今年度のドラム洗需要は前年比109%の65万台と予想
ここ数年間、洗濯機の出荷状況は好調に推移している。2018年度は前年比100.5%の464万8,000台で、2019年度は下期に消費税の引き上げが予定されているが、東芝ライフスタイルでは18年度比104.3%の約485万台と予想する。
ドラム式洗濯乾燥機は2000年の本格普及から順調に出荷台数を伸ばしてきたが、2012年をピークとして減少傾向にあった。しかし、17年度、18年度と需要は再び高まってきた。この需要の高まりについて同社の洗濯機事業部 商品企画担当の岡本涼氏は「ドラム洗が縦型よりも洗浄力が低いというイメージや脱水時の振動、乾燥時間の長さなどの不満点が改善されたことにより、高性能で使いやすい製品という評価になったため」と考えている。この流れもあり、19年度は18年度比109.1%の65万台に伸長すると同社では予測している。
ドラム洗のメインユーザーは家事の時短ニーズが高い共働き世帯
ドラム洗の購入者は約7割が共働き夫婦という。「仕事と家庭を両立させるために家事をしっかりと素早く行いたい。そのために高機能で使いやすい洗濯機で家事の時短を実現したいと考えています」と岡本氏は話す。
洗濯機に求められる要素として同社では、「キレイに洗いあがること」「イヤな臭いを残さないこと」「使いやすいこと」「夜でも気がねなく運転できること」「運転時間が短いこと」を挙げる。ドラム洗では、これらに加えて、「ふんわり仕上がること」も求められる要件という。
今回発表された9月上旬発売予定の新製品TW-127X8の特長は、抗菌ウルトラファインバブル洗浄Wによる「いつもキレイな衣類」の実現と、液体洗剤・柔軟剤の自動投入、スマートフォンによるIoLIFE連携での「手間を減らす使いやすさ」の実現、そして業界最大の7kgの洗濯~乾燥でも約108分で、低振動・低騒音設計による「運転時間を選ばない」ことの3点だ。
ドラム洗の購入者206人に対するアンケートで、落としにくい汚れを聞いたところ、「黄ばみ」が94%、「襟や袖の汚れ」が91%だった。さらに、衣類に関して気になっていることについては、42%が「臭いを気にする」と回答。次いで28%が「雑菌を気にする」と回答した。つまり、汚れ落ちに加えて、臭いや雑菌を防ぐ洗浄効果がドラム洗には求められているということである。
黄ばみや襟・袖の汚れ残りの原因は、皮脂汚れと汗や垢に含まれるタンパク質汚れ。皮脂汚れは黄ばみの原因になり、タンパク質汚れは菌を繁殖させて臭いを発生させる原因になるという。皮脂汚れもタンパク質汚れも人体から出る2大汚れで、衣類を着ていれば切っても切り離せない汚れだ。
抗菌ウルトラファインバブル洗浄Wに進化
この2大汚れに対しては、同社が2017年から採用してきたウルトラファインバブルをさらに進化させ、汚れと臭いを従来よりも大きく低減させたと話す。ウルトラファインバブルは1μm未満の超微細な泡で、衣類の繊維よりも小さいため、簡単に繊維の奥に入り込むことができる。超微細な泡のために、水中では浮力の影響を受けずに長時間水中にとどまることができるという。さらに、洗剤や柔軟剤に含まれる界面活性剤はまとまる性質があるが、ウルトラファインバブルは界面活性剤をバラバラにして活性化する効果がある。
既発のモデルは、ウルトラファインバブルを洗浄時にだけ活用していたが、新製品ではすすぎ時にも活用。さらに水の循環シャワーの工程に抗菌AG+抗菌水ユニットを搭載し、洗濯の度に衣類を抗菌コート。この組み合わせにより、ウルトラファインバブルは、さらに進化した「抗菌ウルトラファインバブル洗浄W」となった。
進化した「抗菌ウルトラファインバブル洗浄W」の皮脂汚れに対する洗浄効果は、水道水だけでの洗浄よりも約15%アップし、繊維の奥の皮脂汚れを落として黄ばみを防止。タンパク質汚れでの洗浄効果は水道水だけよりも約10%アップで、菌の繁殖による臭い対策としては臭気濃度が水道水だけよりも約40%低下するという。
ユーザーの“手間を減らす” 洗剤の自動投入とスマホ連携
ドラム洗ユーザーの「手間を減らす技術」の一つが、新たに搭載した液体洗剤・柔軟剤の自動投入。投入口は天板の左側にあり、投入口の面積は約38cm2と業界最大サイズ。口が広いので、こぼさずに投入することができる。また、タンクには液体洗剤が約1L、柔軟剤は約700mlと詰替え用パックをまるまる1本投入できる業界トップクラスの大きさとしている。
もう一つの「手間を減らす技術」がスマホ連携。TW-127X8は2.4GHz帯の無線LAN対応で、東芝ライフスタイルのアプリ「IoLIFE」と接続することにより、運転コースや終了時刻の設定・変更が自由にできる。運転状況もスマホの画面で確認できるので、運転中も他の家事を効率的に行える。また、運転終了や槽洗浄のタイミングを知らせるお知らせ通知や洗剤・柔軟剤の銘柄設定、お手入れ方法を知らせる万全サポートなどの機能も搭載している。
この2つの「手間を減らす技術」により、洗剤投入~乾燥までを洗濯機に任せ、空いた時間を他の家事や余暇の時間として使えるようになる。つまり、使い勝手が良くなったことで、時間を有効活用できるようになるのだ。前述のとおり、ドラム洗の購入者の約7割が共働き世帯なので、この“時間を有効活用できる”という部分は、ドラム洗を求めて来店するお客にとって、大きなアピールポイントとなりそうだ。
洗濯槽の最大径は約54cmと大きく、洗濯物が多くても槽内でしっかりと広がる。ヒートポンプユニットから出る風量は従来比1.5倍の約4.4m3/分。この2つの組み合わせで、業界最大容量の7kgの衣類でも約108分で洗濯~乾燥まで仕上がる。しかも低温のヒートポンプならではの温風で乾かすことで、ふんわりと仕上げる。干す手間を省き、ふんわりとした仕上がりでスピーディーな乾燥を実現した。
独自のDD方式とアクティブサスペンションで低騒音・低振動を実現
共働き世帯では、夜間に洗濯をすることも少なくない。その際に気になるのが振動や騒音。同社は1997年、洗濯機の駆動方式にベルトやギアを利用しないダイレクトドライブ方式を採用し、低振動・低騒音設計に注力してきた。
TW-127X8でもこの思想を継承し、独自のアクティブS-DDモーターを採用。洗い時の騒音レベルは約32dBで、脱水時は約37dB。図書館の中が約40dBとされているので、非常に静かだ。乾燥時は約49dBとレベルはアップするが、これも静かな事務所と同程度である。
振動に関しては、ドラムを支える脚の部分にアクティブサスペンションを採用している。油圧式で、電磁石を採用して運転状況によってサスペンションの固さが変わる振動吸収クッションを搭載。洗濯の立ち上がり時はたたき洗いのため、サスペンションを固くして槽をしっかりと支える。脱水時は逆に小刻みの振動になるので、サスペンションの固さを柔らかくして衝撃を逃がすという特長を持つ。
F1カーや新幹線のN700系でも同じような技術が使用されているという。この2つの低騒音・低振動技術により、深夜や早朝でも時間を気にせず、洗濯ができる。
接客では洗濯における課題解決型の説明を行おう
ドラム洗は汚れ落ちや乾燥の仕上がりを実演デモという形で訴求することができず、説明が難しい商品の一つだ。最近はサイネージを活用して、映像を見せる販促活動も増えているが、それでもなかなかお客に納得してもらうことは難しい。
TW127X8の接客では、目に見えない超微細なウルトラファインバブルの効果を、ドラム洗購入者が気にする袖・襟の汚れと衣類の黄ばみ、そして臭いの発生の3つに有効であるとしてストーリーを展開しよう。
お客に対しては、「しっかりと洗ったはずなのに、袖や襟の汚れがあまり落ちていないと思ったことはありませんか?」「洗濯をしてからしまっておいたのに、収納ケースやタンスから出してみたら黄ばんでいたという経験はありませんか?」というトークで、体から出る皮脂やタンパク質の汚れがその原因と伝えることにより、ウルトラファインバブルの説明に入りやすくなる。
さらに銀イオンの抗菌水と、すすぎ時にも使用することで、「抗菌ウルトラファインバブル洗浄W」となっていることも伝えよう。
洗剤自動投入だからこそスマホ連携がアピールできる
見た目で分かる訴求ポイントとしては洗剤・柔軟剤の自動投入がある。天板の投入口を開けて、その大きさを見てもらうと分かりやすい。また、この自動投入によって、槽内に洗濯する衣類等を入れておけばスマホ連動で外出先からでも洗濯がスタートできる。これは共働き世帯にとっては大きなアピールになる。低騒音・低振動も忘れずに訴求したいポイントであることは言うまでもない。
同社のドラム洗のラインアップは、現行商品のTW-127X7の後継機種となる新製品のTW-127X8と、洗濯容量11kg・乾燥容量7kgのTW-117A8、エントリーモデルの洗濯容量9kg、乾燥容量5kgのTW-95G8。容量や搭載機能から松竹梅として分けやすいラインアップとなっている。
ヒーター方式のTW-95G8からヒートポンプ方式のTW-117A8。さらに抗菌ウルトラファインバブル洗浄Wと洗剤自動投入、スマホ連携のTW-127X8と振り上げるストーリーは組み立てやすい。機能説明で終わらず、省手間や時短による時間の有効活用を提案し、単価アップを図ろう。