シャープの合弁事業が7月1日からスタート 国内ホテル向けにレンタルスマートフォンを提供
ホテルの宿泊客向けにスマートフォンを提供
ホテルの宿泊客が、室内でも室外に持ち出しても無料で使用できるスマートフォン「handy」のレンタル事業が日本でもスタートした。このhandyにスマートフォンを提供しているのがシャープ。シャープは「handy」を運営する香港のTink Labs社と業務提携し、日本における運営会社であるhandy Japanに出資している。
6月1日、日本において初のhandy導入ホテルである東京・中央区のロイヤルパークホテルで事業開始の発表会が行われた。
Handy Japanの勝頼博則代表取締役社長は、「今、旅行客に求められているのは、旅行している最中に、どのような情報やサービスを提供し、その機会をつかまえるかということ。いわゆる『タビナカ』で、handyは、このタビナカの最強デバイス。部屋の外に持ち出すことができ、ホテルの備品でありながら外でも便利に使うことができます」と述べた。
お客にとってのhandyの特徴は5つ。①国内・国際通話が無料、②インターネット接続が無制限で無料とアプリのダウンロードも無料、③最新のトラベル情報や地図アプリとも連動、④周辺地域や各種のショップの特典割引やチケット購入、⑤日本語、英語、中国語による多言語対応と外出先コンシェルジュ対応、となっている。
handy導入側のメリットとしては、①宿泊客とのコニュニケーションの向上や外出先コンシェルジュによる顧客満足度の向上、②トリップアドバイザーなどの口コミサイトでの口コミ数の増加と評価アップ、③プッシュ型メッセージによる館内施設の利用増とイベントの参加増、④災害時の情報提供や安否確認、⑤利用履歴によるビッグデータ解析が可能、などの点という。
世界17カ国で述べ1,200万人以上が利用
このhandyはすでに世界17カ国600以上のホテルで導入され、延べ1,200万人以上が利用している。日本展開に際しては、宿泊施設に1台月々980円で提供。この価格の中には初期費用や端末代、ソフトウェア、導入教育、コールセンターサポートと10%までの交換補償も含まれている。1日あたりにすると、33円で、客室に置いてあるペットボトルの水と同じ金額とのことである。
9月30日までに申し込むと、1年間は完全無料というプロモーションを展開。5月から一部のホテルに対して案内を開始したところ、1週間で2万室以上の予約があったという。
handyのビジネスモデルは2つの収益からなっている。一つはアップグレードやオプション対応を含めたレンタル費。2つめは広告だ。ショップからの情報をhandyで利用者に提供するので、プッシュ型の広告となる。「香港においては、すでにレンタル収入よりも広告収入が上回っています」と勝頼社長は説明する。
ロイヤルパークホテルの笹井高志常務取締役総支配人は「当ホテルに宿泊する外国人比率は、この4~5年変わっていないが、個人客が増加しています。個人のお客様は自分で情報を調べるので、handyはお客様のニーズにも合致しており、ホテルの収益向上のチャンスにもなります」と話す。
人に寄り添うIoT企業目指すシャープ
このような宿泊客のニーズの高まりを受け、前述のとおり、シャープは2017年1月、handy Japanに出資した。シャープの長谷川祥典取締役兼専務執行役員 スマートホームグループ長兼IoT通信事業本部長は、「これまで家電メーカーであったシャープは、ブランドを核としてサービスやソリューションを提供する、人に寄り添うIoT企業に生まれ変わるため、様々な取り組みを行っています」と説明する。
シャープはIoTにAIを加え、モノの人工知能化を推進したAIoTをビジョンに掲げている。これを実現化するには機器とサービス、プラットフォームの3要素が必要とのことで、現在、ヘルシオやエアコン、冷蔵庫、テレビなど6つのカテゴリーで展開をしている。
特にスマートフォンに関しては「お客様に最も近く、IoTの中心的な存在として、これからますます重要度が増していくと考えます。このスマートフォンの展開にあたってサービスやプラットフォームを揃え、ホテル向けに事業を行っているhandyに将来性を感じました」と出資の背景を語った。
handyによる『おもてなしの質の向上』は、シャープが目指す『人に寄り添うIoT』の事業コンセプトと通じるものがあるとのことで、「将来はシャープのプラットフォームやサービスとの連携により、『おもてなしの質』をさらに高め、顧客価値を高めていきたいと考えています」と長谷川取締役は今後の展開について抱負を述べた。
室内のコントローラーとしての利用を想定
handyとして提供するスマートフォンは鴻海が設計・製造したAndroid端末で、日本向けの品質確認はシャープが担当した。現在のところ、シャープが担う部分は端末に関する提供のみだが、長谷川取締役は今後の展開として「例えば、客室内のテレビやエアコン、空気清浄機などのコントローラーとしてhandyを活用することでビジネスの広がりが期待できます」と話す。
発表会での説明どおり、今回の事業展開に関してはシャープが出資をしたものの、イニシアティブを取るという形ではなく、handyという事業を機器提供でバックアップするという形だ。長谷川取締役が話したプラットフォームやサービスについては、すでにhandyが運営しているため、特にシャープのシステムが必要不可欠というわけではない。現状ではあくまで将来的な発展性が見込めることによる事業参入である。
中期経営計画でTransformation掲げる
周知のとおり、シャープは2017年度から3カ年の中期経営計画を発表。この3年間に関しては『Transformation』をキーワードに掲げ、2020年度からの『Next 100 Years』に向けて変革の時期と定めている。
この『Transformation』では「人に寄り添うIoT」を柱に、グローバルでの事業拡大とビジネスモデルの変革、経営基盤の強化、の3つの変革を推進し、スマートホーム事業の売り上げを16年度の5,506億円から19年度には1兆円まで高める計画だ。
今回のhandy事業への投資もホテルの宿泊客向け端末の提供をきっかけとして、今後の事業拡大を図っていくもので、handy Japan自体はあくまで国内向けの事業だが、今後のグローバル展開については「事例次第で、あるかもしれません」と長谷川取締役はいう。将来を見据えた取り組みではあるが、シャープは変革のために動き出した。新生シャープとしての今後の動きに注視していきたい。
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