは削っています。しかし、基本的に売れ筋やお客様のニーズがある商品は絞っていません」と梶野店長は説明をする。
2階に上がると、左手には複数のソファとパネルを置いて、家電+家具+リフォームを扱っていることをお客にアピール。エスカレーター正面にはガラスで仕切られたヤマダ不動産のブースが配置され、その隣には『住まいなんでもご相談受付コーナー』として、ハウステックのショールームも含めたリフォームコーナーを展開している。
リフォームコーナーや家具コーナーの導線には、スタンド型のディスプレイを複数配置。これは「間取リッチVR」という同社が導入したVRサービスの一つで、リフォームや家具、家電の配置イメージをVRを使って、ディスプレイ上で視覚化したもの。QRコードを読み取ることで、表示されたイメージをお客が自宅に持ち帰ることができる仕組みだ。
家具やインテリアでも3パターンで新生活を提案
新生活商戦の今、2階に上がるエスカレーターから近い位置に『新生活まるごと提案』と書かれたPOPとともに、家電や家具、食器類などを生活のためのシーンとして提案。展示された商品の合計金額も掲示することで、部屋のイメージと同時に予算感も伝えている。
提案は一つだけでなく、『新生活をお手頃価格ではじめよう』『ちょっと贅沢な環境で、自分らしさを表現』『こだわりのアイテムで、新しい旅立ちを』というお客の志向に合わせたバリエーションを用意。室内のトータルコーディネートとして、お客がイメージしやすい展示を実現している。
エスカレーターの右手には、飲食コーナーのCAFÉ RESTOを併設。床やテーブル、椅子などは落ち着いた色調に統一され、開放感のあるコーナーは店舗の中の飲食コーナーというよりも、それだけで一つの飲食店として独立しているような趣がある。
家電については全体的に低めの什器を採用し、棚下在庫もしっかりと置いて、お客の視認性や持ち帰りのしやすさに配慮している。商品POPはあまり貼らず、これは「高級感の演出という点もあります。また、お客様に生活空間のトータルコーディネートをするため、実使用においてもお客様がイメージしやすいようにPOPをベタベタ貼ることがないようにしています」と梶野店長は説明をする。
テレビの持ち帰り提案もPOPを使って分かりやすく解説
グランドオープンということもあるが、導線上に山積みや梱包してある商品を並べ、お客への持ち帰り提案もしっかりと行っている。この持ち帰り提案で秀逸なのは、テレビ。
導線に持ち帰り用として並べている43V型までの複数のテレビの上に、POPを置いて『お車でもお持ち帰り出来ます』と目立つように表示し、3つの車種で車内に収納可能ということを写真で解説。車内への持ち運びはポーターサービスが行うので安心ということも明記し、持ち帰りを促進させる策を講じていた。
また、メーカーごとのテレビの設定方法や録画機器の接続方法もPOPを用いて解説。お客が自分で持ち帰って接続設定を行う際に取扱説明書を読まなくても、このPOPをスマホなどで写真として撮ることでお客の設定をサポートする取り組みだ。
エアコンは壁面を使って5段展示。通常の売り場だと最下段より下はデッドスペースになってしまうことがあるが、同店は最下段の商品から床までのスペースを有効利用し、こたつと天板と毛布の組み合わせや同社のオリジナル商品であるHERB Relaxのデザインテーブルを配置した。これにより、エアコンにプラスαの提案が実現されており、お客への気づきを促す仕掛けだ。
冷蔵庫と洗濯機は全機種に幅、奥行き、高さのサイズを表示
冷蔵庫ではすべての商品の最下段の部屋に、横幅と奥行き、高さがPOPで表記されている。洗濯機もやはりすべての商品に冷蔵庫と同様の表記と防水パン内寸の奥行きも加えたPOPを貼付。このPOPによって、お客は購入商品が自宅のスペースに収まるかどうかをより意識し、購入後に設置不可となることを防止することができる。
また、ところどころのエンドでは、エンドと隣接する形でHERB Relaxの商品をラックで展示し、ついで買いを促進する提案を行っている。
家電と家具・インテリアのコーナーは主導線でコーナー分けがされており、ソファやダイニングテーブルのコーナーはダウンライトで高級感を演出し、その他のコーナーはLED照明で非常に明るい売り場が作られている。
家電と家具・インテリアでは商品自体が異なるが、販売スタッフに関しては特に担当の振り分けはしていない。基本はフリー営業で、すべての商品の接客ができることという。家具やインテリアの接客では家電と異なる商品知識が必要と思われがちだが、梶野店長は「家具とインテリアでは専門的な知識が必要とされる時もありますが、ほとんどの場合、お客様はスペックで選ぶのではなく、感性で選びます」と話す。細かい点では本革と合成皮革の違いを説明することはあるが、それよりも空間のコーディネートという観点での説明になることの方が多いようだ。
家具やインテリアの接客で必ず伝えるのがサイズ
家具やインテリアの接客で必ず言及することがあるという。それは、サイズだ。「お客様の感性で選んだ商品が、実際にはご自宅のスペースに収まらないという状況は避けなければいけません。
売り場の広い空間に置いていると、意外と小さく見えてしまうのです。だから、サイズについてはしっかりとご説明をするようにしています」とのことで、これは特に大型家電でも同様。前述の冷蔵庫や洗濯機のサイズ表示も、スペース収まらなかったためにお客をがっかりさせてしまうのを防ぐ目的があるが、家具やインテリアでも同じと梶野店長は解説する。
前述のとおり、販売員は家電や家具などの区別なく、接客をする。売り場での立ち位置は特に設けず、売り場全体を回遊する形で、お客がいる場所で接客を行う。特に接客では、お客に対して『分かりません』と言わないように指導しているという。商品の知識や説明においては得手、不得手がある。しかし、知識が曖昧だったり、不得手な商品の場合は、『分かる』担当者につなぐことで、お客に不便をかけないようにしていると話す。
お客視点の提案が増え、進化する家電住まいる館
これまでオープンしてきた「家電住まいる館」と同店を比べると、新業態店として完成されてきた印象がある。例えば、以前の店舗よりも売り場は明らかに明るい。明るいことで、家具やインテリアなどの色調がハッキリと分かる。これらは感性で選ぶことが多いと梶野店長は話していたが、だからこそ売り場で見た色合いと自宅に置いて見たときの色合いが同じであることが重要。その点で、明るい売り場はお客にとってもプラスとなっていると思われる。
また、売り場発信の提案やついで買いを促進させる仕掛けもより多くなったという印象だ。商品POPが少ないのは確かだが、お客への情報提供として必要なPOPは貼ってある。ところどころに配置されたカートやカゴなど、お客へのちょっとした配慮もしっかりと行われている。
同店からわずか200mほど離れた場所にはニトリがある。ニトリ自体もアイテム数は少ないものの、家電を扱うようになっており、同店にとってはまさに競合店といえるだろう。家具やインテリアで圧倒的な集客力を誇るニトリに対して、同店がどのように戦っていくか。今後の動向を注視するとともに、「家電住まいる館」でのさらなるサービスの向上や住宅関連事業の今後の展開に注目していきたい。
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