エレコム+DXアンテナで可能になる 新たなビジネス展開


エレコムは船井電機からの株式譲渡により、DXアンテナを子会社化した。両社が合わさることによって、どのようなシナジー効果が表れるのだろうか。

エレコムとDXアンテナを子会社化

エレコムは3月30日、船井電機が所有する子会社であるDXアンテナの全株式の96%を取得し、子会社化した。DXアンテナは事業の一つとして「DX BROADTEC」というブランド名で船井電機製のテレビやBDレコーダーの販売をしていた。

その船井電機は昨年10月に国内向け液晶テレビ、ブルーレイ製品に関してヤマダ電機との独占販売契約を結んだ。

「個人的な考えですが、国内での商品の販売価格はかなり下がっています。販売会社を介さず、メーカーが直販する時代です。そのため、ビジネス的に自然な流れとしてこのような結びつきとなりました」とDXアンテナ 代表取締役社長 米山實氏はエレコムによる同社の買収の背景を話した。

船井電機 代表取締役社長兼執行役員 前田哲宏氏も今回の決定について、三社にとって良い結果をもたらすと強調した。

エレコムは国内トップシェアを獲得しているマウスやキーボードなどの家庭用PC関連商品とスマホ関連商材の他に、ルーターやHDDなどの周辺機器、さらには販売数量シェアトップを獲得しているBluetoothイヤホンなどのオーディオ機器、低周波治療器などのヘルスケア機器まで商品展開をしている。

エレコムの既存事業と今後の事業展開

「アンテナ事業は以前から参入を考えていたが、電波法などの解決すべき障壁がたくさんある難しい商品」(エレコム 取締役社長 葉田順治氏)。そこでDXアンテナと組むことでそのハードルをクリアするというわけだ。

通信と放送の融合

家電量販店でもおなじみの、DXアンテナのアンテナや分配器

今回エレコムの子会社となったDXアンテナは、伝送技術を中核事業とする放送受信関連機器の専門メーカー。取扱商品は、アンテナ、ブースター、分配器、テレビ端子などだ。ここ10年ほどはこのような商材と技術を生かした「放送と通信の融合」をテーマに取り組みを続けており、エレコムと連携することでより強化していくという。

放送と通信の融合は防災や福祉、セキュリティなどの分野で実現されている。例えば、光ファイバーに防災信号を流すことで、災害時に防災情報をテレビに映し出すことができる。自動的でテレビの電源をつけることも可能だ。このサービスは実際に奈良県御杖村で昨年の4月より提供されている。

実際に運用されている放送と通信の合成技術

エレコム+DXアンテナのシナジー効果

相乗効果をもたらす両社の強み

エレコムとDXアンテナが提携することにより、BtoCとBtoB両方に大きな相乗効果が期待できる。エレコムの通信機器とDXアンテナの放送受信および施工の融合によるシナジーは、これからのIoT時代にも大きな効果をもたらすと思われる。

BtoCでは、両社のネットワークでさまざまな選択肢でのホームIoTを実現する。

ホームIoTにより、テレビの役割が変わる

現在はテレビ番組などのコンテンツ受像機としての役割が大きいテレビ。これからは、使用家電製品の状態確認や遠方に住む家族の安否など、家の内外からの情報の受信機という役割が付加されていく。

両社の機器と技術を合わせると、具体的に下図のようなシステムを構築することができる。

エレコムとDXアンテナが実現するIoT

さらにBtoBでも「思った以上の相乗効果」が得られる(エレコム 葉田氏)という。例えば、工事のできない旅館や病院などの既存の施設にWi-Fiを導入するサービスの提供など、さまざまな状況下で工事・保守面で対応することができる。

今後の新たなビジネスモデル

両社が連携することで、IoTに必要不可欠な通信とハードウェア、さらに施工、保守までも全てワンストップで提供できるようになる。

エレコムの葉田氏は「川上から川下まで技術者が揃っていますので、行き届いたカスタマーサービス、安定した運用をユーザーに提供できます。最終的には保守メンテで収益が上がる体制を目指します」と今後のビジネス展開についての抱負を語った。