東芝の4K有機ELレグザPro「65X930」が7月18日に発売 プロユースも想定した機能を搭載し、映像にこだわる層を開拓
タイムシフトマシン搭載有機ELのフラグシップモデル「65X930」
東芝映像ソリューションは他社に先駆けて有機ELテレビを市場投入。さらに4Kチューナー搭載モデルも他社より早く手がけ、新4K衛星放送がスタートしていない時期に4Kチューナー搭載モデルを発売している。
自ら有機ELテレビに“前のめり”と標榜しているその東芝映像ソリューションが、新たに市場投入するのが55V型と65V型の2サイズを揃えたフラグシップの「X930シリーズ」だ。このうち、55V型の「55X930」は予定どおり7月10日の発売だが、65V型の「65X930」は当初の発売が延び、7月18日の発売と決定した。
有機ELパネルは2019年仕様で輝度が向上
有機ELテレビは自発光のため、暗部の階調は表現できても、明るい部分の輝度が足りず、画面が暗いと感じられることがある。これは液晶テレビのようにバックライトを持たない構造ゆえのことだが、同社によると新製品に搭載した2019年仕様の有機ELパネルは、パネルの輝度自体が向上しており、昼間のリビングで視聴しても暗いと感じないとのことだ。また、有機ELパネルは自発光ゆえの焼付きリスクもあるが、これも「技術の進化で、このリスクも大幅に低減した」と話す。
同社では有機ELテレビについて、“攻めの有機EL戦略”を打ち出している。市場では有機ELテレビのラインアップ拡充や参入メーカーの増加などで、価格が下がってきた。そこで、“もう有機ELは特別なテレビではない”として、市場を開拓すべく有機ELテレビを強化する方針だ。
映像制作のプロの活用も想定し、各種の信号もマニュアル設定可能
既発の「X830」と「X930」は、いずれも新開発した高画質処理エンジン「レグザエンジン Professional」を採用。“Professional”と冠し、映像の制作や解析に活用できる「プロユース映像分析・設定機能」を搭載した。これは、BT709やBT2020といった色空間やPQ方式、HLG方式などをマニュアルで設定することが可能で、HDRのダイナミックメタデータや信号情報、周波数ヒストグラムなどもリアルテイムで表示できる。
同社では、「一般の方は、あまり使わない設定」としながらも、映像にこだわりのあるユーザーのニーズに対応した。実際に複数の映像制作会社が同シリーズを導入。画面に映し出された映像のクオリティーは現場での制作・編集作業などに十分活用できると自信のほどを述べる。
AI超解像技術では、深層学習による効果でノイズの目立つシーンを自動判別して、ノイズの少ない高画質映像で再現。映像の動きの多寡を判別して、適切なフレームを用いるバリアブルフレーム超解像や従来の映像を高コントラストなHDRクオリティーで再現するAI機械学習HDR復元などの高画質技術を搭載している。
昼と夜とで変わる室内の色に対応し、AIが自動で画質を調整
また、室内の照明の色や照度を検出し、その視聴環境に合ったホワイトバランスや輝度を自動でコントロールする「リビングAIピクチャー」も搭載した。一般的に昼間のリビングは外光が入ってくるので壁の色は青っぽくなり、夜は逆に赤っぽくなる。昼間にテレビの色調整をした場合、夜になって照明が電球色になると、画面が青っぽく感じられる。逆に、夜に色調整をして、その状態のままで昼間にテレビを観ると赤が強いように感じる。つまり、室内は昼と夜とで色温度が異なるのだ。「X930」では色温度センサーと照度センサーを搭載し、さらに視聴しているコンテンツ情報もAI技術で判別することで、室内空間の色の変化に合わせて自動で画質を調整する。
さらに進化したタイムシフトマシンを搭載
既発の「X830」との違いは、数点ある。まずは「X930」がタイムシフトマシン搭載であること。タイムシフトマシンの初号機は2009年発売の「CELL REGZA 55X1」で、内蔵HDDに録画するスタイルだった。REGZAも世代が変わり、録画用のHDDは内蔵から外付け対応となったが、多チャンネルを数十時間分、まるごと録画するという機能に加えて、好みに合った番組をAIが勧める「みるコレ」や音声で検索できるボイスコントロールなどの機能が追加されている。
音についても違いがある。「X930」では新たに開発した対向型パッシブラジエーター方式の2ウェイスピーカーを採用。新設計のフルレンジスピーカーやシルクドームツィーターとの組み合わせで、振動がキャビネットに伝わりにくく、豊かな低音と透明感の高い高音を再生する。
また、プロユースや映像にこだわる人のために、「X930」は外部機器との接続機能も充実させている。18Gbs対応のHDMI入力端子を7系統搭載し、オーディオ面でも光オーディオ出力と同軸デジタルオーディオ出力に対応。ユーザーが所有しているオーディオシステムとの連携も可能だ。スタンドのデザインも「X830」と異なり、パネルより前面にスタンドのでっぱりが出ないフラッシュフロントデザインを採用している。
チューナーは、BS/CS 4Kが2つ、地上・110度CSデジタルが3つ搭載し、新4K衛星放送の裏録画にも対応。地上デジタルはタイムシフトマシン搭載で、9つとなっている。
接客ではプロユースにも耐えられる高画質を訴求
映像のプロの使用も想定した搭載機能は、ともすればオーバースペックと見られるかもしれない。しかし、それだけ映像の表現力には自信があることの裏付けともいえる。もちろん、デフォルトはオートなので、日常使用では知識がなくても全く問題はない。逆に、商品説明の際は、前述の「プロユース映像分析・設定機能」のいくつかを見せて、映像の現場での使用にも使える品質であることを説明すると、クオリティーの高さが理解してもらいやすくなる。
同様に、昼と夜とでは室内空間の色が変化することを伝え、2つのセンサーとAIで視聴しているコンテンツに合った画質を自動で調整する「リビングAIピクチャー」機能も訴求しよう。買い替えのお客がタイムシフトマシンユーザーであれば、進化した機能も合わせて伝えたい。
同社では高まっている壁掛けニーズに対しても、純正の壁寄せテレビローボードを発売している。壁掛けとは異なり、壁に穴を開けたり、補強工事をすることなく、壁掛けスタイルを実現できる同製品も合わせて薦めよう。