AIoTの推進で他社との差別化を進める
シャープでは2019年度の洗濯機の需要動向を、出荷台数ベースで前年同期比102.2%の4,589千台と見込む。10月の消費増税の影響は比較的軽微という予測だ。こうした市場背景の中、シャープはAIoTの推進に注力することで、他社との差別化を図ろうとしている。
シャープが2018年11月に発売した、AIoT対応ドラム式洗濯機「ES-W111」におけるユーザー調査によれば、活用されているAIoT機能は、運転状況の確認が30%、洗剤の適量発話が22%、洗濯レポートが20%、お天気発話が17%、専用コースダウンロードが8%となっているという。
3割しか使っていないという見方もできるが、将来の利用を見込んで購入しているケースもあると見られ、認知拡大と利用率向上を目指していく。7月には、後継機となる「ES-W112」も発売し、今回、いよいよタテ型にも機能搭載を押し広げた形だ。
これにより、シャープの洗濯機全体でのAIoT対応機種は、5ラインアップとなった。なお、シャープのAIoT対応機種はしゃべるイメージがあるが、ES-GW11Dはスマートフォンやスマートスピーカーの連携が中心で音声機能を搭載しないので注意。
最適な洗濯方法や洗濯の進捗状況の確認が簡単
COCORO WASHやCOCORO HOMEの自体は、ES-W112までと大きく変わっていないが、ざっと紹介しておく。
COCORO WASHでは、クラウドから天気情報を取得し、ユーザーの状況に最も適した洗濯方法をアドバイスする。電源ONで今日の天気をお知らせ。晴れや雨などの天候だけでなく、季節や洗濯指数も参照し、洗濯物の内容に応じて最適な洗剤量なども通知する。
また、スマートフォンと連携し、洗濯の終了時間や、お手入れタイミングを確認したり、エラーが発生した場合のエラー内容や解決方法もスマートフォン上で見られる。
COCORO HOMEでは、同社のAIoT対応冷蔵庫と連携して、キッチンから離れることなく洗濯終了の通知を音声で受け取るといったことも可能だ。ドアが閉まっている状態では冷蔵庫の「聞いてキー」が点滅し、ドアが開いたタイミングでは音声で通知する。これにより、台所にいて洗濯終了に気が付かないといったことが防げる。スマートスピーカーにも対応しており、同様のお知らせが可能だ。キッチンやリビングとサニタリーが離れている間取りでは重宝するに違いない。
ちなみに対応冷蔵庫は、「SJ-GA55E/50E」「SJ-GX55E/50E」「SJ-GX55D/50D」だ。
シャープの調査では、冷蔵庫の扉が多く開閉される時間帯と洗濯機が利用される時間帯はほぼ同じになると言う。どちらも、在宅していて家事をする時間帯に使われるというわけだ。
ES-PWシリーズ3機種は、ラグジュアリーでお手入れもしやすいガラストップデザインを採用し、操作部として「光るタッチナビ」を搭載する。利用できる操作だけが光るため、操作で迷うことが少なくなる。
お知らせがある場合は「聞いてキー」が点滅し、タッチすると音声で伝える。洗濯機本体が快適な洗濯を音声でナビゲートする仕組みだ。このキーは洗濯機をルーターと接続するときにも利用する。
好評の「プラズマクラスター」や内フタのない「WIDEマウス」、洗濯槽内のカビ菌を抑制する「穴なし槽」なども引き続き採用するほか、本体上部に「超音波ウォッシャー」も搭載する。小物の乾燥や消臭に便利なクリップ付きハンガーは2本付属となった。
全自動洗濯機のES-GW11Dは、「穴なし槽」は採用するが、プラズマクラスターやWIDEマウスは非対応となる。詳しくは末尾の主な仕様表を参照してほしい。
白物家電のネット対応に遅れないために
AIoTの普及拡大に努めるシャープだが、家庭内の白物家電を無線LANに接続している人はまだまだ限定的だ。スマートフォンの所有率や無線LANの世帯普及率を考えると、「使おうと思えば使える消費者」は、もっとずっと多いと見て良い。普及の足かせとなっているのは、消費者がAIoTをどう活用すればどう便利になるかのイメージが掴めていないこと、それと対応機種が普及価格帯に落ちてきていないことの大きく2点と言える。
今回、ドラム洗だけでなくタテ型洗乾が対応したことで、対応機種の価格帯は少し下がったと見ることもできる。いま取り組むべきは、あらゆる露出機会を捉えて、AIoTの魅力を消費者に伝えていくことだ。
店頭はそうした露出機会の1つだが、水を使う洗濯機の実演はそもそも簡単ではないことに加え、白物家電コーナーは無線LANが飛んでいないという店舗も未だまだ多い。白物家電にもネット対応の波が本格的に進んできている。今後はシャープだけでなく、様々なメーカーがあらゆる白物家電をネットに繋げていくようになる。競合店舗に対する差別化点となるうちに売り場のネット対応を進めたい。
また、クラウドやAI、IoT、無線LANといったキーワードは、デジタル製品だけのものではなくなってきている。白物家電売場の販売員も今のうちに積極的に学んでいく必要があるだろう。
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