旧店舗から2駅離れてケーズデンキ中央林間店オープン “親切”と“安心”で、既存客の維持と新規顧客拡大を図る


ケーズデンキ中央林間店が3月6日にオープンした。もともと隣接したエリアに中央林間店よりも大規模の店舗があったが、その店舗を閉鎖し、東急・田園都市線で2つ隣の駅に移転オープンした形だ。単独店舗からインショップへと店舗形態は変わったが、これまでリーチできなかった商圏への浸透に期待を寄せている。

横浜町田インター店から中央林間店へ

東急・田園都市線の南町田駅を最寄り駅とするケーズデンキ横浜町田インター店は2009年にオープン。カルフール南町田の跡地に居抜き出店していたこともあり、売り場面積は2,000坪を超える大型店だった。

しかし、南町田駅前の商業施設であるグランベリーモールの大規模再開発と町田市による町づくり計画によって、同店の場所は再開発後に複合利用ゾーンとなることが決まり、同店の賃貸契約は更新されなかったため、約10年にわたる営業を本年2月17日で終了した。

横浜町田インター店(上)は、現在休館中のグランベリーモール(下)と周辺地区を含む大規模な再開発のため、2月に閉店した

この閉店に伴い3月6日、南町田駅から2つ隣の中央林間駅より徒歩8分のコーナン中央林間店2階にインショップという形式で「ケーズデンキ中央林間店」をオープン。売り場面積は約770坪。閉店した横浜町田インター店と比べると売り場面積は大きく縮小したが、横浜町田インター店でも店長を務めていた伊東昭店長は、「展示アイテムとしては縮小しましたが、取り扱いカテゴリーはほぼ変わっていません」という。

コーナン中央林間店2階でインショップとして新規オープン。1フロアすべてが同店だ

例えばデジカメ関連商材の三脚などは展示数が縮小し、パソコンなども展示台数が少なくなっている。しかし、その反面でドローンの展示スパンなどは拡大しており、売り場を回遊すると展示ボリュームでの物足りなさが感じられるような要素はない。

大型店は、単に展示アイテムが多いということだけではなく、動線の幅や展示商品同士の間隔も広い。そのため、売り場の広さと見た目のボリューム感は一致しないことがある。その意味で、横浜町田インター店のお客が中央林間店を訪れた際、売り場が狭くなったことは当然分かるが、直感的に展示アイテムが少なくなったとは気がつかないだろう。

手前の什器は低く、奥に行くと高くなっていて売り場は坪数以上に広く感じられる

近隣に大規模集合住宅でファミリー層の需要を期待

同店の社員は約25名。横浜町田インター店が約30名だったので、売り場面積が縮小した分、1人当たりの担当売り場面積は減り、その点は「前の店舗よりもやりやすくなると思います」と伊東店長はいう。

同店の商圏設定は神奈川県大和市と座間市、相模原市の一部と東京都の町田市。横浜町田インター店は幹線道路の交通量の影響から大和市や座間市からの誘客が弱かったようだが、新店の立地では顧客増が期待できる。また、中央林間店の近隣では現在、大規模集合住宅が建設中で、完工すると約1,500世帯が増加するという。ファミリー向けの住宅のため、集客と売り上げの両面での需要増が期待できそうだ。

売り場のレイアウトは、エントランス右手に携帯コーナーからパソコン、パソコン周辺機器と続き、正面左手の手前には理美容を配した持ち帰り商品の中島、正面から左奥へと続く壁面は大型商品というケーズデンキのフォーマットに従っている。

売り場は中央に小型や最寄り品を配し、壁面に大型商品を展示している

売り場では情報発信や体感・体験を重視

主動線に専用什器を使っての“おすすめ品”やワゴンボックスを利用した“お買い得商品”、エンドでの用途提案や注目商品の展示など、ケーズデンキ流の展示演出がそこかしこに見られる。また、キャンペーンの告知や設置・取付時の注意喚起などのパネル、ポスターも目に止まりやすい位置に置かれている。

主導線に置かれた“お買い得商品”の数々。ついで買いを促せるプライスが付けられている
PC売り場ではWindows7のサポート終了をパネルで告知し、買い替えにつなげる

クリーナー売り場では、スティック、キャニスター、ロボットとも体感展示型売り場となっており、いずれのタイプにもカーペット、畳、フローリングの異なる素材上での吸引力が試せる。前述のとおり、売り場は決して広くはない。それでも体感を重視して実演スペースを設けているのは、お客が納得して購入できるための配慮といえよう。

クリーナーは、タイプ別でもカーペット、畳、フローリングでの吸引力が体験できる

従来からケーズデンキでは、什器のフック部に商品の選び方やタイプ・クラスの分類、注目ポイントなどが記載されたパネルを取り付けている。このパネルはお客への情報提供であり、同時にお客が自身で商品を選べる指針ともなる。これにより、土日のように来店客が多くて物理的に接客対応ができない場合でもセルフ化の促進に役立つのだが、このパネルが特にパソコンや周辺・関連商材に多く取り付けられており、間違いなくお客への有益な情報となっていると感じた。

タイプの違いや選び方のポイントをパネルで提示して、来店客へ情報を提供

また、フォトフレームは中島の片側すべてを使って展示。かなりアイテム数が多いのだが、伊東店長は横浜町田インター店でも展示していたとのことで、「スタートはワゴンからで、徐々に売れてきたため、コーナーとして確立しました。その流れから当店でも前の店舗と同じような形で展示をしています」と話す。ちなみに、このフォトフレームはスマートフォンで撮影した写真を飾るためのもので、小ぶりのサイズが多くなっている。

売り場面積と比べてフォトフレームの展示アイテムは多いが、スマホでの写真需要からニーズはあるという

スマートスピーカーは主動線に面したエンドと、そこから横に流れる島に展示し、大判パネルを置いて来店客を誘引。伊東店長によると、「お客様にお勧めして売れるという感じではなく、今の段階では関心のあるお客様がご自身で選んでいきます。話題性はともかく、これからの商品という印象があります」とのことだ。

スマートスピーカーの展示にも力を入れている

長期保証で“買った後も安心”をアピール

中央林間店での抱負について伊東店長は、「ケーズファンになってもらって、リピーターを増やしていきたいと考えています」という。そのファン化のための差別化ポイントに上げるのが、長期保証。「当社の長期保証は他社と比べて、お客様のメリットが多いのが特長です。売価は合わせることができますが、長期保証は会社の取り組みなので、競合店が当店に合わせることができません。買った後でも安心ということを、1人1人のお客様に理解していただき、ケーズファンになってほしいですね」と語る。

ケーズファンを増やしていきたいと抱負を語る伊東昭店長

中央林間店の商圏は座間市や大和市で、この商圏には競合店も多数存在している。競合店に対して、長期保証も含め、ケーズデンキが追求する「本当の親切」を推進し、既存客の固定化と新規顧客の開拓を進めていく方針である。