売り場の6割が家電で、非家電は羽毛以外の全カテゴリーを揃える
8月28日、横浜市青葉区の東急田園都市線たまプラーザ駅前にあるイトーヨーカドーの3階にビックカメラ イトーヨーカドーたまプラーザ店がオープンした。売り場面積は約2,000㎡、社員は50名弱で、パート・バイトが約20名体制。同社の他店と比べると中型店舗という位置づけで、年商目標は30億円という。
ビックカメラとして東急田園都市線沿線での出店は初となる。同線は通勤時の混雑率が首都圏の私鉄でワースト1となるほど沿線人口が増えている路線だ。また、同路線の中でもたまプラーザ駅周辺は地価が高く、高所得者も多く在住しているエリア。集客と顧客単価の両面が期待できる。
売り場面積の約6割が家電で、4割が非家電。この非家電では同社が扱っている酒類や玩具、ゲーム、自転車、リフォーム、メガネ、コンタクトレンズ、時計や日用雑貨商品など、羽毛布団を除く全カテゴリーを揃えている。宮嶋氏は、「非家電商品は単価がある程度下がってしまう面があります。しかし、来店頻度は逆に上がるという効果があります。最近の出店では特に酒類に力を入れており、集客では効果が出ていますので、当店でも売り場は狭いながらもかなり力を入れています」と話す。
ECへの誘導はバーコード読み取りからNFC対応へ進化
同店のコンセプトは「アプリでGO!」。これは同社の公式アプリとの連動を高めた施策で、プライスカードの代わりに電子棚札を採用し、その電子棚札から同社のECサイトに誘導するというもの。町田店で導入された電子棚札はアリオ八尾店でも導入されており、電子棚札に表示されているバーコードを公式アプリで読み取ると、その商品ページが表示される。
商品情報やレビューなど、展示だけでは分からない情報を取得でき、さらに購入時には店舗での取り置きやネットでの購入なども選択できる。つまり、電子棚札は単なるプライス表示だけではない機能を持ち、その機能をECサイトへの誘導に活用することで、オムニチャネル化を進めるという仕掛けである。
もともと電子棚札の導入のきっかけはプライスカードの貼り替えをなくし、販売員の手間を減らして効率化を図るというものだった。また、取り置きサービスのオーダーが入ったら電子棚札のLEDランプが光り、注文商品をピックアップする担当者が該当商品を見つけやすいため、従来よりもピックアップの時間が軽減されるというメリットもある。いずれも効率という側面から導入した。
しかし、「電子棚札にはいろいろな機能があるということが導入して分かりました」と宮嶋氏はいう。ECサイトへの誘導もそうだし、「お客様に電子棚札からECサイトに飛ぶ方法をお話ししたりすることで、コミュニケーションの手段の一つにもなると考えています」(宮嶋氏)。
同店の電子棚札は新しく機能が追加されている。それは同社のECサイトでのレビュー件数と☆マークによる5段階評価が表示される機能だ。展示商品を見て興味を持ったら、購入者のレビューや評価を知ることで他商品との比較ができ、購入をするうえでの参考情報となるのだ。
さらに同店の電子棚札はNFC機能の導入で、バーコードを読み取る方式からスマホの公式アプリを立ち上げ、スマホを電子棚札にかざすだけで商品情報が表示される。従来よりもさらに一段進化したわけで、これを「アプリでタッチ」としてアピールしている。
夜10時までの営業時間を活かし、トリオキをアピール
既存店でも採用していた商品の取り置きサービスを同店でも導入。下りのエスカレーター近くにレジカウンターを配置し、その横に“トリオキ”カウンターを設けた。同店の営業時間は夜の10時まで。近隣の競合店よりも遅くまで営業しており、駅前という立地からもビジネスマンが注文商品を受け取って帰宅するのに便利だ。
前述のとおり、売り場は約2,000㎡。決して広いとはいえない。しかも取り扱いカテゴリーは多岐にわたる。そのため、商品展示に関しては壁面や什器の上段まで活用し、棚展示している商品同士の距離も短く取っている。また、隣接した島同士の通路幅はけっして広いとは言えない。展示だけを見ると2,000㎡クラスとは思えないボリューム感があるが、いざ商品をじっくりと見ようとした際に、お客がどう感じるかという点は若干の懸念がある。ただし、商品の選定から購入まで、すべてが店舗で完結しなくてもよいように前述のEC連動があるのだ。
同店の高木秀行店長は、大阪のあべのキューズモール店、JR八王子駅店を経て、同店に着任。売り場面積に対する展示商品数の多さについては、「この規模で、これだけの品数を揃えているのはビックカメラでも当店だけ」と話す。「酒類に関しても試飲カウンターを導入し、実演による試食デモも行います。週末には、イベントを多く実施して、地域のお客様に愛される店舗づくりに取り組んでいきます」と抱負を述べる。
スペースを最大限活かして体験・体感コーナーを配置
最近の同社の店舗は体験・体感コーナーを充実させており、同店でもスペースは限られているが、同様の試みをしている。例えば同店ではじめて導入したシャワーヘッドの体感コーナーでは実際に3種類のシャワーヘッドの水量や水流を比較することができる。給水・排水に関してはポンプで水を循環させ、さらに衛生面から毎日、水を入れ替えるという。また、ドローンの操作体験やワイヤレスイヤホンの視聴体験などもそれぞれの売り場でできる。
酒類コーナーはワイン、ウイスキー、リキュール類の洋酒や日本酒、焼酎、ビールなどを幅広く展示。マグネットの目玉商品は電子棚札ではなく、大型のプライスカードを採用。「お客様に分かりやすくという意味から大きめのプライスカードで価格を表示しています。あえて紙を使うことで目玉商品が映えるようにと考えました」(高木店長)。
展示演出の工夫でお客への訴求力を高める
家電コーナーはフルラインアップの展示ではないが、売り筋をしっかりと置き、エンドでもさまざまな提案がされている。さらに最近はスマホ連動の家電商品が増えてきたこともあり、スマホでどのようなことができるかをタブレットにインストールしたアプリで確認できるようにしている。
余裕がないスペースをいかに活用するか、どのように展示したらお客に分かりやすいか、お客に興味を持ってもらうためにはどのような展示がよいのか、など、売り場ではさまざまな工夫が感じられる展示演出を行っている。
売り場効率と居心地、見やすさのバランスを取った売場づくり
ビックカメラは空間を活用して展示演出を行うのが非常に巧みな企業だ。大型店はそのスペースを活かしてお客の目を引く展示を行い、小型店では無駄なスペースがないほど空間をフルに使ってボリューム感を出す。イトーヨーカドーたまプラーザ店は、かなり作り込んだ店舗で、店内を回遊する際の見やすさや選びやすさと品揃えをギリギリでバランスさせたという印象を受けた。
2,000㎡といいうスペースは展示に余裕を持たせると商品点数を減らさなければならず、ボリュームを優先すると選びやすさや居心地が損なわれる。もともとある大型店の売場づくりのノウハウと“セレクト”の出店を通して得た小型店の売場づくりをミックスさせた店舗といえるだろう。
リアル店舗とECを融合させ、持ち帰りや取り置き、宅配とお客の都合に合わせた選択肢を揃えた同店。郊外の駅前立地という環境で、新たなチャレンジが始まった。
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株式会社ビックカメラ
ビックカメラ イトーヨーカドーたまプラーザ店