自社開発モジュール搭載によりハイレゾ音源を高音質で再生
オラソニックは東和電子が手掛けていたオーディオブランド。2010年に卵型スピーカーを市場投入し、その形状や音質の良さが話題となり、音にこだわりを持つオーディオファンの支持を集めた。2017年に東証一部上場の光学技術メーカーであるインターアクションに事業譲渡され、インターアクション第1号機となるハイレゾ対応高音質Bluetoothスピーカーの「IA-BT7」やオーディオ機器に接続するBluetoothレシーバー「NA-BTR1」などを発売してきた。
今回発売するハイレゾ対応Bluetoothスピーカー「IA-E55BT」は、オラソニック独自の卵型スピーカーの形状を受け継ぎ、Qualcomm製のチップを採用して自社開発したBluetoothモジュールにより、Bluetoothでもハイレゾ音源を高音質で再生する。
スピーカー部は口径60mmのフルレンジスピーカーと口径25mmのスーパーツイーターを組み合わせ、45Hzから45kHz(USB再生時。アナログ再生時は50kHzまで)の広音域までカバー。最大出力は10W+10Wである。
給電はパソコンや電気用品安全法で認められたPSEマークの付いたモバイルバッテリーなどからUSB経由で行う。オーディオ入力端子はUSB(TypeB)とAI/AUDIO IN(ステレオミニジャック)を備え、再生機器とはBluetoothによる無線でもケーブルによる有線でも接続することが可能だ。入力端子の“AI”はスマートスピーカーを指し、出力端子のあるスマートスピーカーと接続することで、音楽がより高音質で楽しめる。
カラーはマットブラックとスノーホワイトの2色。外形寸法は幅113mm、高さ162mm、奥行き117mmで、既発のTW-S9と同サイズ。コンパクトでインテリアとのマッチングもよいつや消し色を採用し、設置する場所によって、目立つようにも目立たぬようにもすることができる。
音づくりは低音から高音まで豊かでナチュラル
試聴したところ、音の分離がことのほか良く、コンパクトなボディにも関わらず低音は芯がある。口径70mmのパッシブラジエーターがしっかりと低音を響かせているという印象だ。高音域も非常にナチュラルで、音にトゲトゲしさがない。ひとことで言うと、音域に余裕があるという感じだ。
スピーカー同士を近接させず、ある程度離した位置に置くと、優れた音像定位が分かる。これは卵型という形状が、ボックス型のスピーカーと比較して不要な反射音や反響音がないためだろう。スピーカー同士をつなぐミニケーブルで最大150cm、離して置けるので、ベストな音像となる位置にレイアウトすることができる。
また、音が正面だけでなく、筐体のラウンドに沿って斜め上方向にも出るため、音に奥行き感もプラスされている。コンパクトサイズのスピーカーは、どうしても音に厚みが出ないのだが、意外なほどファットな音になっているのも特徴だ。
デモや体験を通してお客に情報発信を
据え置きでIA-E55BTを使用する場合は、USB接続でパソコンからの給電が最適だが、AC電源対応にもすることで、ユーザーの拡大が図れたのではないかと思う部分もある。ただ、Windows7のサポート終了に伴う買い替え需要期の今、パソコンとのセット提案を図れる商品であることは間違いない。
オラソニックは、その独自性や価格以上の高い品質からオーディオファンには知られたブランドだが、一般の認知は決して高いとはいえない。オラソニックのように知る人ぞ知るというブランドやメーカーは多数ある。高品質だが、一般の認知度が低いブランドやメーカーの商品を売り場で提案し、お客への情報発信を行うのも売り場の大事な役割だ。
卵型というユニークな形状とハイレゾ音源に対応した自社開発のBluetoothモジュールを搭載し、音声圧縮フォーマットでは高音質のaptX HDやLDACにも対応したIA-E55BT。パソコンのデモ機による試聴体験やBluetoothスピーカーコーナーでのデモなど、多くのお客に体験・体感の機会を与え、情報発信に努めたい。
チューニングモデルをMakuakeに出品し、2周間で目標達成
同社では冒頭に記述したIA-BT7のチューニングモデルを、10月4日からクラウドファンディングのMakuakeに出品。中音域に広がりを感じさせ、声がハッキリと聞き取れるようにした“for Vocal”と、ハンマーで叩いた弦の倍音成分も表現して豊かな音色を再現する“for Piano”の2つのモデルだ。
支援日は12月2日までだが、出品後2週間で目標金額に達成した。今回の出品はテストマーケティング的な意味が大きいと同社では話すが、より多くの人にオラソニックの品質の高さを知ってもらいたいという考えも含まれているのだろう。海外メーカーの参入が多いオーディオ分野で、日本のメーカーとして自社開発にこだわる同社は、今後もさまざまなチャレンジをしていく考えだ。