<速報>調布駅前の「トリエ京王調布」にビックカメラ出店 狭小スペースでもビック流の展示演出を実現


9月29日のオープンを控えた27日、ビックカメラ京王調布店の内覧会が開催された。当日は3館からなる「トリエ京王調布」全体の内覧会ということもあって多数の報道陣が集まり、その注目の高さを改めてうかがい知ることができた。

「トリエ京王調布」の商圏は約5km

2012年、京王線調布駅は駅を地下に移設し、そこから地上階や周辺を含む再開発がスタート。このほど、約5年という歳月を経て、「トリエ京王調布」のオープンに至った。この“トリエ”とはラテン語で3を表す「tri」とアイスランド語で樹木を表す「tre’」を合わせた造語。3館からなる施設と、大樹として街とともに成長していきたいという思いから命名されたという。

駅直結の「トリエ京王調布」A館。ファッションや雑貨、飲食店などで女性客がメインターゲット

駅直結のA館はファッションや飲食、雑貨などの専門店で構成された施設。B館はビックカメラとカフェ&バルで、周辺に大型家電量販店がないことから、家電店に対する地元のリクエストが多かったという。C館はシネコンのイオンシネマ シアタス調布が入っており、最高級シートの採用や最先端の音響システム、体感型のアトラクションシアターなどからなる都内最大級のシネコンである。

「トリエ京王調布」を運営する京王電鉄によれば、商圏は3km圏としているものの、実際には5km圏くらいではないかとの見方をしている。京王線の駅で例えるなら、稲城から千歳烏山までとのことだ。3館合わせた全体の売り場面積は約2万㎡で、年間の来場者は1,000万人、年商150億円を想定している。

京王線調布駅の地上階には3つの出口がある。東口と中央口は、「トリエ京王調布」A館と直結し、地下から西側の広場口に出ると、すぐ目の前にあるのがビックカメラのB館。そのB館を越えた先にあるのが、シネコンのC館だ。

調布駅広場口を出ると、目の前がビックカメラ京王調布店で、その奥にC館がある

3,900㎡、110名体制で臨む京王調布店

ビックカメラ京王調布店(以下、京王調布店)は4フロアで、売り場面積は約3,900㎡。1フロアの売り場面積は平均で約300坪というところで、同社の既存店と比較しても決して広いとはいえない面積だ。しかし、店舗スタッフは社員が50名、アルバイトが60名の計110名体制。多層階であることを抜きにして単純に売り場面積のみで考えると、逆にスタッフの人員は多いといえるだろう。

各フロアの中央にはエスカレーターがあり、フロアを一周する形でメイン動線となる主通路が置かれ、中央部から壁面に向かうサブ動線に沿って、各コーナーが配置されている。

1階は酒類と自転車がメイン。この2つのコーナーを集客のための呼び水として、売り場は広くとっている。1階に非家電を配した理由について、同店の後藤大輔店長は、「いきなり家電だと女性客が入りにくいのではないかという考えもあって、あえて非家電を1階に持ってきた」と説明する。

エントランス正面のエスカレーターの右手が自転車、左手が酒のコーナー

エントランスから右手の自転車コーナーの壁面はガラス貼りになっており、ここに屋外の通行客だけに見える形で店内に展示しているさまざまなカテゴリーの家電を配置。C館に行くお客は必然的に、ガラス越しに並べられた取り扱い商品を見ることになる。1階は確かに非家電だが、通行人からも見える形で家電店ということをしっかりとアピールしているのだ。

C館につながる道路の壁側はガラス貼りで、通行客にも家電をアピール

約200台の自転車を展示し、集客のフックに

自転車はカスタムメイド自転車のライダーズカフェとコラボをし、パーツを一つずつ選んで、世界に1台だけの自転車が作れる。もちろん、取り扱いはオーダーメイドだけでなく、電動アシスト自転車やスポーツサイクル、シティサイクルなども幅広く並べられ、展示台数は約200台という。

天井からも吊り下げられたパーツ類で、オーダーメイド自転車を訴求

酒についてはワインをメインとしながらも日本酒や焼酎、洋酒などに至るまで幅広い品揃えとなっている。ワインは前面に低価格ワインをマグネットとして置き、お客を誘引。「低価格から10万円を超えるものまで揃え、まずは低価格で日常的に飲める金額のものから楽しんでもらい、ワインならビック酒販と認知してもらいたい」と後藤店長は話す。

低価格ワインをマグネットとして、女性客を誘引する
ワインの産地と収穫年をチャートにして、得点を付けたチャートでお客へ情報を発信

酒と向き合う形でエントランスには上層階で販売をしている比較的低価格の家電商品を集め、上の階まで回遊させることを狙っている。

また、1階にはデジタルプリントのコーナーも置かれ、お客が自身でプリントアウトができるようになっている。

さらにエントランス奥のレジカウンターにはネットで注文した商品の受取カウンターを設けた。駅近という立地から、帰宅の際に立ち寄って商品を受け取るという活用も大いにありそうだ。

スマホ用のマットを置いたイヤホン試聴コーナー

エスカレーターで2階に上がった正面は、PCコーナー。什器に展示されノートPCの棚下には周辺機器やアクセサリーがフック掛けされ、什器の上部には外付けHDDも置かれている。本体と周辺、アクセサリーの同時購入を実現するための陳列手法であり、展示スペースを最大限活用した展示ともいえる。

イヤホンやヘッドホンは試聴ができ、約150アイテムほどが試せるという。試聴コーナーを設けている店舗は少なくないが、同店の場合、音源が入っているスマートフォンやデジタルプレーヤーなどを置くマットが什器に取り付けられており、細かい部分でもお客の利便性を考えた配慮がされている。もちろん、ウエットティッシュもしっかりと置かれ、快適な試聴体験が可能だ。

斜めの台にある黒いマットに持参のスマホを置いて視聴。お客への配慮が感じられる取り組みだ

格安SIMも含むスマートフォンコーナーの近くには、アクセサリーとしてカバーを大量展示。ショーケースの中にカバーをセットした形で、お客への提案としてディスプレイをしている。あまり見ないようなポップなカバーやユニークなカバーのディスプレイは、見ているだけで楽しさが伝わる。

ショーケースでスマホカバーをディスプレイ。ユニークなデザインが目を引く

最近のVRの盛り上がりを捉え、VR体験コーナーも配置した。体験したいお客は自身のスマートフォンにインストールしたアプリを使い、展示しているゴーグルを装着すれば体験ができる。

3階のテレビコーナーでは島中に45V型や50V型、60V型以上の大画面モデルを配置し、2つの壁面にはメーカー別の展示と有機EL11台を集合展示した。有機ELでは、液晶4Kモデル1台を置き、画質の比較ができるようにした。島中の大画面モデルは、什器の下にテレビボードを置き、テレビ本体のセット購入を促している。

島中で60V型を展示。写真はハイレゾ対応ありとなしの比較ができる展示

最近のモデルがより薄く、ベゼルも狭小になっていることを受けて、同店でも壁掛けを推奨。壁掛けに必要なマウントの展示とともに、壁掛けの工事金額や壁掛けのパターンも提示している。

メガネは7プライスで新しい試みを実践

同フロアにはビックカメラの新しい取り組みとして、メガネを販売する「Price of 7」コーナーを設けている。同社では既存店でもメガネコーナーを併設していたが、価格はそれぞれのメガネで異なっていた。今回、プライスラインを3,800円から28,800円までの7つに分け、お客に分かりやすさを提供。展示されている什器ごとに値段が1本化されている。

新たな取り組みの「Price Of 7」。メガネを7プライスに分けて展示

その他、同社が力を入れているドローンやおもちゃなどの商品も同フロアに配置した。

4階は一般家電とリフォームコーナー。リフォームについては、スペースの関係からキッチンやバス、トイレなどのサンプルは置かず、商材を絞っている。

エスカレーターを上がった正面をイベントスペースとして、ハロウィンの装飾を施したステージを設置。各種の調理家電を配置し、4階に上がってきたお客にアピールをするのが狙いだ。

ハロウィンをイメージした調理家電のマグネット展示

ビューティー家電のドライヤーやスキンケア商品は通電し、体感できる。また、主通路に面した一角には“DOCTOR AIR”コーナーを配置。すでに藤沢店で導入済みで、都内では初のコーナー展開という。

冷蔵庫は本体の高さがあるため、手前から奥の陳列が見えにくい。そのため、冷蔵庫の展示では主動線に対して斜めにレイアウトをして、動きのある陳列を試みた。展示では、特にスリムタイプをアピール。ラックを使って各社のカタログをまとめることで、お客が商品比較をする際の利便性を高めている。

クリーナーはロボットとコードレスを島で展示し、壁面にキャニスターを配置している。このクリーナーコーナーだけは床にカーペットを敷き、体感ができるようにした。

展示演出でボリューム感とお客の気づきを両立

店内を見て回った結果、できることとできないことを切り分け、スペースを最大限有効活用することで品揃えやボリューム感を演出したという印象を持った。前述のとおり、1フロアは平均300坪。そこにワンストップ・ショッピングの利便性を持ち込むとなると、どうしても通路幅や展示商品同士の幅を狭くせざるを得ない。しかし、同社の八王子店よりも店舗規模は小さいものの、品揃えは同程度とのことだ。

本来はデッド・スペースとなる壁面の上部をディスプレイの一つとして活用したり、展示を伸ばしてボリューム感を演出するとともに、エンドを使った提案やパネルでお客への情報提供に努めたりと、さまざまな工夫を凝らすことで、品揃えやワンストップとしての機能をしっかりと果たしているといえる。

スマホカバーを高所まで展示し、天井付近のボードもコラージュのような感じでボリューム感を演出

フロア内のコーナーレイアウトも関連するカテゴリーを近接展示することで、お客に気づきを与える工夫がされている。また、「ビック超速便」「商品取り置きサービス」「公式スマホアプリ」などのサインも天吊りポップを用いて、お客にしっかりと伝わるように取り組んでいる。

また、酒やスポーツ、「Price of 7」などの専門店コーナーの販売員の制服は通常のビックカメラと変えており、専門店としてのスタンスをそれとなくアピール。年商目標は50億円ということだが、後藤店長は「当然それ以上を狙って、お客様への認知と顧客化に努めたい」と豊富を述べた。