家電量販店の5月売上はテレビやPCが前年割れで6月はさらに厳しい状況か


4月25日から大阪、兵庫、京都、東京を対象として発令された緊急事態宣言はその後、対象地域の拡大や期間延長を経て、6月15日時点で10都道府県が緊急事態宣言下にある。新型コロナウイルスの影響下でも家電量販店の売上高は増加傾向で推移してきたが、コロナ禍2年目となるこの5月はどうだったのだろうか。

ケーズホールディングスの5月売上高は前年同月比92.6%

3月決算では期初に当たる2021年4月の家電量販店の売上高は、各企業によって異なるが前年同月比105~110%となった。昨年の5月は全国を対象とした1回目の緊急事態宣言が発令されていた期間で、今年の5月も地域によっては緊急事態宣言が発令されていた。

緊急事態宣言の通天閣
大阪は新規感染者の急増で医療体制が逼迫。この状況を受けて通天閣は赤色のライトを点灯

このような状況下にあったことと前年の5月は昨対比で大きく伸長した月だったこと、さらに足元では需要前倒しの反動減という側面もあって本年5月の売上高は、昨年同月比で前年割れとなった家電量販企業が多いようだ。POSデータによる月次売上を見てみよう。

ケーズホールディングスの2021年5月の売上高は前年同月比92.6%。2020年5月は同121.9%と伸長したことで、昨対比のハードルが高かった。そのために本年5月は前年割れとなってしまったといえよう。

商品別では、洗濯機が106.5%と前年実績をクリアしたものの、テレビや冷蔵庫、クリーナー、エアコンなどの主要商品は軒並み前年割れだった。4~5月の第1Q累計ではパソコン・情報機器が前年同期比71.1%、冷蔵庫が同98.1%である。昨年の6月売上高は前年同月比140.5%と5月以上に好調だったため、想定内とはいえ、この6月はさらに大きく落ち込みそうだ。

ケーズホールディングスの月次速報
商品別動向では前年に需要が急増したPC・情報機器が落ち込み、洗濯機は2カ月累計で2桁増

コジマも5月はテレビやエアコンが前年割れで洗濯機は伸長

コジマの5月売上高は前年同月比97.1%。2020年5月の売上高が前年同月比119.5%と好調だったため、やはりその反動が現れたという面もある。

商品別ではケーズホールディングスと同様にテレビやエアコン、冷蔵庫などが前年割れで、洗濯機はプラスだった。また、携帯電話は2020年5月が前年同月比65.7%と大きく落ち込んだため、本年5月は逆に121.7%と伸長した。

同社は8月決算で、3~5月は第3Qに当たる。あくまでPOSデータによる速報値だが、同期の売上高は前年同期比109.2%。計画よりは上回っていると推測されるが、昨年の第4Qが好調だっただけに、ここから先の落ち込みをいかに抑制するかが課題といえよう。

コジマの月次速報
コジマでも大型商品の中では洗濯機が好調に推移している

ビックカメラは前年に落ち込んだ分、昨対では2桁増で推移

コロナ禍で特に繁華街での人流が減少し、ターミナル立地の大型店を展開するビックカメラは大きな影響を受けた。2020年8月期で3~5月の第3Qは前年同期比70.2%となり、6~8月の第4Qも89.9%と非常に厳しい状況だった。

前年が大きく落ち込んだ分、3月からの月次売上高は前年同月プラスで推移している。5月の売上高は前年同月比121.6%で、3~5月の第3Qは前年同期比119.6%と2桁増。単体の業績予想では第3Qを同130%と見込んでいるが、月次速報からは厳しい状況といえそうだ。

3月期決算のエディオンも5月の売上高は前年同月比95.6%で前年割れとなった。4~5月累計では前年同期比102.0%だが、2020年6月は前年同月比111.9%と伸長していたため、昨対ベースでの前年実績クリアは厳しそうだ。

ビックカメラとエディオンの月次速報
コロナ禍で集客に大きな影響が出たビックカメラの販売は2桁増で推移しているが、一昨年比では8割程度で復調とは言い難い

新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界経済が落ち込み、回復していく過程で半導体の供給不足が深刻になっているという。一部の家電製品では生産に影響が生じているようで、これから先の動向が気になるところ。だからこそお客に対して丁寧な説明とニーズに合った提案を行い、成約率を高めることが肝心だ。