「ビックカメラ 日本橋三越」が2月7日にオープン 三越の顧客に合わせた品揃えと売り場演出、接客スタイルで臨む
売り場面積は1,200㎡で、スタッフは40名体制
「ビックカメラ 日本橋三越」は、日本橋三越本店新館の6階にインショップとして出店。売り場面積は約1,200㎡で、店舗スタッフは約40名。正式名称は上記のとおり、「ビックカメラ 日本橋三越」だが、「日本橋KADEN」という名称も使って新たな売り場をアピールする。オープンは2月7日で、4日に内覧会が行われた。
冒頭の挨拶に立ったビックカメラの宮嶋宏幸代表取締役社長は、「日本橋KADENという、今までとはちょっと違った新しいスタイルで新しいお客様を迎えます。日本橋エリアは家電製品を購入したいお客様が多くいますが、購入する場がないといいます。日本橋三越を利用されている富裕層の方々も、誰にどのように相談をすればよいのか、たいへん困っているということも聞いています。」と述べた。
また、「今までは商品を並べて価格やポイント訴求を主としてやってきましたが、お客様が納得いくまで商品選びのサポートをしたり、アフターサービスにもゆっくりと時間を使いながらご案内できる販売の仕方を今回は行っていきたい」と店舗のコンセプトについて語った。
ビックカメラの商品とシステムに日本橋三越の顧客を掛け合わせる
続いて三越伊勢丹の杉江俊彦代表取締役社長執行役員が登壇。「家電売り場を百貨店の中につくるのは長年の夢でした」と話す。なぜ、長年の夢かというと、2つの理由があると杉江氏は語った。「もともと百貨店は家電もあったり、楽器もありました。それが、効率化の流れの中で商品を絞ってきて、お客様から見たら、婦人服がたくさん売っているお店になってしまいました。しかし、お客様の多様化とデジタル化に伴い、店舗に来る魅力を再度作らないといけないと考えました。
もう一つは、家電はどんどん新しいアイテムが出てきて、5Gで家庭の電化製品がつながり、お客様の生活から切り離せないものになっています。そんなアイテムを扱わないというのは絶対にありえません」と家電売り場の導入の背景を説明した。
両氏の挨拶からは、日本橋三越のインショップということでの単純な賃貸契約ではなく、相互の優位性を組み合わせることでの“化学反応”への期待があふれていた。杉江氏いわく、「ビックカメラの商品とシステム、日本橋三越を支持してくれるたくさんのお客様が合わされば、という形で話が始まり、契約の形態としては定借契約ですが、ただ単に場所を貸すということではなく、一緒に作っていくプロジェクト」と述べた。
売り場は3つのゾーンで構成し、制服もスーツに
同店の店長は前職がビックカメラ本店パソコン館店長だった橋本賢太氏。「一人一人のお客様に寄り添う家電の新スタイルショップを掲げて、オープンの準備を行ってきました」と挨拶。次いで店内のゾーニングについて説明を行った。
ビックカメラ 日本橋三越では売り場を①クオリティタイムゾーン、②ウェルカムゾーン、③ビックカメラゾーン、と3つのゾーンに分け、それぞれのゾーンでは目的や趣旨が異なる。
①クオリティタイムゾーンについて橋本店長は「お客様が着座で、販売員がお客様の要望やさまざまな情報をしっかりとお聞きしたうえで最適な提案を行うゾーン。ゆっくりと時間をかけてお客様に伝えるため、あえて座れるソファの席を用意しました」と解説した。
②ウェルカムゾーンは、旬や流行っている商品、ビックカメラが伝えたい商品などを定期的に換えて展示するエリアだ。
③ビックカメラゾーンは、扱っている商品をしっかりと見せるエリア。百貨店のインショップではあるが、同時に日本橋エリアは再開発が行われており、オフィスで勤務するビジネスマンに向けた商品も扱っていくという。
その他、ビックカメラの既存店と異なるのは、制服が男女ともスーツであること。これは三越の社員のスタイルに合わせ、お客がフロアを訪れた際に他のフロアとの違和感を覚えないようにとのことだ。また、店内のBGMも三越の雰囲気に合わせてジャズ調にしている。
「接客というリアル店舗最大の強みを、この店舗でしっかりと表現し、ビックカメラが入ってよかったと思っていただけるような店舗にしていきます」と橋本店長は抱負を述べた。ちなみにビックカメラの既存店で扱っている非家電商材は、日本橋三越とのバッティングを避けるために取り扱っていない。
日本橋三越の外商などがバックアップして顧客を送客
橋本店長に続いて、三越伊勢丹の斉藤宏太日本橋ライフデザイン営業部ブランド担当付スタッフマネージャーが「今回の取り組みの最大の特徴は、日本橋三越の外商をはじめとしたお店のお客様を送客していくところにあります。外商部や店内を横断的に接客しているストアアテンダント、コンシェルジュなど約300名が日本橋KADENにお客様を送客して、ご要望をうかがっていきます」と述べた。
インテリアコーディネーターの有資格者でもある斉藤氏は自身の経験として、お客の家を訪れる機会も多かったが、家電の商品知識がなかったため、踏み込んだ提案ができなかったという。ビックカメラが入ったことで新しい顧客開拓とさらなる顧客との関係性に期待を寄せていると話した。
ソファを多数配置し、お客に着座してもらい接客を行う
では、売り場を見てみよう。まずは、クオリティタイムゾーン。お客に座ってもらうことを目的としてソファとテーブルのセットを複数台配置してある。商品はビックカメラゾーンから持ってきて、説明することもあるという。橋本店長は「売り場の中をぐるぐる回ると、お客様は大変。ならば商品を持ってお客様に見てもらいたい」との考えから着座スタイルになった。同時に、お客の中には3世代で来店するお客もいるため、あえて椅子ではなくソファにしたと説明する。
旬の商品やここでしか扱っていない商品を集合展示
ウェルカムゾーンは、ここでしか扱っていない商品などを集めたエリアで、2~3週間のスパンで展示を変えていく。また、IoT家電の展示では、スマホがリモコンになり、今の状況がスマホで確認できる点など、お客にとってのIoT家電の利便性を伝えていくという。
白を基調とした売り場で清潔感と高級感を重視
ビックカメラゾーンは、通常の家電コーナー。売り場は什器も含め、全体的に白で統一している。これについて橋本店長は「三越本店1階の化粧品売り場は建築家の隈研吾氏による清潔感にあふれた白が基調の売り場で、それを参考にしました」と解説。天井も既存店のメッシュ天井ではなく、ホワイトボードを使い、清潔感と高級感を表現したという。
他店と異なる品揃えや接客スタイルで富裕層にアピール
ビックカメラ 日本橋三越は、特に富裕層に向けた品揃えに注力したという印象が強い。売り場自体が1,200㎡しかなく、スペースの制限もあるため、高級ゾーンに振ったと捉えることもできるだろう。これまで、体感や提案をさまざまな工夫で具体化してきた経緯を見てきた目からすると、もう少しスペースがあれば、というのが正直な感想だ。
他の店舗にはない商品に出会えるのはリアル店舗の強みであるし、ラウンジを設けての接客スタイルもまた然りだ。その点では日本橋三越の顧客に適応させた店舗であり、十分に顧客を満足させられるだけの取り組みがされている。
日本橋三越の外商が同店の顧客を送客するということで、上得意客に対する全面的なバックアップは得られたといえよう。商品というハード面、そしてクオリティタイムゾーン、サポートサービス、外商というソフト面も揃っている。
日本橋三越の売上高は18年度で約1,448億円だが、この3年ほど前年割れが続いている。2020年1月時点での19年度累計売上高は店頭ベースで前年比95.5%。特に消費税増税の反動は大きく、百貨店は厳しい環境下にある。この状況下でテナントにビックカメラが入店したのは、日本橋三越にとってメリットがあるだろう。
既存の顧客に対しては前述のように効果が発揮されるものと思われるが、問題は新規顧客の獲得だ。日本橋エリアは再開発により、ビジネスマンや家族連れの来訪も増加している。オムニチャネル化で店舗を接点としてECへ送客するのも一つの手法だ。三越日本橋の顧客である富裕層をしっかりと抑えたうえで、これらの層へどのようにアプローチしていくかが今後の課題といえよう。
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