上新電機の2021年3月期は売上高、利益ともに過去最高を記録 ノジマは減収ながら経常利益は前年比2.7倍に拡大


3月を決算月とする上新電機とノジマの2021年3月期決算が発表された。5月7日に記事をアップしたヤマダホールディングスとケーズホールディングスと同様、上新電機とノジマの業績も非常に好調に推移した。

上新のゲーム・玩具売上は23%増で売上高構成比は14.3%に

上新電機の2021年3月期連結売上高は4,491億2,100万円で前年比108.1%と伸長した。売上高に占める店頭販売額は同105.2%で、コロナ禍によってECの売上高は同125.5%と拡大。売上高に占めるEC比率は前年の13.8%から16.0%となった。

商品別売上高では暖房機が前年130.4%、理美容・健康器具が同115.6%、テレビも同112.3%と伸長。テレワーク需要によってパソコンは同107.0%、パソコン関連商品も同109.2%と増加した。非家電商材では巣ごもり需要からゲーム・模型・玩具・楽器が同123.3%と大きく伸長し、売上高の14.3%を占めた。

ゲーム・模型等の売り上げは641億7,800万円で前年から約121億円の増収となった

売上高の前年8.1%増に対して売上原価は同7.0%増で、粗利益額は前年2桁増となる同11.5%増。粗利益率も前年の24.2%から0.8ポイント増となる25.0%に上昇した。販管費は同104.3%で、この結果、営業利益は165億5,000万円で同184.3%となり、営業外収益の増加と営業費用の減少で経常利益も同186.0%と大きく伸長した。

上期は粗利益率がダウンしたが、下期は2ポイント以上のアップで通期の粗利益率は25.0%

2021年3月期は下期に大阪・日本橋地区の店舗再編を実施し、その他の店舗閉店にかかる費用を特別損失として計上。親会社株主に帰属する当期純利益は同163.8%となった。

営業利益率と経常利益率はともに前年から1.5ポイントのアップ

2021年3月期の売上高や営業・経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも過去最高を記録となった。

2022年3月期は減収減益予想だが、中経は上方修正

2022年3月期の連結業績については、売上高が前年比93.5%の4,200億円、営業利益と経常利益はともに同72.5%の120億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同90.2%の80億円と予想している。これは2022年3月期から適用となる会計基準の変更による影響とコロナ禍での経済環境や消費マインドの低下、緊急事態宣言による時短営業や休業の影響を考慮したものである。

2022年3月期は中間、通期とも減収減益を予想。他社と比べて慎重な印象だ

また、上新電機では2020年8月に、2021年3月期~2023年3月期にわたる3カ年の中期経営計画を発表していたが、この計画修正も発表。2023年3月期における計画を上方修正した。同期の売上高は当初の計画に対して150億円増の4,500億円、営業利益と経常利益はいずれも50億円増の165億円としている。

ノジマの粗利益率は2.8ポイント増の30.3%にアップ

ノジマの2021年3月期連結売上高は5,233億2,700万円で前年比99.9%の減収となった。しかし、売上原価は同96.0%で、粗利益額は同110.2%となる1,588億1,400万円と伸長。粗利益率は前年の27.5%から30.3%となった。この粗利益率は現時点で決算を発表した上場家電量販店4社の中で最も高く、唯一の30%台である。

粗利益率は直近の3年間で7ポイント近くアップ。この1年間も高いレベルで推移した

売上高は減少となったが、家電販売が不調だったわけではない。同社の連結業績は売上高の約46.8%を占めるデジタル家電専門店と約34.7%を占めるキャリアショップ、約8.9%のインターネット事業、約7.6%の海外事業、約2.0%のその他の5つのセグメントから構成されている。

デジタル家電専門店については売上高が前年比113.7%と伸長しており、同セグメントの経常利益は同150.8%と拡大しているのだ。また、他のセグメントもその他を除いて減収となったが、いずれも経常利益では増益となっている。

ノジマの連結子会社は26社で、持分法適用関連会社はするが銀行を含めて2社

販管費については前年比102.8%と増加した。人件費を削減したものの、広告宣伝費は約50億円増加し、販管費比率は前年の23.2%から23.9%にアップ。他社の販管費比率はダウンしている中、逆に増加となった。

経常利益は約2.7倍、当期純利益は約3.3倍に拡大

営業利益は338億2,600万円で前年比149.8%に拡大した。2020年6月26日にスルガ銀行が持分法適用関連会社となったことから、持分法による投資利益285億1,000万円を営業外収益として計上。営業外収益は前年の約10倍に増加し、経常利益は646億4,700万円で同266.9%と大きく伸長。親会社株主に帰属する当期純利益は同332.0%となった。

第2四半期にスルガ銀行の投資利益形状により、経常利益率は12.4%で前年から7.7ポイントもアップした

スルガ銀行の利益が上乗せされたことで業績は大きく拡大したのは事実だが、同銀行の利益を除いても営業利益や経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高を更新したという。

2022年3月期の連結売上高は前年比108.0%の5,650億円で、営業利益は同103.5%の350億円、経常利益は同60.3%の390億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同51.1%の270億円と見込んでいる。

営業利益ベースでは増益予想だが、経常利益以降は減益予想となっている

両社とも今期は家電販売では巣ごもり需要の反動を想定しているが、上新は減収、ノジマは増収と異なっている。想定される反動に対して、いかに影響を少なくできるか。各社の戦略に期待したい。