ハイアール流サービスに見る高級家電ブランドを売る秘訣

中国のリサーチ会社、中怡康のデータによると、2019年1～9月の中国家電市場全体の販売額は6,527億元（約10兆2,735億円）で、前年対比6.82%下落した。多くの商品部門の売上が減少したが、高級ゾーン商品は全く違う様相を呈している。

たとえば白物家電では、2019年1～9月の間、オフライン市場において、冷蔵庫と洗濯機の高級ゾーンとされる、12.6万円以上の冷蔵庫、および8万円以上の洗濯機の販売額は、前年と比べ、それぞれ6.1%と19.1%上がった。

この内、冷蔵庫は高級ゾーン商品の比率が市場全体の28.5%を占め、前年比2.2ポイントアップ。洗濯機は高級ゾーン商品の比率が市場全体の3割を突破し、前年を5.5ポイント上回る、33.4%に達した。中国家電市場では、いま、高級ゾーンが顕著に伸びている。

ハイアールのCasarte

成長している高級ゾーン製品の中でも、特に牽引役となっているのが、ローマの皇帝カエサルにちなんだ名前とされるハイアール傘下の高級ブランド「Casarte（カサルテ）」だ。ハイアールスマートホーム社の2019年半期決算によると、中国国内の1万元（約15.8万円）以上の冷蔵庫洗濯機の市場で、Casarteのシェアは50.4%。前年比1.9ポイントアップで、国内高級家電市場のトップに君臨する。

エアコン市場においても、長年外資メーカーに寡占されていた高級ゾーンを打破し、中怡康の2019年の統計データで、1.5万元（約23.6万円）以上の家庭用エアコン市場で、Casarteは40.63%を占める。なお、2位以下は三菱電機が17.71%、3位の格力（グリー・エレクトリック）が14.30%、4位の大金（ダイキン工業）が11.64%だ。中国で国産のCasarteを選ぶ人が年々増えている傾向が表れている。

この増加の秘密は何だろう。母体となるハイアールが全世界において知名度が高まり、コマーシャルや様々なテレビ番組に姿を見せ、注目されていることももちろんある。だが、最も大きな理由は「サービス」だと筆者は考える。

五人の金の花

本誌2019年秋号の本連載で紹介した訪問営業は、各地の集客プロモーション活動で重要な役割を果たしている。筆者は訪問営業の企画や指導に携わったが、どの量販店に行っても、みな積極的に対応してくれて大いに助かるのがハイアールの販売員だ。彼らは普段から似たような営業を会社から要求されていて、訪問営業に馴染みがあり、プロモーション活動にこころよく応じてくれた。

そのハイアールが抱える優れた販売員達の中でも、「五人の金の花」と称される特別に優秀な五人の女性がいる。訪問営業中に、彼女達に会う機会があった。忘れもしない、2019年11月11日に文峰電器が大きなキャンペーンを実施したときだ。筆者はそのプロモーション活動の企画や、指導に携わっていたので、彼女たちの仕事ぶりをすぐ近くで垣間見ることができた。

彼女達は江蘇省南通市の文峰電器でハイアール商品を販売している。特に高級ゾーン商品の販売が得意で、チームワークも良い。バラバラに動くのではなく、一人のお客様に一番良いサービスを提供するために、五人で協力し合い、売上は五人で均等に分け合うスタイルを採っている。

お客様を感動させる！

五人の金の花の働く現場は、時に売り場で、時に町の中で、時に顧客の家となり、ニーズのあるところにはどこにでも足を伸ばす。売りたい製品をユーザーの一番近いところに運んで体験してもらうことで、製品の良さを認めてもらい、最終的に販売につなげている。

高級ゾーン商品を売るためには、まず商品の良さをお金持ちの消費者に伝えなければならない。

そこでハイアールの体験式サービスだ。メインツールは、水を使わず空気で洗うエアウォッシュ機能搭載のCasarteの洗濯機。通常、中国の洗濯機の売り場では商品をただ販売するのではなく、まず洗濯を体験してもらう。エアウォッシュの場合、洗濯するのは、普段クリーニングに出さないとメンテナンスの難しいダウンコートや、毛皮のコート、高級ブランドのバッグなどだ。売り場に来たお客様や、社員の連れてきた親友などから、これらのクリーニングを無料でみんな受け付けている。

効果は一目瞭然だ。ぺたんこだったダウンコートもふわふわになる！これに感動しないお客様がいるだろうか！

あの手この手の体験提案

Casarteの洗濯機売り場では、お客様の洋服を常に何十着も無料で預かっている。これにより、お客様が再び来店する切っ掛けにもなっている。

また、定期的に材質の特別な衣類の洗い方や、メンテナンスの仕方などを教える教室も開催し、人気を集めている。

店外では、常に高級住宅地にテントを張り、住民に無料の洗濯サービスを行う。高級ファッションショップとも連携し、ショップのVIP客に無料クリーニングサービスを提供している。こうした体験から製品の購入に繋がるケースが少なくない。

この他にも、潜在顧客を抱える銀行や、保険会社、不動産会社などとも連携し、VIP客に喜ばれるサービスを提供することで、既存客の満足度を高めると同時に商品の販売に繋げている。こうしたお客様の中には、高額な洗濯機を2台、3台とまとめて購入する人も大勢いるという。

体験が有効なのは洗濯機だけではない。10万元（約156万円）の新製品の冷蔵庫を買ってくれたお客様もいる。

彼女が金の花になった理由

最後に具体的な例を1つ挙げよう。「金の花」の一人、張さんのサービス例だ。

数年前にCasarteのワインクーラー型の冷蔵庫（アイスバー）を買ってくれたお客様が、彼女に輸入品の冷蔵庫と洗濯機について尋ねた。このお客様と長くコミュニケーションを維持している張さんは、彼が別荘を買う予定だと聞き出し、きっと他の家電も必要になるはずだと推測した。

しかし、重ねて話を聞くと、お客様の別荘はまだ内装中で、家電は急いで必要というわけではなかった。しかも、他にも家電量販店で働いている知り合いがいて、最初は提案を断わられてしまった。

そこで張さんは、折を見て同僚やメーカーの営業担当と共に、果物や輸入品の洗剤などのお土産も持って、このお客様の家を訪ねた。

洗濯機のフィルターを洗浄し、家電の使用方法などを教えた。ちょうどお客様の奥様が妊娠中だったので、大人と子供の洗濯物が分けて洗えるCasarteの全自動双子洗濯機を薦めた。一台にドラムが縦に2つ搭載されている製品だ。

お客様は張さんのサービスに大変感動し、彼が所持する2軒の家のために、合計28万元（約440万円）分の高級家電を張さんから購入した。お客様は「私たちが買ったのは商品ではなく、そのサービスだ。その仕事に専念する精神に感動した」と高く評価してくれたと言う。

Casarteの購買層には、お金持ちの企業家が多いそうだ。そのレベルのリッチなお客様は、価格より価値、商品よりサービスを重視する。そのことがよく分かるエピソードではないだろうか。

ハイアールの販売員は今日もコツコツとサービス向上の道を歩んでいる。今後も彼らがより良い製品とより良いサービスを提供するよう期待したい。家電Bizの北京支局員としては、中国企業ハイアールの活躍は誠に鼻が高い。頑張れ！世界のハイアール！

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Haier （ハイアール）