新型コロナ流行の中で迎えたGWの都内家電量販店


連休明けの5月7日、緊急事態宣言の期間延長が政府から発表された。緊急事態措置の詳しい内容は別の報道に譲るとして、ここではゴールデンウィーク期間中の都内家電量販店の様子を振り返り、家電量販業界の防疫対策をレポートする。

いま買えないと困る家電の販売

連休中は天気の良い日が多く、家電量販店に足を運ぶお客も少なくなかった。自粛疲れで家からは出たいが、そうは言ってもまだ遠出はできない。そんな心理もあって、例年と変わらない集客になった店舗もあると聞く。

都心部の家電量販店を見た限りでは、人でごった返すというほど混雑していた印象はない。とはいえ、4月に緊急事態宣言が出された直後の緊張感に満ちた街の空気からは、明らかに緩みが感じられた。

そんな中、神経質なほどの注意深さを感じたのがヨドバシカメラだ。同社は4月14日から東京や大阪の都市部の店舗を休業していたが、4月24日から1店舗を除いて営業を再開した。とはいえ、一部の売り場を引き続き休業にするなど、「いま買えないと困る家電の販売のみ」に注力した格好だ。

ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaはゴールデンウィーク前に、入館制限しながらフロアの一部を営業再開した

ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaでは、来店客が入店時に足元の目印に沿って、一定間隔を開けながら並ぶ。入り口では従業員が「何を買い求めに来たのか」と聞く。目的の売り場に真っ直ぐ向かえるよう誘導しつつ、営業していない売り場の場合は遠慮してもらう。

休業する売り場は、カメラ、時計、ゲーム/おもちゃ、映像音楽ソフト、アウトドア&スポーツ、スーツケース、ビジネスバッグ、ネット回線契約、スマホ契約などのコーナーで、カラーコーンとコーンバーを使って、休業中の売り場の道線を区切り、照明も落としていた。それ以外でも、シェーバー売り場など、休業の案内が掲示されていないコーナーも一部休業していた。

同時に急ぎではない購入客には、ネット通販のヨドバシ・ドット・コムの利用を促すなどの取り組みも行っていた。

ヨドバシカメラの生活家電売り場は、急いで買い替える必要があるようなお客のみを案内していた

ヨドバシカメラで見かけたもので興味深かったものとしては、入り口に置かれていた、手をかざすと消毒液を噴射する自動手指消毒器にも触れておきたい。ノズルを指でワンプッシュする操作は片手ではしづらい。カバンなどの荷物を手に持っていると両手を空けられず、つい面倒になりがちだ。手をかざすだけで赤外線センサーが感知してくれるなら、片手が空いていれば消毒液を受け取れる。同店で利用している商品は、キングジムの「TE500」だったが、商品の紹介にもなっていて良いと感じた。

圧縮陳列の店舗ほど三密解消には神経質

一方、ビックカメラ 池袋本店では、店内入口の前に長机を出し、来店客にアルコールによる手の消毒と、検温、マスク着用などの依頼を徹底していた。体温は手首で測り、37.5℃以上の場合は入店を断っている。

ヨドバシカメラでもそうだったが、店員はマスクだけでなくフェイスシールドを着用。レジ前は一定間隔を空けて並ぶよう誘導するなど、三密解消に留意している。

このほか、ビックカメラでは営業時間を4月25日から5月6日まで、11:00~18:00に短縮する措置も取っていた。

ビックカメラ 池袋本店の店内入口の様子

池袋ではビックカメラの目の前にヤマダ電機の日本総本店も居を構えるが、もともとビックやヨドバシほど陳列を圧縮せず、店内の見通しが良いこともあり、入場時の検温などはなく、比較的入りやすくなっている。消毒用アルコールは店内随所に設置して、お客に自主的な利用を促す形だ。

それでも従業員に緊張感がない訳ではなく、マスク姿で暇さえあれば什器や展示機を拭いている姿が目についた。当初は一部のレジだけだった飛沫防止用のビニールシートは、全てのレジに導入され、相談カウンターなどにも張られていた。

スマートフォン売り場では来店客が展示する端末に触れる機会が多いため、拭き取りのメンテナンスも特にこまめ

体温計が品薄、ミシンの売上が増加

4月16日の記事では需要の増している商材として、リモートワーク向けのウェブカメラやヘッドセットのほか、ゲーム機やゲームソフトが在庫切れとなっていることを紹介した。これらはGW中も在庫が戻ることはなく、アクションカムやネットワークカメラなど代用できる製品が販売を伸ばすことになった。

実は前回の記事でひとつ触れ忘れてしまっていたのだが、新型コロナの流行によって品薄になった商品には体温計も挙げられる。標準型の電子体温計だけでなく、婦人用体温計や小児用体温計も、早い段階から在庫切れとなった店舗が多く、GW中も入荷次第の提供という状況だった。店舗によっては体温計の売り場が消えて、別の商品の売り場になっているケースもあった。

体温計も品薄になった

このほか、アベノマスクが話題になり始めた頃から、ミシンの売上がじりじりと伸びてきている。最近はミシンを使ったことのない若者も増えているので、ミシン売り場で布マスクの作り方を展示して難しくないことをアピールする店舗もあった。新型コロナの影響による需要を正しい形で捉えて、お客に気付きを与える良い提案だと感じた。

ミシンを利用した布マスクの作り方の展示。QRコード連動でスマホでも確認できるようになっている

店舗によっては、GMS商材の売り場でマスクを販売している。3、4月とマスクの流通が滞り、ドラッグストアやスーパーでは開店前から並ばないと買えない商品になってしまっていたが、GW前後から都内のどこでも販売する光景が見られるようになってきた。

品質を気にする消費者が増えたこともあって、販売業者側で品質保証する取り組みは消費者に喜ばれているようだ。

日用品コーナーでマスクを提供する店舗も徐々に増えている

流通業は人々の生活を支える存在

流通業は人々の生活を支えるためになくてはならない存在だ。流通業だから感染の危険が低いということはまったくない。どれほど対策してもリスクがゼロになることはないし、実際、家電量販業界でも感染者の報告は複数出ている。従業員や従業員の家族の中には、口に出さなくとも不安を抱えている人も少なくない。それでも販売現場に立ち、商品を仕入れ、配送するのは、自分自身の生活も含め、人々の生活を破綻させたくない使命感を共有しているからだ。

その使命感を少しでもフォローするため、流通企業への教育・コンサルタントの専門会社の株式会社クロスと家電Biz編集部の合作で、コロナウイルス対策の動画コンテンツを無料で提供している。

再掲となるが、ご覧になられていない方はぜひ活用していただきたい。

小売業のコロナウイルス対策 - 従業員やお客さまから感染者を出さないために

小売業向けの新型コロナウイルス対策を13分にまとめた動画を公開している。