第1回4K・8K機材展が東京ビッグサイトで開催(後編)
ピクセラが4K放送対応の4K Smart Tunerを出品


4月4~6の3日間、東京ビッグサイトで第1回となる「4K・8K機材展」が開催された。同展示会は4K・8K用の放送機材や超高精細モニター、デジタルサイネージなど、今後進展する超解像度映像化時代に向けた機材や技術が一堂に展示されたもので、基本的にはB to Cではなく、B to B向けの展示会。前編では開催時に行われた講演の内容をお届けしたが、後編では出展社の展示内容を紹介する。

BOEジャパンは110型8K液晶ディスプレイを展示

「4K・8K機材展」で最も大きなブースを作っていたのが、BOEジャパン。同社は、北京に本社を置くBOEテクノロジーグループの日本法人で、液晶ディスプレイやデバイスメーカーである。BOE(京東方科技集団)は中国の液晶パネルメーカーの最大手で、グローバルで捉えると世界有数の液晶パネルメーカーだ。
BOEジャパンが出展していたのは、110型や98型の8K液晶ディスプレイ、8Kデコード・プレイヤーなどで、このディスプレイでは同社の映像配信クラウドシステムの概要も紹介されていた。

BOEジャパンのブースは壁面に展示された製品以外に余計なものを何も置かず、非常にスタイリッシュで近未来を感じさせる造りになっている

NHKは8Kシアターで8Kの高精細映像と音響効果をアピール

日本放送協会(NHK)は8Kの映像や22.2チャンネルのサラウンド音響が体験できる8Kシアターを出展。20分ごとに行われたデモンストレーションは行列が絶え間ないほどの盛況ぶりだった。

シアターの中では平昌オリンピックのフィギュアスケートやバンドのライブなどを300型の超大型モニターに投影。8K放送の22.2チャンネルサラウンドも体験できた

また、シアター外側の壁面を活用して、新4K8K衛星放送開始の告知や視聴のための必要機器なども表示し、12月からの放送開始を訴求していた。

B to B向けに4K8Kシステムの設計・改修を提案するDXアンテナ

DXアンテナは、『既設の受信設備 4K・8K化改修工事のご提案!』として、既設住宅の受信システムの設計・改修やケーブルテレビの受信点基地局のシステム改修、Wi-Fi構築の提案、監視カメラソリューションなどを展示していた。

DXアンテナのブースでは、事業者向けに4K8K対応へのシステム改修や実修理での機材などを展示
監視カメラについては、選べる3つのシステムとしてIP、同軸、ワイヤレスの3パターンを提案
2K~8Kまでマルチ対応の分配器や分波器なども展示。すべてSHマークを取得済み

カメラ、レンズ、ディスプレイと8Kへの対応を進めるキヤノン

キヤノンのブースは、『4K8Kソリューションは、新たな領域へ』というテーマで、8Kのカメラやレンズ、ディスプレイを参考出品。3月29日に発表された映画撮影用のデジタルシネマカメラ EOS C700FFや既発のC700、C300などもブースの壁面で展示されていた。

また、やはり参考出品ながら55型と29型の8K HDRディスプレイも展示。8KHDRによるこれまでにない色の再現性や質感、奥行き感の表現は、映像制作や放送だけでなく、学術研究やデザイン、経年劣化していく文化財の映像保存などの面でも活用が期待されると紹介していた。

ブースの内側の開放部では参考出品の8Kカメラで撮った映像を29型HDRディスプレイで投影。ブース内側の仕切られた空間には既発の4Kディスプレイと55型・29型の8KHDRディスプレイを展示
参考出品の8Kカメラ。新開発の8K専用CMOSセンサーが搭載されている
ブースの外側にはデジタルシネマカメラのラインナップを展示

フィリップスは日本初の「DisplayHDR」認証モデルを出品

フィリップスはPC業界初のHDRの標準規格「DisplayHDR」に対して、国内の液晶モニターとしては初の認証モデルとなった2機種を展示。この「DisplayHDR」規格にはエントリークラスからハイエンドクラスまでの3つの規格があり、出品モデル2機種は、それぞれエントリークラスの「DisplayHDR400」とハイエンドクラスの「DisplayHDR1000」の認証を取得。発売は5月からの予定という。

VESAが策定したPCディスプレイの国際標準規格である「DisplayHDR」認証モデルを展示したフィリップス
日本サムスンのブースは、同社とその他の6社とで共同出展し、日本サムスンはSSDのラインナップを展示

2017年9月にEverProと販売特約店契約を締結した富士通エレクトロニクスは、EverProのアクティブ光ケーブルを展示。

EverProは世界No.1の光ファイバーの生産量を誇る中国のYOFCと台湾のCPUメーカーであるVIAとの合弁企業で、アクティブ光ケーブルの専業メーカー
EverProの市販ブランドであるFIBBRの HDMIケーブルも展示していた
ミハル通信は新4K8K衛星放送に対応したRFアナライザーを参考出品。信号のレベルのみならず、ビット誤り率や変調誤差比などの測定も可能

注目のピクセラはネット対応の4Kチューナーを展示

2017年3月の記者発表会で4Kチューナーの開発と市場参入を発表したピクセラ。今回の出展では、新4K8K衛星放送対応の4K Smart Tunerを出品するとともに、W録画に対応した4K Smart TVも参考出品した。

多くの来場者の関心を集めていたピクセラのブース
ブースには新4K衛星放送の開始を告知するPOPも置いた(上)。展示された4K Smart Tuner(中)とA-PAB提供の試験放送波を映し出した4K Smart TV(下)

4Kチューナーに関しては先日、東芝映像ソリューションが試作機を発表したものの、その試作機は一部の報道関係者しか見ていない。放送はスタートするが、チューナーがどのようなものになるかを表明したのはピクセラと東芝映像ソリューションのみということもあり、来場者の関心は非常に高かった。

ピクセラの4K Smart Tunerは4K放送の視聴だけでなく、YouTubeやNETFLIXの4Kコンテンツも視聴できる仕様だ。OSにAndroid tv Oreoを搭載しており、Googleアシスタントにも対応。Google Playストアからアプリをダウンロードしてゲームや音楽なども楽しめる。

本体は横230mm×縦137mm×高さ144mmで、本体重量は425g。電源はACアダプター。接続端子についてはHDCP2.2に対応したHDMI出力が1系統、F型コネクタ対応の地上デジタル用とBS・110度CS用のアンテナ端子がそれぞれ1つずつ、通信接続用のLAN端子が1系統で無線LANは非対応。また、メンテナンス用のUSB端子(TypeA)が一つとなっている。

4K Smart Tunerの背面。番組視聴やネット接続に必要な端子のみで構成されている

リモコンは音声操作に対応し、呼びかけワードが不要

リモコンのボタンには文字ではなく、機能を示すマークが印字されており、直感的な操作が可能だ。唯一の文字表記はdボタン。青、赤、緑、黄の各色には漢字の表記が付いている。また、カーソルキーの右上にはGoogleのロゴで使用されている青・赤・黄の3つの色が一つになっているボタンがある。これは、Googleアシスタンを作動させる際の「OK、Google」と同じ機能を持っており、このボタンを押すことで、Googleアシスタントへの呼びかけを省略できるというものだ。

チャンネル選択の数字キーを廃した4K Smart TVの付属リモコン。シンプルだが、必要なボタンは直感で判断できる
付属リモコンとはボタンの位置や大きさも異なる別売りのリモコン。漢字表記で分かりやすさの配慮がされている

シニアなどは文字の表記があった方がよいことも考えられる。そこで同社では、別売りという形でチャンネルの数字キーや漢字での表記も付いているリモコンを用意している。

同社が今後、推進していこうとするテレビを核としたスマートホームハブサービスもパネルで提案
3月23日に発売した50インチ4K液晶ディスプレイと、メディアストリーミング端末と1TBのHDDレコーダーを組み合わせたスマートレコーダーセットもアピール

大きな注目を集めたピクセラの4Kチューナーは10月上旬には発売したい意向という。想定売価は税抜き約3万円。店頭で来店客から4Kチューナーについて質問された際の回答の一つとして、同社の4Kチューナーの情報を伝えたい。

4K Smart Tunerの開発背景や開発プロセス、今後の事業展開などについては、季刊誌「家電Biz」夏号(5月25日発売)で掲載予定である。

今回の4K・8K機材展は最先端の技術をメーンとした展示会で、参考出品の試作機が多かった。それゆえ、改めて技術の進化は著しく、4K8K以外にも通信での5GやLPWAなどの実使用化が目の前に迫っていることを実感するものだった。

ビジネス向けのテクノロジーが民生機器に転用されるケースは、往々にしてある。コンピューターはまさにその最たるものだ。デジタルの世界では、技術が非常に速い速度で進化している。この技術が民生用機器に転用され、搭載されることで家電の進化も進むだろう。中長期的な家電需要は縮小すると見られているが、逆にこれからの、特にデジタル家電には期待できる部分が多い。そんな印象を感じる展示会であった。