シャープのAIoT家電が目指す次のステージは、スマートライフ推進事業
今回は両社の位置づけとミッションについての説明となった。
AIoTのユーザー向けサービスを一元化
シャープは10月1日付けで、「株式会社SHARP COCORO LIFE」と「株式会社AIoTクラウド」を立ち上げた。いずれもシャープのAIoTプラットフォームビジネスにおける、会員サービスの強化や他社サービス&機器との連携強化を図る100%子会社の位置づけだ。
SHARP COCORO LIFEは、COCORO+サービスにカスタマーサポートなどを加えて「COCORO LIFEサービス」としてまとめ、シャープのAIoTプラットフォームとの連携を手掛けていく。長谷川祥典氏が会長、大山 貞氏が社長に就任する。
AIoTクラウドは、異業種まで含めた他社が提供するサービスとのAIoTでの連携をつかさどる。社長は赤羽良介氏、副社長は白石奈緒樹氏が就任する。
SHARP COCORO LIFEでは、COCORO KITCHENなどの「COCORO+サービス」、スマートライフに役立つソリューションを提供する「COCORO STORE」、製品やサービスをアフターサポートする「COCORO カスタマーサポート」、ユーザーが製品を一元管理したり、使いこなすための関連情報などを提供する「COCORO MEMBERS」の大きく4つのサービス群を、COCORO LIFEサービスとしてまとめ、エンドユーザーに提供していく。
パートナーのIoT化推進で事業を拡大
AIoTクラウドのビジネスを一言で言うと、「パートナーのIoT化の推進により、社会問題の解決や、生活者のスマートライフを実現すること」となる。製品の製造・販売というよりは、シャープのAIoT技術で新しいサービスを創出したり、他社との連携を図ったりしていくB2Bサービスであり、考えうるサービス内容は多岐に渡る。
壇上に立った赤羽社長は、「AIoTクラウドの事業は、経済産業省が2月に打ち出した『スマートライフ政策』と方向性が一致している」と述べ、消費者の安心で健康な暮らしの実現を目指して事業に取り組んでいくと強調した。
AIoTクラウドのビジネスには4つの特徴があるという。1つめは、AIoT機器を通じてクラウドに集まる生活データを意味のあるデータに高次化すること。2つめは、従来は縦に繋がっていたサービス・プラットフォーム・デバイスの連携を横にも繋げ、プラットフォーム同士での相互接続型となること。3つめは、パートナーのニーズに対して技術力で個別に応えていくこと。4つめは、統合UIの構築により他社製品とも連携していくこととなっている。
これら4つの特徴を踏まえたうえで、「1.シャープのAIoT機器の拡大」「2.複数メーカーのIoT機器がプラットフォーム上で単一に見える仕組み」「3.機器メーカーはAIoTプラットフォームにつなぐだけで多サービスへ対応可能にする」の3つの要素を段階的に達成していくことで、事業拡大のスパイラルが作れるとし、特に2.と3.の高次化を実行するのがAIoTクラウドのミッションとなる。
少々、例を挙げないと分かりづらいかもしれない。
シャープのAIoT対応無水調理鍋「ホットクック」で、特定の日時に特定のメニューを調理した台数を地域と紐付けて可視化すると、西日本が多かったなどの傾向が出てくる。こうした情報を積み重ねていけば、時期や地域で絞った人気料理をスーパーや飲食店に提案できる。
たとえば、エンドユーザーの生活習慣を解析して、最適なタイミングでお知らせを配信するサービスが考えられるだろう。ある程度周期的にカレーを食べる家庭に対し、そろそろカレーが食べたくなる時期ではないかと予測して、スマートフォンにカレー用のお肉の特売日の広告を表示する。さらに、ECサイトに誘導してそのまま購入可能にするといった具合だ。
洗濯乾燥機であれば、雨の降った地域と乾燥機能の利用率がリンクしていることもひと目で分かる。天気と運転モードの相関の見える化や、使用された洗剤のランキング化なども可能だ。空気清浄機ならPM2.5の多い地域の見える化、エアコンなら室外機温度と室温の平均を見て、ヒートショック対策を呼びかける材料にするといったこともできる。店頭でサイネージにしてそのまま掲示するだけでも、消費者の足を止め、セールストークの材料にできそうな興味深いデータではないだろうか。
具体的なパートナーシップも生まれたスマートライフ注力分野
AIoTクラウドでは、これらのデータを生のまま外に出すのではなく、個人情報に関わるデータは取り除いたうえで分析・加工して、より価値のある情報に高次化し、既存のサービスや新しいサービスと組み合わせて使うことで、消費者の利便性を向上させるサービスに昇華したいとする。
だから応用範囲は相当広い。AIoTによる横のつながりが、複数の家電メーカー機器間の相互連携といった枠に留まらず、AIoTデータを活用できるサービスであれば、どんな業種業態であってもパートナーになれる。
同社では、スマートライフの注力分野として、「IoTみまもり」「スマートキッチン」「スマート室内環境」の3つを掲げる。
このうちIoTみまもりに当たる、IoT家電と見守りサービス提供会社との連携に関しては、KDDIやセコムと具体的な提携に向けて準備中だ。
CEATECのシャープブースにはセコムと連携をスタートした「セコムみまもりホン」の「テレビみまもりオプション」についての展示がある。AIoT対応テレビの画面が付いていた時間を見守る人のスマートフォンで確認できるサービスで、一晩中点きっぱなしだとか、いつもテレビを見ている時間に視聴している様子がないといった、不自然な状況がひと目で分かる。
シャープは経済産業省の推進する「LIFE UP プロモーション」に参画するほか、CEATECのスマートライフ企画展にも出展しており、「テレビみまもりオプション」はまさにこの対象となっている。
スマートキッキンに関しては、cookpadやトクバイに対して連携を提案しており、そのための実証実験を近く行う予定だという。
また、スマート室内環境については、NeuroSpaceと提携して質の高い睡眠環境を提案するエアコン新製品「Xシリーズ」を、10月11日に発表したばかりだ。
新しいXシリーズでは、気象予報のデータを活用し、クラウドAIによる運転制御で、日中はもちろん、睡眠中のエアコンの運転も制御する。部屋ごとの温度変化を予測して先回り運転し、冷えすぎや暖めすぎを抑制し、電気代の節約にもつなげる。
売り場のIoT化など、家電流通との連携は考えられるか
洗濯機と家庭内の機器同士で連携し、洗濯が終了するとスマホに通知する。住人がキッチンにいれば冷蔵庫が洗濯終了を知らせる。これがエアコンになったり、照明になったりして、家電が横で繋がる。そうした未来は比較的想像しやすい。家電業界で仕事する人間ならなおさらだろう。
家電と他のサービスを組み合わせたとき、生活もビジネスも、もっとどんどん広がって豊かになっていく。そして、家電流通という業態とも改めて繋がれる場面が多いのではないかと感じた。先述の調理機器や洗濯機などの例もそうだが、個々の商品がどの時期、どこでどんな使い方をされているかが分かれば、エンドユーザーの利用動向に合わせて売り場を迅速に変えられる。
現在日本各地で利用率の高い商材を売り場の前面に出し、流行の使われ方をPOPにしたり、実演したりすれば、来店客の目を引くことは間違いない。「お隣の奥さんが使っていたのはコレなのね」「作っていたのはコレなのね」などと売り場で気づかせられ、購買意欲を刺激できる。特に調理家電はイメージしやすそうだ。売り場だけでなく、消費者への適切な案内の送付や、サポートへの活用を通じて、店頭に足を運んでもらうツールにも使えるだろう。
最後に、CEATEC会場のシャープブースで目に付いた展示を写真で簡単に紹介する。
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