PaidyがAI顔認証導入による不正利用防止の取り組みを発表


事前登録やクレジットカード不要で、携帯電話番号とメールアドレスのみで利用できる決済サービス「Paidy」が、2020年の年初に発生した不正利用対策のため、4月中旬から新しいシステムを導入すると発表した。

「Paidy」の不正利用による詐欺行為の再発を防止

Paidyが被害に遭った不正利用は、悪意ある者がフリマアプリを悪用することで落札者にフリマアプリとECサイトの2つの請求が届くというものだった。

Paidyは3月12日、この不正の再発を防止するため、以下の3つの取り組みを実施すると発表した。

①AI顔認証による本人確認の実施
②AIによる不正検知システムのレベルアップ
③EC加盟店の不正対策チームとのより一層の連携強化

Paidyは本施策によって、ユーザーは従来以上に安全にオンラインショッピングが楽しめるようになるという。現在、「Paidy」を導入した家電量販企業のECサイトは、一時的に「Paidy」の利用ができなくなっているが、この取り組みにより、再び利用が可能になるよう各企業と連携をとっているとのことだ。

運転免許証を使用したAI顔認証

3つの施策を少し詳しく紹介する。

まず、①「AI顔認証による本人確認の実施」は、他者または架空の個人情報などによる不正取引を防ぐために、eKYC(electric Know Your Customer)によるオンライン上で完結する本人確認機能を実施するというもの。本人確認には、Liquidが提供する、生体認証クラウドで培われた高精度な画像照合率を誇るAI顔認証「LIQUID eKYC」を利用する。

ユーザーは「Paidy」アプリ上で運転免許証と顔写真を撮影して本人確認手続きを行うことにより、アカウントのアップグレードを完了する。これにより、C2Cマーケットプレイスを利用した「Paidy」不正利用において、売り手の本人確認が徹底されることになり、強力な再発防止策にする仕組みだ。

Paidyは不正防止に向けてAI顔認証を導入する

さらにユーザー自身による月々の予算設定を可能にした。ユーザー自身が利用する金額を管理できるため、日頃からの使い過ぎが防げる。

なお、運転免許証を撮影しての本人確認手続きは初回のみとなり、次回からは不要。運転免許証以外の公的書類は使用できない。ただ、これも現時点での話であり、今後の対応については検討していく方針という。

「Paidy」のeKYC仕組みイメージ

不正取引を未然に防ぐため、不正パターンを事前に検知

②「AIによる不正検知システムのレベルアップ」は、不正取引に関するデータを抽出してAIに反復学習させることで、不正検知性能の精度をコンスタントに高めていく取り組み。不正パターンを発生時点のみならず、発生前に検知できるようになるため、不正取引を未然に防げるという。

③「EC加盟店の不正対策チームとのより一層の連携強化」も不正検知性能を向上させる取り組みだ。具体的には、他の決済手段を使って発生した不正な取引に関するデータを加盟店から共有してもらい、「Paidy」の不正検知システムにそのデータを学習させる。

同社では、3月12日時点において、今般の詐欺行為に係る二重請求は一切発生していないことを確認済みとのこと。冒頭に記した通り、「Paidy」は事前登録やクレジットカードなしで決済可能なところがサービスの魅力だが、今回の本人確認の仕組みにより、「Paidy」アプリ上で運転免許証と顔写真の撮影による事前の手続きが必要となる。

セキュリティ強化で企業の「Paidy」導入を後押し

事前登録なしの手軽さよりも、なりすまし防止の安全性を重視したと言えるだろう。ひと手間増えてしまったとはいえ、一度手続きをすれば、以降は手軽に決済できる点は変わらない。最新技術を用いて不正防止対策を強化した点は、「Paidy」の導入企業にとっても自社とユーザーの双方の安心を高めるという意味で評価できる。

家電流通のECサイトでの導入からわずかの時期で、不正利用によるも詐欺行為の発生という予想外の事態となったが、Paidyの対応は早く、今回の取り組みでセキュリティはさらに強化される。

もともと「Paidy」は、ECサイトにおけるユーザーの利便性向上と企業の売上拡大、利用率アップを兼ね備えた決済システムだ。『災い転じて福となす』の言葉のように、今回の取り組みで、ユーザーも導入企業もより安心して「Paidy」を利用できるようになる。導入を検討している企業にとっては、導入の大きなモチベーションとなりそうだ。

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