急成長するポータブル電源 認知拡大が普及のカギ(JVCケンウッド)


アウトドアや災害時に活躍する持ち運べる蓄電池として、ポータブル電源が注目されている。店頭での販促施策や今後の普及の課題などについてJVCケンウッド マーケティングG 川上一紀チーフに話を聞く。

ポータブル電源(ポータブル蓄電池)が活気づいている

バッテリーの性能が向上したことで、蓄電池の小型・軽量・長寿命化が可能になり、車載でアウトドアに持ち出したり、災害などに備えて室内に設置したりしやすくなったことが背景にある。ポータブル電源は、あらかじめ充電して電気を溜めておくことで、電気の通っていない場所に持って行って電化製品を使ったり、停電時に家電に電気を供給したりできる。

キャンプ場でのLEDランタンの充電や、屋外イベント時の扇風機や照明、調理機器などの利用、車中泊の際に電気毛布で暖を取る、庭でのDIYで電気ドリルや電ノコを使うといった用途はもちろん、万が一の停電時にもスマートフォンの充電や、テレビやラジオへの給電に使える。

特に趣味や仕事でドローンを使う場合、飛行中に予備バッテリーを充電する目的で必須の周辺機器になりつつある。このほか、夏場の工事現場では、空調服のファンの充電にも用いられ、BtoB、BtoCの両面で注目されている。

徐々に認知が広がる

JVCケンウッドの川上氏は次のように述べる。

「スマートフォン用のモバイルバッテリーが広く認知されており、安置型の蓄電池も太陽光発電システムなどを通じて少しずつ利用者が増えています。ポータブル電源はこの中間にあるものとして、徐々に認知されつつあります。

まだ新しいジャンルの製品なので市場規模などはデータがなくてよく分からないのが実態です。ただ、YouTubeでもアウトドアに持ち出して利用している映像が多く上がっています。バーベキュー等に代表されるライトアウトドアや、災害対策などで導入する人が多いようです」。

JVCケンウッド メディア事業部 国内営業本部 マーケティングG チーフ 川上一紀 氏

ポータブルと言っても、カバンに入れて持ち歩くモバイルバッテリーに比べれば、かなり大型で重い。屋外に持ち出すときは自動車に積んで移動が基本と考えてよい。AC電源への給電のほか、USBやシガーソケットの出力端子も備える。入力はほとんどが家庭用のAC電源だ。放電耐性が高く、一度充電すれば、数カ月間放置しても利用できる。

屋外で電気を利用する場合、ガソリンを用いる発電機と比べ、安全性や運転の静音性に優れるが、当然ながら蓄電している分を使い切ると再度充電が必要だ。サーバーなどに用いられるUPS(無停電電源装置)とは競合しない。ポータブル電源は正弦波での給電に対応するものも多いが、瞬電に対する保証をしているものはなく、常時何かと繋げての運用は想定されていないからだ。

半年で発売にこぎ着ける

家電量販店では災害対策売り場やアウトドア用品売り場に置かれることが多い。蓄電池売り場や、照明機器売り場、自動車と相性が良いことからドライブレコーダー売り場に置かれることもあるようだ。

「当社は、2019年10月に電池容量の異なる3つの製品を発売しました。ある家電量販店の方からポータブル電源のニーズが高まっていると教えていただいたのが切っ掛けで、元米アップルのエンジニアがシリコンバレーで設立したJackeryという企業と共同で開発しました。企画から発売までわずか半年のハイスピードでした。

国内の大手メーカーの参入が少ない分野で、海外メーカーがECサイトを通じて販売しています。ユーザーの間では国内ブランドに寄せる信頼性も大きな需要となっており、引き合いをいただいている状況で、当初の予想以上に売れています」と川上氏は語る。

製品名は「BW-RB6」「BW-RB5」「BW-RB3」で、RB6とRB5は筐体のサイズやデザインが同一だ。充電池容量は、RB6が174,000mAh/626Wh、RB5が144,000mAh/518Whで、それに伴って充電時間なども異なる。AC出力は2口。RB3はひと回り小さく、充電池容量も86,400mAh/311Wh。AC出力は1口だ。

RB6とRB5は本体サイズやデザインが同じ
RB3はひと回り小さく、AC出力の数が1口

いずれも持ち運びに便利な折りたたみ式のハンドルを備える。バッテリーの残量などが見やすい液晶画面を搭載し、AC出力のほかに、USB Type-A出力とシガーソケット出力を備える。入力はDCのみで、ユーザーからは太陽光パネルからの充電に対応してほしいとの声が多く、今後の製品で検討していくという。

バッテリーなので劣化は当然するが、満充電よりも50~60%程度の充電のほうが放電耐性は高くなり、長く保存が可能だ。非常時用に待機させておく場合、半年に一度くらいの頻度で通電させると長持ちできる。継ぎ足し充電は問題ない。なお、電気料金の安い、夜間に充電するのがオススメだ。

海外メーカーに比べた優位点は、やはりアフターにあり、何かあったときにすぐに交換などの対応ができるサービス網は、エンドユーザーはもちろん、販売店からも好評だと言う。ポータブル電源は大型のリチウム電池を搭載しており、処分する際も回収が必要なので「破棄のときに処分方法で迷うことがありません」の一言はクロージングの決め手にもなる。

利用場面の想起で認知拡大

販促施策として、POPやパンフレットなどの展示物を充実させた。発売当初は「いつでもそばに、コンセント。」をキャッチにしていたが、年明けから「水と空気の次に欠かせないもの」という強いコピーに替え、防災やアウトドアをイメージする写真をあしらって、利用シーンや重要性が想起しやすいよう工夫した。

また、JVCのWebサイトやYouTubeに利用シーンが具体的にイメージできる15秒の短い動画を用意し、店頭でも流せるようにしている。

JVCのWebサイトに使い方のイメージが湧く15秒動画も用意する

「まだまだ認知の低い商品なので、店頭では使い方の提案が重要です。防災やアウトドアの切り口は比較的分かりやすく、日常での使い方も提案次第と思います。

当社の商品に限定した展示ではないのですが、水害に遭った地域で、自店舗の被災写真と一緒にポータブル電源を並べ、『あって良かった家電製品ベストスリー』みたいな展示で訴求していた店舗もあったそうです」と川上氏。

被災の記憶の生々しい地域はもちろん、防災意識を高めたい地域でも、リアリティを伴う訴求は強い。東日本大震災の起きた3.11前後は、ぜひ防災コーナーを設けて、ポータブル電源も提案したい。