eスポーツ売り場のいま 一人当たり平均購入額が上昇、体験こそが売り場の強み
eスポーツはただのオタク文化の1つで、スポーツと呼ぶことさえ大げさだと捉える人はまだ多い。だが、英語圏ではスポーツ(Sports)という言葉は、競技や競争のニュアンスが強く、対戦ゲームをスポーツに分類しても、日本ほど違和感がない。
しかも、eスポーツは年齢や性別による差が少なく、居住地域によるビハインドもあまりない。より多くの人がより公平な条件で競技に参加できるため、ビデオゲームに抵抗の少ない若い世代ほど「スポーツの1つ」として肯定的に受け入れられて来ている。
お客のほとんどは事前に調べてくる
ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaは、こうしたeスポーツ向けのデバイスの取り扱いに積極的な店舗だ。PC周辺機器売り場を展示する2階の一角に、eスポーツコーナーを設けている。秋葉原はeスポーツ大会がしばしば開催される土地柄で、eスポーツ売り場を持つ店舗も多い。ヨドバシカメラの売り場は、その中でも豊富な品揃えと体験できる売り場づくりが魅力になっている。
「昨年よりも確実に売上が伸びている。特に一人当たりの平均購入額が増え、商品種別で見ると、マウス、キーボード、ヘッドセットの売上が伸びています」と語るのは、PC周辺・サプライ専用チームの國分マネージャだ。
コーナーに足を運ぶ来店客の年齢は20~40代が中心で、以前より女性客も増え男女比は7:3くらい。家族連れや外国人客も少なくないそうだ。
eスポーツユーザーにネットが使えない人や、ネット通販に尻込みする人はほとんどいない。そんなユーザーが店舗に来て購入する理由は、購入前に触って試したいからだ。マウスの動かしやすさ、キーボード入力の快適さ、ヘッドセットの付け心地などは個人による差が大きい。目的の商品を試してみて、マウスが手の大きさに合わない、ヘッドセットの耳の当たり具合が気に入らない、ずれやすいなどと気が付くと「じゃあ、何に変えるか」となる。スペックを見たり、メディアやプレイヤー間の評判だけを頼りに、通販で購入する場合には得られないメリットだ。
他の家電製品に比べると、お客が事前に調べてくるケースが多いのもeスポーツ売り場の特徴になっている。
「接客は大きく2パターンになります。1つはお客様が『これ、どこですか?』とスマホ画面に目的の商品を表示して聞いてくる場合で、置いてある場所を案内するだけでほぼ終わりです。もう1つは『こういうゲームがやりたい。どんな商品が良いですか?』と聞いてくるケースです。お客様の環境ややりたいことを少しずつ深堀りして聞いていき、相談に乗ります」と、國分マネージャは言う。
このため、売り場は商品の体感にこだわる。時には新しいパッケージを開けて試してもらうことまであるという。
高単価で周辺商材も豊富、実は店舗販売と相性良し
お客はeスポーツ向けの製品はある程度高額なものと理解しており、ストレスフリーを重視する。価格が安いことよりも、快適にプレイできることが重要なわけだ。
お客が「このゲームタイトルに本気で取り組む」と意気込んでいる場合は、一式揃えていくこともあるという。そういうケースで、どれか1つに特化してお金を掛ける一点豪華主義より、平均の性能を上げる揃え方のほうが多いそうだ。目的がゲームの成績を上げることにあるため、デバイスもウィークポイントを潰していくほうが効率的となる。
もう1つ話を聞いていて興味深かったのは、プレイで勝負や記録にこだわるプレイヤーだけでなく、自分や他人のプレイを実況して配信するストリーマーと呼ばれる人たちも増えているということ。そうした人たちには、高性能なキャプチャボードやマイクなども人気だという。
流通面から見た時に忘れてはならないポイントの1つに、eスポーツは世界観を持ったグッズの販売と相性が良いことも挙げられる。ゲームメーカーによるキャラクターをあしらったグッズはもちろん、ゲーミングデバイスのメーカーも、カラーリングやロゴを揃えて1つの世界観を表現したグッズを持つところは少なくない。同店にもゲーミンブブランドのコーナーがあり、統一感のある世界観が演出されている。今後はグッズの取り扱いも増えるかもしれない。
プレイヤーがこだわって商品を選ぶeスポーツは、実は通販よりも店舗販売の方が向いているのではないか。売り場からはそんな印象を受けた。