『今を知る中国・現地レポート』 中国・蘇寧が本土でコンビニ展開を推進


13億9,000万人の人口を抱え、GDP世界2位まで上り詰めた中国。グローバル市場での中国家電メーカーの存在感は言うまでもないが、無人店舗やキャッシュレス決済などにおいても、その展開スピードは日本をはるかに凌いでいる。その中国で今、起きていることを弊社の北京支社・范丽姣から現地レポートという形でお伝えする。

様々な業態店を展開する蘇寧

中国の大手家電流通であり、日本のラオックスの親会社としても知られている蘇寧。2018年12月までに蘇寧は中国全土で約7,000店舗を展開し、その中でコンビニエンス業態の「蘇寧ミニショップ」が4,000店舗以上を占めているという。その他の業態店としては、地方都市でのFC展開をしている「蘇寧小売クラウド店」が2,000店以上で、従来型の家電量販店からネット連携を強化し、家電以外でも多種多様なサービスを行う「蘇寧.comクラウド店」や、日本の無印良品に近い雑貨専門店の「蘇寧極物」、食料品専門店の「蘇フレッシュ」、子供用品専門店の「Red baby」、蘇寧シアター、蘇寧スポーツ、蘇寧カー用品スーパーなど多種多様な業態の店舗を展開している。

2018年3月31日、蘇寧ミニショップは全国43都市で133店舗を同時にオープン。その後、店舗展開を急拡大させ、12月末までに北京では500店舗を突破。2019年にはさらに500店をオープンする予定で、2020年までに北京エリアにおいて2,000店舗以上を出店すると計画されている。

2017年の中国のコンビニエンス店舗数は約10万店で、市場規模は約2兆円。2017年度の日本のコンビニエンス店は約5万8,000店で市場規模は約11兆円(日本フランチャイズチェーン協会の統計より)。国土や人口を日本と比較すると、中国においてこの市場はまだまだ成長する余地が十二分にあると考えられる。実際、『2017中国食品、フレッシュなものに対する消費者洞察報告』によると、中国の若い世代はフレッシュなものの購入頻度が高いという。

蘇寧ミニショップはこのような市場背景を鑑み、通常のコンビニとは異なり、出店エリアのユーザーニーズに合わせた商品構成となっている。例えば住宅エリアにある店舗であれば、主に「1日の食事」を重視し、野菜や果物、惣菜などを重点的に取り扱っている。商圏の中心地や通行客が多いエリアでは、果物や出前、温かい飲み物を強化。病院の近くでは医薬品、スポーツセンターの近くではスポーツ用品といった形で、エリアマーケティングに合わせた商品展開を行っている。

売り場メンテナンスに難あり

筆者は北京にある蘇寧ミニショップの店舗を訪れた。店舗の正面は駐車場で、エントランス近辺には来店客が使用したのであろうか。自転車が置かれており、やや邪魔になっている。

店舗に入って、目の前に現れたのは果物や野菜、卵など。しかし、常温状態で置かれているため、鮮度が多少落ちているように見える。

蘇寧ミニショップの責任者である鲍氏は、「商品とサービスにおいて、競合のコンビニよりレベルは、はるかに高い」と述べているが、少なくとも筆者が訪れたこの店舗においては、そのマネジメントレベルが高いと言えないという印象を受けた。

例えば、ドリンク売り場では、ところどころで商品のフェースが揃っていない。しかし、店員は気がついていないのか、商品の整理などをしていないようだ。

また、POPや値札が古くなったり、落ちそうになったりと、細かい部分の管理がしっかりと行き届いていないように感じられた。このあたりは、まだまだブラッシュアップしていかなければならないところだ。

とはいえ、蘇寧ミニショップの出店スピードは確かに他社を驚嘆させるほど速く、ある程度の業績も上げていると言われている。南京の5店舗の売り上げは平均で前期比101.6%アップと倍増し、上海のある店舗では同126.8%アップ、北京のある店舗でも97.6%アップという。

この急成長の背景には、蘇寧がここ数年蓄積してきたサプライチェーンマネージメントやネット販売においての経験が生かされているものと推測される。店舗数が多く、ユーザーのすぐ近くにある蘇寧ミニショップがネットと店舗との橋渡しという役割を果たしているのだ。日常的な業務の中からユーザーの消費習慣や消費行動を把握し、これを仕入れや店舗運営などに活かすと同時に、ネット販売においての集客にも活用している。

会員メンバーにはポイント付与や割引購入

店舗では、買い物客が決算する際にミニショップの会員加入を勧められる。買い物をするたびにポイントが貯まるという特典があるからだ。

アプリをダウンロードし、毎日チェックすると、その週の2日目、4日目、7日目にサプライズが待っているという仕掛けが組み込まれている。

さらに毎月9.9元(日本円で約160円)を支払えば、スーパー会員となり、店舗とネット上で約1,000種類の商品が会員価格で安く購入できる。該当商品はオレンジ色の値札が付いているので、すぐに分かる。

将来的には、さらに多くの店舗がオープンし、2km圏に1店舗という体制になれば、注文後1時間以内に配送することが可能になる。顧客がアプリで注文をすると、システムが自動的に顧客の場所を検出し、一番近い店に配送の指示を出すという仕組みだ。購入金額が48元(約800円)以上であれば、無料配送となる。

アプリを通して注文できるのは商品だけでなく、サービスもある。家電の修理や設置、クリーニングなど1,000~3,000円程度のサービスや、12万円ほどの高額な空気洗浄サービスというものもある。

拡大とともに求められる質の向上

将来的には、商品販売というコンビニの基本機能にシェア設備や薬品、オフィス向けのサービスなど、さまざまな新たなサービスが付加されていくと言われている。

時代の発展とともに、中国家電業界のTOPとして認識されてきた蘇寧も大きく変わってきた。蘇寧ミニショップが蘇寧全体での成長を目指すうえでの新たな試みとして、今年も急速に店舗を拡大していくであろうことは間違いない。しかし、出店と同時に店舗の質の向上も重要だ。前述の売り場のメンテナンスに見られるように、目新しさや利便性以外にお客が固定客となるような、さらなる工夫が必要と店舗を訪れて感じた。(クロス北京支社・范丽姣)