ロンドン発のデジタルガジェットショップが東京・銀座にオープン ディスプレイとヘッドホンでの視聴で機能や使用シーンを紹介
デジタルガジェットの体験型セレクトショップ
12月4日、東京・銀座の阪急メンズ東京1階にデジタルガジェットショップ・SMARTECHが3カ月ほどの期間のポップアップストアとしてオープンした。SMARTECHは2016年にロンドンで設立されたデジタルガジェットの体験型セレクトショップ。そのコンセプトは「The Destination for Innovation」 (イノベーションの先端)で、新しいテクノロジーやスマートな機能、優れたデザイン性を持つ商品を世界中から集めている。
現在、欧米の百貨店内にインショップとして出店。11月19日から24日までの期間限定で大阪・阪急うめだ本店に出店し、12月4日から東京の阪急メンズ東京での出店となった。アジア圏では日本が初となるが、中国でも出店予定という。ターゲットは20~30代で、ファッションやテクノロジーに関心のある層。百貨店のインショップ出店ということからも、それなりの経済的余裕がある層といえそうだ。
販促物やPOPを置かず、動画と音声で商品を紹介
オープンしたショップはエントランスと隣接した位置にあり、木目調の展示台を使用。商品説明のPOPやパネルなどは一切ない。展示商品1台にディスプレイとヘッドホンが1台ずつ配置され、商品の機能や使用シーンなどは、このディスプレイとヘッドホンで視聴するという仕組みである。
モニターで再生される動画は日本語でなかったり、日本語のテロップがないものもある。仮にセルフだとしたら単なるショールーム以外の何物でもないが、実際には商品説明のためのスタッフが数名おり、接客や説明にあたるという。ほぼすべての商品が体験可能で、POP等が一切ないことからお客は事前情報がないまま、体験を通してその価値を自ら判断するということになるわけだ。
展示・販売されている商品は前述のとおり、世界中から集められたデジタルガジェット。少数のリアル店舗で販売されている商品もあれば、AmazonなどのECサイトのみで販売されている商品もあり、日本で初披露となる商品もある。いくつかの商品を紹介しよう。
コーヒーやカクテルの泡に植物由来のインクでプリント
イスラエルのスタートアップであるripples社のRIPPLE MAKER AMは、天然由来成分のインクでコーヒーやカクテルなどの泡にメッセージやコンテンツがプリントできる商品。数年前に話題になったラテアートとは異なり、泡にプリントする。この泡に書かれたコンテンツをリップルズではベブトップ・メディアとして新しいコニュニケーションやブランディングの手法として展開している。
イギリスのKino-mo社の3Dホログラムサイネージ HYPERVSNは、作成したコンテンツをネット経由で投影機に送って投影すると、何もない空間に3D映像が浮かび上がるもの。ただ浮かび上がるだけでなく、色や動きも自由に設定できる。3Dホログラムは誰もが見入ってしまうため、サイネージとしては非常にインパクトがある。
ノートに記述した内容をすべてデジタルデータで転送
NeoLAB社のNeo smartpen M1は、専用ノートに書いたものをすべてデジタル化する商品。録音もでき、データはスマホのアプリで確認できる。ノートに書いた手書きの文字をテキストデータに変換することも可能だ。
オーストラリアのnura社のNuraphoneは、Bluetoothワイヤレスヘッドホン。単なるヘッドホンと思いきや、人それぞれの耳の聞こえ方に合わせて最適な音を生成する。最初の使用時に専用アプリをスマホにインストールしてセッティングを行うと、ヘッドホンから音を発し、その返ってきた音で装着した人の感度を測定。その感度に合ったバランスで音を生成するという仕組みだ。
カメラ内蔵サングラスで動画を3Dで再生
SNSアプリ Snapchatを展開するSnap社のカメラ付きサングラスSpectacles の3代目モデルとなるSpectacles3は、サングラスの左右にカメラを内蔵。サングラスをかけていながら静止画や動画を3Dで撮影できる。撮影した画像や動画はWi-Fi経由でスマホに転送可能で、SnapchatやInstagramでシェアすることが可能だ。
情報がないために興味を掻き立てる側面も
SMARTECHの展示手法は、家電量販店とは明らかに異なる。ディスプレイとヘッドホンで商品の解説は行われているものの、一見すると、商品に関する情報は皆無だ。前述のポケトークもそうだ。家電量販店では専用什器やステージ、エンドなどを活用した展示演出が行われているが、SMARTECHでは統一の台座に商品がポンと置かれているだけ。それのみである。どのような商品なのかの説明パネルも販促ツールもない。
だが、時間が経つうちに気がついたのは、そこに展示された商品そのものの存在感だ。販促物やサインなどが商品の周囲にないということは、否が応でも商品そのものがクローズアップされる。そして、自然と手に取ったり、ディスプレイを見たりして、その商品が何なのかを知ろうとする。ディスプレイに映し出された動画を見ると、各商品の特徴や使用シーンが分かり、商品に対する興味が一層掻きたてられた。
情報をあえて出さずに商品のみを展示する手法は、競合商品を置いていないために商品比較の必要がないからといえよう。また、生活必需品ではないために、興味を感じそうな層にアピールできればよいという割り切りもあるのかもしれない。
デジタルガジェットというと、割と情報系の商品に敏感で、新しもの好きが多いイメージがある。家電量販店でもこれらの商品を扱っていないわけではないが、展示している場所はカテゴリー別に分類された売り場の中。であれば、SMARTECHの展示のように、何か分からないけど今までに見たことがない商品が発見できる売り場を作ってもよいだろう。
店舗には来店の目的を持ったお客と、特に目的を持たずに訪れるお客がいる。後者に発見を促し、来店することでの期待感を持たせる。そんな売り場づくりにSMARTECHの展示手法は参考となるのではないだろうか。