SDカードの基礎知識と売り場づくり


SDカードはセルフ売り場になっていることがほとんどだが、実は接客することで単価アップが可能な商品。SDカードの接客やPOP等の作成に必要な基本情報について、国内のみならず世界の主要な市場でシェアNo.1を獲得しているサンディスクに聞いた。

SDカードの基礎知識

SDカードとは、多くのデジカメで使用されるメモリーカードのこと。規格が複数あるので、難しい、ややこしいと思われがちだ。しかし、必要な知識は大きく分けると、二つ。それは、①「容量」と②「スピード」だ。

そして、容量とスピードともに最優先すべきは、SDカードを使用する撮影機器(ホスト機器)の性能を最大限に引き出すタイプを選ぶこと。その指標となるのが、“規格”というわけだ。

対応するカードは、ホスト機器の取り扱い説明書やカタログ、本体にも記載されているので、機器の接客の際はお客に対応カードのタイプをひと言伝えておこう。

ホスト機器(カメラなど)に記載された対応SDカードのタイプ

下図は、容量とスピードのまとめ。“スピード”という言葉がいくつか出てくるが、それぞれが「何の速さ」を表しているのかを整理すれば混乱しない。下図とSDカードのパッケージ画像の番号は同じ意味を表している。以下、それぞれの番号について解説をしよう。

容量とスピードのまとめ
「容量とスピードのまとめ」に対応したパッケージの表示
①容量

SDカードはその容量によって、それぞれの名称がつけられている。容量が小さい順に、SD、SDHC、SDXCの3タイプだ。前述のように、ホスト機器に対応したSDカードの容量のタイプを選ぶことがなによりも大切。各タイプの容量と互換性を示した下表を参考にしていただきたい。

上位互換で、SDXC対応の機器の場合3つの規格全てが使える

デジカメはフイルムカメラと違い、枚数を気にせずとりあえず撮っておいて、失敗した画像は後から消去するという撮影方法をするユーザーが圧倒的に多い。決定的瞬間を逃さないために連写モードで撮影をすると、すぐに枚数が嵩む。ということで、撮影データを保存するSDカードは大容量がベスト。大は小を兼ねるのだ。

そこで店頭では、32GB以上の購入をオススメしたい。そんなに必要?と思うお客もいるだろう。答えはYES。静止画は高画質化でデータ容量が大きくなっている。さらに、連写機能やデジカメ動画の性能の向上とともに、これからは、“カメラ=静止画”から、“カメラ=静止画+動画”が主流になりそうだからである。

下表は静止画と動画のどちらかのみで撮影した場合の目安だ。動画も撮影するユーザーが多い昨今、サンディスクが提示するデータ量の目安は、16GBのSDカードの場合、【フルHD動画を約30分撮影(12GB)、写真は1800万画素クラスのカメラで約380枚(約4GB)】。長時間連続で動画撮影をしなくても、10分の動画を3回撮影すれば30分になってしまう。

SDカード容量と、写真・動画の撮影目安(サンディスクの小冊子「失敗しないSDカードの選び方」より)

また、写真形式はRAWなどの大きいデータサイズで撮影、保存した方が良い。大きいデータサイズで保存しておけば、加工も自由にできるし、あとからJPEGなどの小さいデータサイズにすることもできる。しかし、小さいデータサイズで保存したものをあとから情報量の多いデータにはできないのだ。RAWで撮影した場合、撮影できる撮影枚数は上記の撮影目安よりもぐっと少なくなる。

②バスインターフェーススピード

容量のタイプを示すマークの右側にⅠ、Ⅱと表記されているのが、バスインターフェーススピード。UHS-ⅠとUHS-Ⅱがある。これは、撮影時(書込み)やPC転送時(読込み)にデータを送る “伝送路の大きさ”を表している。数字が大きい方(Ⅰ<Ⅱ)が伝送路は大きく、一定時間にたくさんのデータを送ることができる。

UHS-Ⅱは対応するホスト機器がまだあまり市場に出回っておらず、これから対応機器が増えていく予定だ。

次に、転送速度。これは、【撮影時のスピード】と【PCへのデータ転送時のスピード】の2種類に分けられる。撮影時のスピードはカメラ内で処理される転送のことだ。

撮影時のスピード

撮影時に必要なスピードは、③連写する際に必要な「書込みスピード」と、④動画撮影の際に必要な「スピードクラス」がある。詳しく解説しよう。

③書込みスピード

「書込みスピード」は、連写撮影をするときのスピード。決定的瞬間を逃さないために連写し、後からお気に入りの一枚を選び出せるのはデジカメならではの機能。連写に弱いとされてきたミラーレスカメラでも、最近のモデルでは連写性能が一眼レフを凌ぐほどに向上している。

書込みスピードは連写に関わるスピード
④スピードクラス

「スピードクラス」は動画撮影時のスピード。目安として、【フルHDならクラス10もしくはU1以上、4K動画ならU3以上】をオススメしよう(下図参照)。

動画録画の書込みスピード(スピードクラス)の規格(サンディスクの小冊子「失敗しないSDカードの選び方」より)。(同じクラス表示のカードでも、最大転送速度はカードによって異なる

ポイントは、ホスト機器が推奨するスピード選択すること。連写や動画撮影の際、カメラは撮影をしながら、データをSDカードに保存している。SDカードへの保存が間に合わないと、撮影が滞ってしまう。コマ落ちや連写・録画の中断を引き起こしてしまうのだ。

PCへのデータ転送時のスピード

⑤読込みスピード

撮影した静止画や動画は、PCなどへデータを転送する。その際に重要なのが読込みスピードだ。大量に写真を撮った時にPCへの転送が思ったよりも長くかかって、イライラした経験のある人は多い。そのようなストレスは、読取り速度が速ければ解消される。

読込みスピードは、速いほどPCへデータをサクサク転送できる

注意すべき点は、SDカードの性能が良くても、PCのカードスロットやUSBポート、リーダーライターなどの性能も転送速度に影響すること。読取り速度が速いSDカードでもデータ転送時に速度が遅い場合はこのような転送機器が原因のケースも考えられる。

サンディスクでは、Youtubeにメモリーカードのデータ転送テストの動画をUPしている。エクストリーム プロ SD UHS-Ⅱカードと、ウルトラプラス SDカードのPCへの転送速度の比較動画だ。これを見ると、クラスごとのスピードの違いがよく分かる。さらに、この動画と比較して自身のデータ転送速度が遅いと感じる場合は、前述のような他の機器の影響があるかもしれない。

メーカーによる価格差のワケ

同じ容量や条件でもメーカーによって価格が違うのは、「そのメーカーだから」という理由がある。そして、この部分をお客に分かってもらうことで単価アップや購入後の満足につながる。

その価格差のワケは、信頼性。具体的には、ホスト機器との互換性や耐久性、保証だ。

信頼性のある製品を作るには、トラブル一つ一つを着実に解決することで、さまざまなホスト機器との互換性を高め、不具合を最小限にする。このようなきめ細かい対応をするには、当然コストがかかる。そのため、高価格にはなるが、より信頼性の高い商品となるのだ。

価格だけを判断基準にして、安価なSDカードを選んだとする。そうすると、以下のような事態になる場合がある。ホスト機器との互換性が低いのだ。

電源を入れるたびにこの表示。大切なデータが失われる危険性があるので、すぐに信頼性の高いSDカードを買いに走ることになる。労力もかかり、出費も痛い

耐久性の面では、高価格タイプの場合、防水、耐温度、耐衝撃、耐振動、耐磁性が備わっており、空港のX線の影響を受けないタイプが主流だ。

保証では、サンディスクの場合、ExtremeとExtreme PROの2タイプについては、サポート特典がついている。データ復旧ソフト「Rescue Pro DELUXE」が1年間利用でき、保証面でも安心だ。

SDカードの接客でリピーター獲得

「SDカードは、お店の付加価値を出しやすい商材です。弊社のSDカードはネットよりもお店で購入するお客様が多く、これは接客を求めているということです」とサンディスク プロダクト マーケティング マネージャー 長谷川史子氏。

SDカードはセルフ売り場のため、お客に説明する機会がほとんどない。

家電量販は品ぞろえが豊富で、選択できるからこそ、逆に迷ってしまうこともあるのだ。

サンディスクの長谷川史子氏。手にしているのは、SDカードとマイクロSDカードの基礎知識を分かりやすくまとめた同社の冊子
サンディスクの長谷川史子氏。手にしているのは、SDカードとマイクロSDカードの基礎知識を分かりやすくまとめた同社の冊子
家電量販店のSDカードの品揃えは充実している(画像はコジマ×ビックカメラ ベルクスモール浮間舟渡店 オープン時)

SDカードは規格やスピードクラスなどの分類があり、選ぶのが難しいと感じるお客は少なくない。店頭で販売員に説明された方がすんなりと理解できる商品だ。リアル店舗の強みは、お客が疑問点を理解するまで販売員に説明してもらえること。

真摯に向き合ってくれた販売員には、また相談しようという気持ちが湧いてくるものだ。それがリピーターの獲得につながる。SDカードの売り場の場所を聞かれた時や、商品の前で迷っているお客を見かけた際は、「なにか疑問点やお困りごとなどございますか?」と積極的に声掛けをしたい。

思い出を保存しておく重要な役割を果たすSDカード。お客が安易に安価なタイプを選んで後悔する前に、店頭でSDカードの重要性の再認知を促し、安心安全でカメラの性能を損なうことのない最適なタイプを提案しよう。

デジカメコーナーでSDカードを訴求するパネル。大容量・高性能タイプを展示し、複数枚購入もオススメしている(画像はヨドバシ梅田のカメラコーナー)

また、SDカードの複数枚購入もオススメしたい。複数枚購入のメリットは以下の3点だ。

1.予備として
耐久性の高いタイプを購入しても、書込み回数や環境など様々な要因で突然、破損する可能性がある。大切な思い出が残せなくなる危険を回避するために、複数枚を常備しておくと安心だ。
2.用途別
静止画と動画、被写体ごとなど、保存するSDカードを分けると後でPC等に保存するときに分類がしやすい。
3.プレゼント用
撮影した写真をプレゼントする際、プリントして渡すよりも、SDカードでプレゼントしたほうが、お互いに便利でラク。

これらのメリットを提案することで顧客単価アップにもつなげられる。

とはいえ、接客ができない場合の“セルフ売り場でも売れる展示”は大切だ。SDカードの基本的な展示は、フック掛けによるセルフ販売だ。多くの店舗では、該当機器との連動やお客に対する情報提供がしっかりと売り場で提示されているとは言い難い。

商品パッケージに書いてあるスペック情報の意味をPOPやパネルなどで提示し、商品の陳列をクラスや最適な機器、用途ごとに分けて陳列に工夫を施すなどの見せ方に注力して、セルフでもランクアップや複数枚購入となるよう取り組もう。

オススメ順位とその理由を展示しているSDカードコーナーの展示(画像はビックカメラ名古屋JRゲートタワー店オープン時)