特別レポート 中国家電市場の今を探る


中国市場には日本で見かけない家電製品が大変多く存在する。特に調理家電は食習慣の違いもあって、日本人にはユニークに感じる商品も少なくない。中国でいま売れている、日本でもイケそうな調理家電を、当社北京支局の範麗嬌がお届けする。

女性を家事から解放せよ 中国で売れている調理家電

中国では、女性は結婚しても仕事を辞めないケースが多く、ほとんどが共働きの家庭になる。そのため、家事は夫婦で分担する家庭が多い。例えば、奥さんが料理を作ったら、旦那さんが食器を洗う。あるいは奥さんが子供の面倒を見ている間は、旦那さんが洗濯するといった具合だ。

もちろん、すべての家庭がそのような理想的な姿とは言えない。旦那さんが仕事で疲れて家事を全くせず、奥さんが仕事も、家事も、育児もしなければならない場合、夫婦喧嘩になりがちなのは日本と変わらない。

問題の裏にはいつもチャンスが潜んでいる。「女性を家事から解放せよ」「女性はもっと自分の時間を作ろう」と呼び掛け、多くの家電メーカーは女性の悩み解決を訴求ポイントにし、便利な家電を次々と開発してきた。今回は日本であまり見かけない、中国で人気の女性が喜ぶ3商品を紹介する。

FOTILE社の水槽式食器洗い機。シンクの右側に食洗機が内蔵されている
Joyoung社の自動洗浄豆乳メーカー。豆乳を短時間で作れ、ケースは自動洗浄
Midea社の野菜炒めロボット。火加減を自動調節して調理する

その1 野菜も洗える水槽式食器洗い機

最初に紹介するのは、中国のキッチン家電の代表メーカーであり、中国で初めて水槽式食器洗い機を開発したFOTILE社の商品だ。

パッと見た印象は少し幅の狭いシンクにしか見えないが、右部分のタッチパネルの「開く」ボタンを押せば、パネルが上に開いて食器洗い機が現れる。三人家族の食器が一度にらくらく入り、手洗いより節水できるという触れ込みだ。しかも、食器だけでなく、水槽の中のカゴを替えれば、果物や野菜が入れられ、残留農薬を超音波照射で分解洗浄できる。洗浄の強さも果物の柔らかさに合わせて選べる。

黒いタッチパネルを開くと食器カゴになっている
カゴを替えれば、果物や野菜などの残留農薬を超音波洗浄できる

食器洗いと果物野菜洗いが、ボタン1つで切り替えられ、水温も自動的に設定できる。食器洗いの時には75℃のお湯、果物野菜洗いの場合は常温の水。非常に便利だ。見た目もスマートで、洗浄しない時にはその上でまな板も使え、余計な場所を取らない。

食器と果物や野菜のにおいが混ざることを嫌がる人も多いため、水槽を完全に分けるタイプも用意されている。そうしたタイプは、野菜や果物用の洗浄機がシンクの左側に設けられている。

上位モデルではシンクの左にも黒いパネルが用意されている

洗浄機が1つのタイプと2つのタイプで、値段は日本円にしてそれぞれ約10万円と約33万円。

これを持てば、奥さんが食器洗いから解放され、もっと自分の時間を楽しめるだろう。もちろん、誰が食器洗いをするかによる喧嘩もなくなるはずだ。

食器と食品を別々に洗浄できるので、より清潔感を保てる

その2 お手入れがラク!自動洗浄豆乳メーカー

中国人の朝食メニューは、地域によって大きく異なる。しかし、近年、健康意識の向上により、朝食にミルク、あるいは豆乳、雑穀豆乳を摂る人が増えてきた。

豆乳メーカーは以前からあったが、古い製品は飲んだときの触感があまり良くない。しかも使った後のお手入れがジューサー・ミキサーと同様に、とてもやりづらい。

そんな悩みを解決する商品として、自動洗浄豆乳メーカーが登場した。メーカーは長年調理小物家電に専念するJoyoung社である。

まず、見た目に高級感が溢れているのも主婦好みだ。操作はとても簡単。最初に好きな食材を本体に入れ、本体裏のケースに水を入れる。水の量を設定し、操作パネルで「豆乳」を選択してスタートボタンを押すだけで良い。

好きな食材を本体に入れ、本体裏のケースに水をセット
操作パネル。水を使う分量を設定し、左から二番目の豆乳を選択してスタート

約30分で豆乳が完成してカップに抽出し、ケースは自動的に洗浄する。モーターが高速回転のわりには静音性が高いのも嬉しい。洗浄は20分掛けて、3つの洗い方で行うので、十分きれいになる。洗った後の水は、本体手前の豆乳を入れたカップとは別のタンクに出てくる。最後にそのタンクの水を捨てて、タンクをざっと水洗いすれば終了だ。

水が注入され、所定の量になると自動的に運転が始まる
豆乳は約30分で完成し、下にあるカップに注入される

でき上がった豆乳は大変まろやかだ。豆乳以外に、離乳食にもなるカボチャスープ、魚丸ごとスープなど様々な栄養価の高い料理もできる。

タイマーが利用できるので、前日に予約しておけば、朝は少し遅くまで寝ていても朝食は素早く用意できる。値段は約3万円。安いとは言えないが、健康のため、時間節約のためと考えると高過ぎもしない。現在中国でよく売れている商材だ。

豆乳を注いだあと、自動的にグラインダーのクリーニングが始まる
洗浄に使った水はカップとは別のタンクに入る

その3 火加減上手野菜炒めロボット

中国では一人っ子政策により、80年代以降生まれの中には、親に甘えながら成長してきたために料理の苦手な人が多くいる。また、仕事が忙しくて料理を作る時間が取れない人も多い。そんな背景もあり、近年外食業や、料理のデリバリーが急成長してきた。

しかし同時に、食品の安全問題もしばしば報道され、調理は自分の選んだ食材で、自宅で作りたいというニーズも根強い。そこで誕生したのが野菜炒めロボット。要は自動で調理する電器鍋である。メーカーは東芝ライフスタイルの親会社であり、世界の企業売上TOP500に入っているMidea社である。

ガスコンロや、IHクッキングヒーターと違い、鍋の底3つの箇所で均一に加熱することによって、少ない油かつ短時間の調理でも、よく熱が通って焦げにくい。

メニューを選んで食材を入れれば、あとは自動で調理してくれる。出来上がる時間はカウントダウンされ、時間になると「ピッピッ」と電子音で知らせる。

まずは液晶パネルから中央の菜譜(メニュー)を選択
肉類、海鮮、野菜、スープなど8つの分類が表示されるので、メニューをたどっていく
メニューを選択すると、必要な材料、調味料の分量が表示される
表示のとおりセットして、あとは蓋を閉めてOKボタンを押すだけ

料理で一番肝心なところは火加減だ。この製品なら火加減の分からない料理下手な人でも、火加減を気にしなくても料理に失敗しないはず。ちなみに、筆者も一台持っており、日々便利さを実感している。油の臭いも気にせず、らくらく調理できる。

調理中は完成までの時間が表示され、完成すると電子音で知らせる

以上、中国で流行っている女性にとって非常に嬉しい3つの調理家電を紹介した。これからも、女性にやさしい調理家電がどんどん登場することを心から願っている。